感覚を鍛える
幼児教育には「もじ領域」つまり言語指導があります。この指導は教育の基礎であることは承知の事実です。「聞きことば」「話しことば」「文字の読み」「文字の書き」「単語」「文の構成」「文の読み」「ことばの記憶」その指導は幅が広く、ひらがなの読み書きができれば良いという訳にはいきません。
「もじ領域」に平行して「かず領域」の指導があります。ここでは思考力の中でも重要な抽象思考を指導します。言語と論理的思考、基礎教育の重要性をここからでも確認できます。基礎教育では「もじ」と「かず」領域に加え「ちえ」と呼ばれる「知覚領域」があります。この領域の指導は、基礎教育の中でもかなり専門的知識が必要です。指導としては小学3年生ころまでが重要時期だと言えるでしょう。指導は、一見して遊びと解釈されそうな内容が多く、絵画造形や工作、生活体験学習、感覚学習と幅の広さが特徴的です。この知覚領域は、頭だけでなく、手足や指、身体全体を使います。図(ペンフィールド「体性感覚マップ」) をご覧頂いてもお判りのように、頭部以外では、手足や指先の面積が突出しています。指先は突き出した大脳と言われるように、指先には多くの神経が集中しています。「創造する手」なのです。
では、指先を使った刺激にどのような指導があるでしょう。動作を表すことばから連想してみてください。
こねる
切る
着る
剥く
塗る
付ける
はめる
たたむ
折る
削る
おす
通す
結ぶ
ほどく
ちぎる
回す
包む
持つ
はさむ
つまむ
握る
さす
ひねる
さする
なでる
まく
洗う
開ける
組む
積む
はめる
はがす
引く
合わせる
重ねる
例えば、「塗る」ここからどのような指導を連想されますか?ここに「クレヨンで」ということばを付けると指導内容が具体的に想像できると思います。では、同じ「塗る」でも、「糊を」ということばを付けるとどうでしょう。基礎教育でも優秀な指導者は、直ぐにもう一つのことばを付け足します。それが「指先で」ということばです。ここで「塗る」という指導が本格的にスタートします。最近では「汚れるから」とスティック糊を使わせているところが多いようですが、それでは意味がありません。子ども達が使用するのは、ふた付きの、手のひらにのるサイズの容器に入った糊です。
子ども達の動作は、ヽ犬魍ける 糊を指先ですくう 8劼鯢佞韻襦´じ劼鮖慇茲嚢げる セ慇茲鮨,という手順となります。最後に貼り合わせるものを付け、上から面をなぞり密着させて終了です。この指導で何が学べるのかお考えください。自分が普段から使う糊であれば、重さを実感するでしょう。そして指先で蓋をとります。指先の訓練になります。そして糊をすくう、ここで思考が必要になります。救う量が多いと後の処理が大変です。目測、目分量という量感覚を身につけることになります。い任聾劼鮖慇茲嚢げていきます。面の広さを指先で実感することになります。皮膚から伝わる面の広さ、糊の状態、この一連の感覚刺激こそ、今の子ども達に欠けている刺激であり指導です。何気ない指導なのですが、手順や刺激内容の理解があって初めてできる基礎教育を行う指導者の指導です。
感覚教育では、保護者の中に、手が汚れるからと嫌う傾向があります。子ども達の不器用さは作られるものが多く、先天的には、基礎教育の時期に適切な指導さえすれば誰でもが器用になります。指先の刺激や指導が疎かになると、文字を書くことにも影響します。それ以上に、箸の持ち方、ひも結びなど大人になってから恥をかくことになります。
2013/7/28
著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫
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