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【報告レポート】インクルーシブ運動会
今年で三回目の開催となるインクルーシブ運動会!!
無事に昨年の12月に、全日程が終了しました・・・。そのご報告です♪
改めて、インルーシブ運動会とは?
深田耕一郎さん(社会学者・女子栄養大学准教授)と、当団体の理事であった海老原宏美さんが川崎市立東橘中学校で行っていた「インクルーシブ運動会」という活動。
当法人の現在のカリプロ(『地域生活の視点で学ぶ重度身体障がい者の暮らし~地域で暮らすを覗いてみよう~』)は、保健・医療・福祉を目指す学生向けに実施しておりますが、他の学部はもちろん、ゆくゆくは高校・中学校・小学校・保育園や幼稚園でも知る・出会う・考える機会をつくりたいと考えています。私たちが暮らす地域には重度障がいのある人もあたりまえにいると感じられる機会が子どものころからあったらなと感じてます。
今回は、深田さん&海老原企画のインクルーシブ運動会に、伊藤弾さん(SMA当事者:深田さんの友人で初回より参加)、杉田省吾さん(ALS当事者:当法人と連携協力を結ぶ川崎つながろ会)、佐藤裕美さん(ALS当事者:当法人理事)、当法人事務局が参加させていただきました☆
昨年の様子はこちら ↓ ↓ ↓
インクルーシブ運動会って何?
■深田耕一郎(ふかだ・こういちろう)さん
社会学者で、著書に『福祉と贈与』(生活書院,2013)があります。
社会学を教える准教授でありながら、NPO法人学生支援ハウスようこその事務局次長もやられています。
深田さんは学生時代、新田勲さん(日本の障害福祉のパイオニアで重度脳性麻痺者)の介助をやっていました。現在は、当法人理事・天畠の介助も行っています。
■きっかけ
2018~19年に、深田耕一郎さんが、東橘中学校の先生からの依頼で「地域ふれあい体験学習」のひとコマを担当したことがきっかけでした。
2020年からは「総合的な学習の時間」のなかで「福祉」をテーマにした授業を担当することになりました。
川崎市の中学校ということで、同市出身の海老原と相談したところ、中学生たちに、車いすの人でも参加できる運動会を企画させて、当事者も呼んで実践しちゃおうというアイデアが生まれました。
というのは、海老原も、中学校のころは運動会の競技には参加できず、放送係をまかされていたといいます。だから、あまり楽しい思い出はないのだと。
それは、車いすの人を排除するルールがまちがっているのであって、みんなが参加できる新しいルールを考えればいいんじゃないか。
そうした考えのもと、インクルーシブな運動会を企画しよう!という取り組みが始まりました。
概要
開催校:川崎市立東橘中学校
対 象:1年生320名(8クラス)
科 目:総合的な学習の時間
日 数:全体学習+5日間
境を越えてからは、当事者3名が参加し3クラス担当しました。
他5クラスでは、昨年同様に他の団体などが担当しています。
内容
-全体学習-
深田さんと伊藤さんで、インクルーシブ運動会を行うにあたり趣旨説明を行い、「インクルーシブ」「合理的配慮」「社会モデル」の考え方について紹介をしました。
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-1週目-
いよいよスタート!まずは自己紹介の日。
※事前に担任の先生とオンライン顔合わせをし、この日の予定を話し合いました。
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胃ろうや口文字の説明のときにはすぐそばで釘付けになる生徒さんたちでした。
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旅好き・山登り好きな佐藤さんの経験に興味深々な生徒さんたちでした!
-2週目-
この日は作戦会議1日目!ゲストのことを知って、どうしたら騎馬戦が一緒に楽しめるかを考えます。
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前が見えにくかったり、教室の入り口が一度で曲がれなかったり、みんなで交代してフロアを一周してきました。
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腕が上がらないから支えてくれる?と佐藤さん。
あまり転がらないから傾斜をつけてみようよ!と試行錯誤中。
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腕と指先をサポートしたら一緒にできるかな?
-3週目-
内容とルールをさらに詰めていきます!
昨年は生徒さんだけの話し合いでしたが、今回は現地やオンラインにて一緒に行いました。
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-4週目-
さあ、いよいよインクルーシブ運動会本番!
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説明と相談をしてくれました。
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伊藤さんは車椅子の背に貼り、介助者が操作する杉田さんは車椅子の横に貼って逃げ回りました。
-5週目-
最後は、クラスごとに振り返りです。
よかった点は?
どんな思いを込めた?
こうすればよかったなと思う点は?
気づいたことや感じたことは? など
もう一回やってみよう!と内容を変えてチャレンジするクラスもありました。
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目であっちむいてホイ!
