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数学を語る


数学の授業から

私の授業は良く脱線する。しかし、面白いことに、自然と本線に戻り予定の学習を終え、目的地に到着する。授業前のオープニングトークから始まり、数を通した不思議の世界に案内することもある。

中2の授業では、現在一次関数を行っている。生徒から、暫く使っていなかった「素因数分解」で求める最小公倍数の方法を尋ねられた。復習を兼ねて指導をしているとき、かけ算を簡単にできないかという話題になった。そこで、当然ながらタイルを取り出し、生徒とあれこれ考えることになった。

数学はどこかで共通の考え方がある。これについては以前お伝えした。足し算も、引き算も、かけ算も、割り算も、基本は3つの数の関係から成り立っている。この三者関係の展開が様々な考え方の源になっている。抽象思考を求められる数学だが、「ことば」を大切にした「ことば」で伝える算数・数学指導だから、物事の関係を理解できる。中学生くらいにもなると、子ども達は、こんな勉強のどこが大事なのかと疑問を持ち始める。抽象的に進む数学の授業だから、そこに添える「ことば」の意味が大切になる。

かけ算の計算を考えていくと、ある法則にたどり着いた。13×13のように、十の位が1の場合、それは実に分かり易いものだった。立証はタイルで行われた。低学年で行われるタイルのかけ算指導、13×13のタイル図をホワイトボードに表した。すると、次のような関係になる事がわかった。

当たり前のような関係だが、筆算を分解するとこの様になる。これはそのまま、因数分解と式の展開へと導かれる。同じように15×15等を計算してみる。自分たちが見つけた計算方法に驚きの声を上げる。すると、当然他の計算にも考えが及ぶ。25×24等はどうするか、今までのようには行かない。新たな思考が巡る。どこかに法則はないかを探り始める。生徒の目は光り輝いている。最終的に、式の展開公式に行き着くことになった。2桁のかけ算から始まった数の真理探究は、その関連性に於いて同じ道を辿っていることに彼らは気付いた。数学でも会話ができる。数学でも夢を語れる。

数学というと敬遠されがちだが、考えることの楽しさを味わうと、幾つもの問題にチャレンジしたくなる。指導する側が、学ぶ楽しさを実感できなければ、相手、つまり生徒には通じない。これは何事でも同じだ。人に伝える場合の原理原則であると言えるだろう。

「先生、タイルって超優れものだね!分かり易いし、人にも説明ができる。関数のグラフも、学校の授業より遙かに短くて、それでいて一発でわかった。他にはどんな使い方があるんですか?」授業後、こんな嬉しいことばを残してくれた。今週は体調がすぐれず、頭痛に悩まされたが、子どもの力は凄い! そんな頭痛が吹っ飛んでしまった。日曜日はプリンスジュニア国分寺教室主催の「文字と言葉のセミナー」がある。こんどは、教室の先生方、理解ある保護者の方々からパワーを頂けそうだ。

2012/9/29


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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