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算数指導

「考えさせる指導」

今、小学生で習う「かけ算」について一つの論議が巻き起こっています。「かけ算式の順序」がそれです。教科書、教科書、市販の問題集などでは、

※「1つぶんの数(1あたりの数9 × いくつ分 = ぜんぶの数」

というように順序があることを示しています。しかし、文部科学省の指導要領には、この逆で式が書かれたものを誤答とは限定していません。式の順序に関し国が定めるべき性質のものではないというのが見解です。

かけ算式には順序があるという考え方が一般ですが、かけ算式には順序はないと反論する方もいます。私は、あくまでも論理性を重視する立場で、子ども達自身が式の説明をしっかりと出来る事を前提としています。すると、必然的に式には順序が存在することを理解します。つまり、考えて式を立てることを常としています。

近年、子ども達の思考力が低下してきていると言われていますが、それは、子ども達に責任があるとは思えません。計算は機械的学習だと言われていますが、それは、数字だけの計算練習に偏った指導が多いからです。直ぐに計算式を解かせる傾向は今も根強く、この繰り返しは、答の丸暗記となります。例えば、2+2と言う計算、答は直ぐに出てきます。では、これが文章問題であったならばどうでしょう。文から内容を読み取り、加法なのか減法なのかを考え、式を立てます。いくら、計算問題を解いても、文章問題はその計算式を自分で考えなければなりません。更に、文章問題は加法から減法へと移ります。ここで、計算に順序が必要である事がわかります。何故なら、小さな数から大きな数は引けないからです。(この時期の子ども達には、正負の数のような、数の抽象的概念はまだ未発達です。)

引き算の文章問題では、当初引かれる数が問題文の初めに出てきます。引き数は後、このパターンが長く続くと、最初にでて来た数字を式の初めに書くようになります。学習の悪しきパターン化です。ここで思考は働いていません。子ども達は機械的に数字を並べていくだけです。数字中心の計算練習、思考を追求しない文章問題の解かせ方、足し算から引き算へ、そしてかけ算、割り算と進めば進むほど、文章問題で「ねえ、足し算?引き算?、それともかけ算?」と学習とは無縁の質問が飛び交います。算数指導は、どれだけ多くの思考を積み重ねるかが大切です。すると、どうしても数字だけの指導では限界があります。だから、数字と具体物の間に半抽象的なものが必要になって来ます。それは、おはじきではありません。計算棒でもありません。タイルなのです。タイルは正方形です。結集力が良く、数を具体的な量として捉えることが可能です。この教具のもっとも大切なのは
操作が出来ると言うことです。

計算も、タイルを使うことで思考が働きます。文章問題でも、タイルを使いシミュレーション出来ます。加法の合併は同時に加える動きとなります。添加は、今あるタイルに時間をおいて加えるという動作になります。また、タイルを持ち直接切り取り残ったタイルを見せることで「求残」という考え方の動作が出来ます。文章的に表現された問題から、タイルを使って問題を表す、または、絵や図にして表す等、イメージや操作が子どもの思考力をより高めることになります。

2+2という式を立てた。では何故そのような式になったのか説明をしてもらう。具体的思考から抽象思考へと導き、更に論理的に筋道立てて説明をする。時間はかかりますが、確実に算数の目的である「論理数学的思考」を養う事が出来ます。

先の「式の順序」も論争の中心は、子ども達に問題の質を理解させる事の大切さがテーマとなっています。プリンスジュニアの算数教材にもある、「12になるかけ算式を考えさせる問題」もタイルを実際に並べることで、いくつもの形になることを発見出来ます。その思考は、その後の面積などに活かされて、それはそのまま、式の展開や因数分解にまで通じる学習になります。思考力は計算問題でも十分養えるのです。

2013/1/30


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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