見出し画像

学習の記憶

「成果を見せた学習スパイラル」

生徒のカリキュラムを組み立てるときに重要な項目があります。それは「繰り返し学習」です。私の教室では、幼児から中学生まで通ってきてくれている生徒がいます。この生徒達は、一様に繰り返し学習を受けてきました。学習では、先に進むことの大切さも忘れては行けないことですが、それ以上に「定着」という学習の最大要素が必要です。

何故繰り返しが必要なのかは今更多くを語る必要はないでしょう。しかし、敢えて申し上げれば「弱点克服」ということになるでしょうか。学習を積み重ねていく上で、その時解らなかったことが後から理解できたことがあるはずです。それは、問題に対し正面から挑み、考え抜いたことで得られる一つの道筋が出来たからです。学ぶと言うことは、思考の繰り返しの中でそれぞれの道に通ずる道筋を付けることなのかもしれません。一つの問題に対し考え悩むことで得られる学習の記憶です。指導者が陥る問題の中に「教えすぎ」というものがあります。家庭学習でもそうです。極端な言い方をすれば、その日、その時に解らなくても、できなくても良いのです。ただ、大切なことは、問題に向き合うことです。そして考え悩むことです。

子どもは、「解らない」と簡単に言い放ちます。「何が解らない?」と聞いても答えは返って来ません。その場合は、問題文を読ませるとか、書写をさせます。勿論図などもあればそれを書かせます。これが、問題を解く際の思考の源になっていきます。

学習において、記憶をさせることが重要と考えられています。それと平行して重要なのが記憶の活用と変換です。記憶には、記銘という覚えることを意味する内容があります。それだけでは意味がありません。想起という、記憶を思い起こすことが出来なければ意味はありません。活用と変換とは、一度記憶された内容を、思考という課程を通って変化させる事です。例えば、「馬」「草原」「走る」という言葉を記憶します。これらを活用すれば「馬、草原、走る」となり、更に変化して「馬が草原を走る。」という文に変換されます。これは、思考の過程で「草原を走る馬。」とも表現できます。記憶されたものは具体的に使われることで、様々な形に変化していきます。

私の教室では「吉備システム」という問題のデータベースから必要な問題を引き出し分析できるシステムを使用していることは既にお伝えしました。昨日の金曜日は私の授業日です。幼児から通ってきてくれている生徒が何名かいる中学生の数学を指導していました。テスト対策もあり、授業中幾つかの質問に答える以外は、自学自習で進められます。教えすぎると「考えない生徒」を送り出してしまうので、多くを語りません。出来た問題は直ぐに採点し返します。すると、「あ!また同じミスをした!」と何かに気づいたようで、自分でその問題の分析をし始めました。「弱点克服」授業がここにあります。今春既に防衛大学の合格を勝ち取った元塾生も、同様の授業を受け、繰り返し学習で弱点克服だけでなく、他の問題の定着に役立ったと言います。繰り返し学習は、そのまま子ども達の学習の記憶を呼び起こします。すると、何度か難問に臨むことで、あれだけ苦労した問題がいつしか解けて来るのです。これが、子ども達の力を引き出す授業です。教えすぎは思考力の低下を招くからです。

私が冊子のテキストではなくプリント学習にこだわるのはここにあります。繰り返し学習がしやすいのです。幼児教育のカリキュラムも、学習スパイラル構造になっており、問題の記憶と定着に大きな成果を上げ始めています。そこには、考えるという一見すると見えない学力が備わっています。指導は、幼児期から次第に変化していきます。いつまでも教えられるという構図を作っては行けません。自分で考えることを学ぶ必要があります。だからこそ繰り返し学習が必要なのです。様々な知識を蓄えることも大切ですが、もう一つ活用という事を忘れては行けません。記憶を呼び起こし、他の記憶と突合させ得られた思考は、新たな知識の枠組みを構成します。解らせようとする指導ではなく、子ども自身が解こうという意識を高めることが大切だと自分に言い聞かせています。

2013/2/16


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?