クラス内でおこなうためトーナメント表ができていました。
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全5回、たくさん話してきましたが、私たちも生徒さんたちもまだまだ話したりないような様子でした。
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全体を終えて
杉田省吾さんより
この取り組みは素晴らしいといつも思います。この取り組みは絶対に波及させるべきで、その意味で私たちの役割はとても重要だと受け止めていて、授業のたびにどうふるまうべきかを考えています。
一方で、この時期が近づくとワクワクが止まらない。とにかく生徒たちからは生命体としてのエネルギーをビシビシ感じ、毎回エネルギーをもらっています。生徒たちにはプラスの可能性しか感じないのです。いいことばかりではないでしょうが、教師がなぜ過酷な業務をそれこそ命がけで遂行しようとするのか、まったくほんの少しだが想像できた気がします、と言ったら教師たちに怒られるかもしれませんが、それくらい生徒たちには敬愛の念を抱いています。
今回、私のことを知ってくれてありがとうございました。どう対処すればいいのか困ったでしょうが、そんな私のために楽しい「あっちむいてほい」を発明してくれたことは本当に感謝です。これからもすくすくと育っていってほしいです。そうなるよう祈ってます。
S先生、慣れないマネジメントありがとうございました。これからも健康に留意しつつ生徒たちのパワーを受け止めてください。
最終日、私の視界にM君がいなくて心配したのですが、最後、写真撮るときに気づいたら隣にいてくれて嬉しかったです。
※M君は、この前の授業の運動会本番で、私の車椅子をかなりアグレッシブに運転したのでそのことを気にしているんじゃないかと心配していた。
佐藤裕美さんより
初めての参加だったインクルーシブ運動会。初日の自己紹介の日から運動会本番、そして最終日の振り返りを通じて、私が一番強く感じたのは、生徒さんたちは一人ひとり、全員がとてつもない宝物をすでに持っているということ、そして全員が可能性の塊だということでした。クラスや廊下や体育館で、生徒さんたちは、自分自身が感じたことばかりではなく、周りの友達や先生や、突然クラスに入り込んできた私が感じ考えていることを繊細に想像し理解し大切にしようと一生懸命でした。その根っこにあったのは、みんなが楽しいと自分も楽しい、ここにいるみんなに楽しいと感じて欲しい、という気持ちだったのではと思います。逆に言えば、誰かがかなしいと自分もかなしい、誰一人としてかなしい気持ちでいて欲しくない、という思いです。生徒さんたちはインクルーシブを、少しずつですが、しっかりと実践しつつあったような気がします。
生徒さんたちの中にすでにある力に生徒さん自身が気づくきっかけとして、インクルーシブ運動会が果たす役割は大きいと感じました。残念ながら私たちの社会は、まだまだとてもインクルーシブとは言えない状況ですが、この取り組みを通じて、生徒さんたちの中に大きな希望を感じることが出来ました。
伊藤弾さんより
■感想
今年で4回目の参加になるインクルーシブ運動会。今年も色々なドラマがあり、おもしろい経験ができたと思います。今年学んだことは去年とまた全然違う。だから毎年参加することに意味を感じます。
今年学んだ1番のことは、インクルーシブという概念は誰かが教えて身につくことではないということ。インクルーシブな状況とはなにかを、私たちは口で教えることはできますが、それを心から理解するには、それを実際に経験することが大事です。目の前に仲間はずれにされている人がいたとすれば、その人が自分と違う状況であることに違和感を覚えます。どんな理由で仲間はずれにされているかに関心を持ち、その人がどうすればみんなと楽しく過ごせるようになるか、考え、実行に移します。でも、この過程で何より大事なことは、コミュニケーションをとること。「あなたは誰で、どんな人ですか?」「何が出来て、何が出来ませんか?」「一緒に楽しく過ごすためには、私たちは何をどのように工夫したら良いですか?」エクスクルーシブな環境にいるあの子がどういう人か、本人とのコミュニケーションで知ろうとすることは、インクルーシブな環境創りには必要不可欠であることを学ぶことができました。
■私の考える「インクルーシブ」
インクルーシブって、マイノリティに優しくするっていうのとはちょっと違うのですよね。優しくするということは、特別扱いをするということ。それってインクルーシブとは真逆のことですよね。
例えば、6人いてそのうち1人が身体障害者で、打ち上げでみんな一緒にパーティーするけど、身体障害者ではない5人はビールがけをして体中泡だらけ。身体障害を持った人は、「危ないから」と5人に気を使われ、一人だけ涼しい顔。正直、みんなと同じレベルで笑えないことやずぶ濡れになった気持ち悪さとかを自分だけ経験できなかったことは寂しい。
インクルーシブな環境とは、みんなに違いがあることを知り、認め合い、みんなで経験を共有できること。配慮は1人だけにするのではなく、みんなにすることがインクルーシブ。
上記の例で挙げたメンバーで明らかにみんなと違うのは身体障害を持っている人だが、残りの5人の中で、LGBTQ当事者がいるかもしれないし、小麦アレルギーの人がいるかもしれないし、双極性障害がある人がいて今は鬱の期間かもしれないし、親がアル中の人がいてアルコール飲料に強い拒否反応があるかもしれないし、昨日彼女に振られた人もいるかもしれない。みんなが楽しかったらそれでいいのだけど、身体障害を持った人だけ参加できないことがあるのなら、それはむしろやらないほうが良いのではないか。障害を持ったメンバーにもビールをかけてあげることも良いかもしれないが、ビールがけをやりたくないと思った人もいる可能性だってある。他にも楽しめた方法があったに違いない。みんなが同じ空間で経験を共有できることがインクルーシブだから、特別扱いという名の余計なおせっかいなんて要らない。
みんな何らかの理由で障害者だし、誰にも障害なんて無い。障害者がそこにいるからインクルーシブな環境作りの必要性が生まれるわけではく、障害者がきっかけとなり、全人類がお互いの違いを認め合い同じ空間で時間や経験を共有することの重要性を知ることが大事。インクルーシブ教育で、障害者が生きやすくなるのではなく、障害者を含めた全員が生きやすい世界になりますように。
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ありがとうございました!
参考
深田さんの著書『福祉と贈与』生活書院,2013
川崎つながろ会-川崎市の神経難病コミュニティ
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