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学習の環境
「勝ち負け」
世の中では、よく「勝ち組」「負け組」と言われることがあります。正直、私の大嫌いな言葉の一つです。人は知らず知らずに他人や、場合によって我が子に対しても差別的見方をしています。そして、この様にレッテルを貼りたがります。少しの失敗でも「負け組」と…。
あるとき、小学校受験に落ちた子、中学受験に落ちた子に対し、「負け組」と称した方がいました。とても許せることの出来ない暴言です。今回、ノーベル賞の生理学・医学賞を受賞された、京都大学教授の山中伸弥iPS細胞研究所長(50)は経歴を見ても、私如きの立場では大変申し訳ない言い方ですが、ずば抜けた方ではありません。
(ただ、医者になられた段階で、凄い方であることが解りますが)以前、手術では「邪魔口」と言われたとお聞きしています。その時点で、山口教授は、いわゆる世間で言う「負け組」であったはずです。
人生は勝ち負けで決まるモノではありません。自分自身の力は何に、どこで発揮されるのか、まさしく経験を通して知るのだと思います。ご自身の経験から、次なる自分自身の居場所を探し、夢を持ち、他人の貼ったレッテルを自ら剥がされた山口教授はやはり偉大な方です。私達が携わっている教育も、子ども達にレッテルを貼るようなことがけしてあってはならないと思います。ただ、唯一貼れるとしたら「素晴らしい子」というものでしょうか。
今回の山口教授のニュースは、ノーベル賞受賞という快挙という枠を越え、大きな教育的効果があったように思います。今の子ども達に欠けている、いや、むしろ私達大人にかけている様々なことを、改めて問われたような気がします。特に私にとっても、大変大きな勇気を頂きました。私は、子ども達からの「なぜ、学ぶのか」という問いに対し、「人の為に学ぶ」という答を出しました。山口教授の「学び」は、まさに人の為です。そして、山口教授の研究を支えたのも「人」でした。教授を支えた環境、それは、人で囲まれた環境です。
先日の「ジャニーズJRの真実」という中でも描かれていたように、同じ時間を、同じ夢を持ったもの同士が共有し、共感しあうことの素晴らしさ、清々しさ、それは、彼らだけのモノではありません。特殊な環境ではないのです。学校の教室、部活、サークル、塾、会社、それぞれにそれぞれの目的があるはずです。私達、民間教育の目標は、子ども達に学ぶ事の面白さ、不思議さ、愉快さ、爽快感を一人でも多くの子に味わって貰うことです。そして、自立の道を歩んで貰うことです。これは、本来は学校が行うべきことですが、今の学校にはその力が少しだけ足らないようです。
2012/10/16
著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫
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