見出し画像

「必要なことばの獲得」

これからの社会はより思考力を持った人を求める。最近よく言われていることですが、思考力は今まで何度も触れているように実に難しい指導です。思考力をつける為の指導を始めても、子ども達には能力差があります。能力差を埋める学習ほど難しいものはありません。そして、能力差の一番の原因が語彙数の量になります。ご存じの通り、思考にはことばが必要です。人は、ことばを介して、思い、悩み、考えます。思考を音楽のメロディーに例えてみますと、ピアノで3つの鍵盤で奏でるメロディーと、全ての鍵盤を使ったメロディーでは何がどのように違うでしょうか。鍵盤の数は、メロディーの豊かさだけでなく、優雅さ、繊細さ、奥行き、イメージ、ダイナミック等々、数多くの表現が可能となります。学習も、この鍵盤数と同じなのです。学習の基本は、この鍵盤数になぞられるように、ことばの数を必要とします。ぞの数が多いほど、表現力だけでなく、思考力や、読解力にも強い言語性を持つことができます。

幼児期に必要なことばは、0~2歳までは名詞が大切です。家庭内にある物の名前、よく見かける動物の名前、外にある建物の名前、また乗り物の名前などです。そして、大切なことばは挨拶です。「おはよう」「こんにちは」「おやすみなさい」「いただきます」「ごちそうさま」などです。ことばは、心を作っていきます。挨拶はその中の代名詞でしょう。

3歳~5歳までは、動詞・形容詞(形容動詞も)・副詞・対義語・接続詞、そして助詞が大切です。これらはまず耳で聞いて覚えていくのですが、本の読み聞かせがここで大切な役目となります。同時にことばを覚えてくると、その覚え立てのことばを使いたくなります。それが「会話」の始まりとなります。保護者はここで「聞く耳」を持たなければなりません。これは子どもにとっても言える大切な事です。会話の際、子どもは間違った助詞の使い方をする場合が多く出てきます。その際、優しく正しい助詞の使い方で言い直して下さい。ただし、決して強制してはいけません。大切な事は、子どもの耳を鍛える事です。「聞く姿勢」を作ることです。

私たちは、「聞く姿勢」をフラッシュカードを使い行っています。同時に、フラッシュカード(ここでは復唱式を指しています)で、発声発音の練習も行っています。早ければ良いというカード指導は誤りです。正しい発声発音で聞かせなければ意味がありません。読めるようになってきたら、子ども達が先に読むようにします。ここでカードのめくりを早くするのです。何度も言いますが、あくまでも正しい発声発音で読めることが重要です。

「漢字や四字熟語を何故幼児で行うのですか?」というご質問をよく頂戴します。「小学校に上がったときに助かります」という解説をよく耳にしますが、これにはもっと基本的な学習目標があります。それが、先にあげた「聞く姿勢」と「見る姿勢」を作ることなのです。漢字などは、難しく幼児ではそう簡単に読めるものではありません。しかし、カード指導は、先生のことばをしっかり聞いていれば答えられるのです。この指導を通し、子ども達は自然と聞くことの大切さを理解します。覚えてくると、カードを見れば答えられます。これが「見る姿勢」です。しっかりと先生のきるカードを「見れば解る」という基本を学べます。幼児であれば、この学習を素直に吸収してくれます。

また、発生発音の練習になります。四字熟語は、比較的リズミカルにきれるカードです。そのリズムの良さは、子ども達を元気づけてくれます。更に、四字熟語には「拗音」「拗長音」が多く含まれており、発生発音の、絶好の練習教材になります。カードは、まず正しく読む事を前提としなければなりません。何を言っているのか解らないきり方もあるようですが、「聞く耳」を鍛え、「聞く姿勢」を指導する為のカードという捉え方が私たちの指導法です。

カードには、反対語カードもあります。反対語カードは短期記憶を意識しています。他のカード同様、発声発音・姿勢などの指導に加え、も一つ大切な指導が記憶なのです。ただし、記憶は覚えただけでは意味がなく、記憶された情報を活用し、他の記憶と結びつけ、新たな関連した言葉や、イメージを創作していく事が大切です。ですから、まずはカードを淡々ときって行きます。こうした繰り返しが、語彙を増やすための素地となり、会話からでも、読書からでも、しっかりと新しいことばを吸収できる状態を作り上げてくれるのです。

2013/9/11


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?