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投資で貧困撲滅できるのか?プロ投資家の仕事術 (佐山展生×慎泰俊イベントレポート)

自分のためのお金儲けには興味がない。人のため、社会のためにお金を儲けて、使いながら生きていきたい。

ミレニアル世代を中心にそんな価値観の人が増えていますが、それには高度なビジネススキルと、人間性を見抜くソフトスキルが必要になるものです。

それを体現しているのが、慎泰俊氏。慎氏は、貧困の撲滅のため「民間版の世界銀行をつくる」ことを目標に、世界各国でのマイクロファイナンス事業に取り組んでいます。

私は自分が生きているうちに、世界中の人に必要最低限の機会の平等がある世の中を作りたいと思っています。
そのような目標を掲げるのであればなおさら、まずは自分の境遇を恨むことから決別するべきです。(イノベーターズライフ「ランニングで自意識を解放、自分の境遇を笑い飛ばす」より)

そんな慎氏がプライベート・エクイティの世界に足を踏み入れたのは、佐山展生氏との出会いがきっかけだとか。

ニート時代の当時何者でもなかった私に会って、「やはり自分はこの仕事に就こう」と思うきっかけをくれたのは、ユニゾンの創業者でもある佐山展生さんでした。(イノベーターズライフ「転職は、職場の居心地が良い時にするべき」より)

そんな特別な縁の二人が、4月11日、一橋講堂で対談しました。

慎氏が日々の投資の仕事の中で疑問に思うことを、先輩投資家の佐山氏に質問する形で進んだ対談。そのハイライトをお届けします。

人間性を見抜くプロ投資家のメソッドQ&A

Q:デューデリジェンスですべての情報をチェックしきれない時、どう判断していますか?途上国だと情報が手に入らないことも多く、完璧に調べて判断することは難しいケースが多いです。

佐山:「手に入る情報が少なければ少ないほど、リスクが高いですが、それは競争相手が減るということでもあります。
つまり、入り口のハードルが下がる。
最後は、『感覚』で決める。

ちなみに、佐山さんの決断は、1.5秒もかからないことで有名です。いつも即断即決されているということですね。

Q:では、その決断の要素とは何でしょうか。

佐山:「その人のかもしだす雰囲気を見て決めます
長年、悪いことしている人は悪い顔をしている。
嘘ついている人は、嘘をついている人の顔をしているものです。」

まさに、小学校の先生から「嘘はついたらいけない」と教わったとおりです。

Q:投資家として技術革新にどう向き合っていますか?アジアでマイクロファイナンスに取り組んでいると、技術革新によって、当初安定していたビジネスモデルがあっという間に崩れ去るリスクがあることを常に感じています。それに対し、どんな準備をしていますか?

佐山:「わからないものには投資しないとのポリシーを貫いています。
ただし、まずコンサルタントに徹底的に調べさせます。
100%確信できるまで調べつくすことはできませんが、とはいえ、真剣に勉強すればある程度はわかるもの
中途半端に知識ある人の説明を聞いてもよくわからないですが、本当にわかっている人の説明には腹落ち感があります
だから、わかっている人の話を聞いて、最後は直観で決めます。」

ちなみに慎さんは、わからないものを見通す力を養うために、ご自身で「手を動かす」ことを積極的にされるそうです。今は、週末にパイソンで機械学習のプログラミングをしているということ。

よくわからないことも、手を動かしてやってみると、3か月から半年でだいたいわかってくるといいます。

Q:経営のできは経営者によって9割決まる。では、優れた経営者はどうしたら見極められるのか?

慎さんは過去に、慎重に慎重を重ねてカントリーリーダーを採用したはずなのに、現地で受け入れられなかったり、うまくワークしなかったケースを何度も見てきたそうです。

採用する経営者のヒット率を高めるためにできることはあるのでしょうか。

佐山:「経営者のヒット率は3割程度
イチローの打率より低く、それより絶対に高くならない。
これは、プロ野球選手の打率が3割を超えることがほぼないのと同じように、“そういう性質のもの”。」

その理由は、面接ではその人が「わかっていること」は確認できるけど、実際に「できるかどうか」は確認できないからといいます。

Q.あわない経営者をすぐに交代させることは可能でしょうか?

通常、投資家が採用して送り込んだ経営者を交代させることは、非常にやりにくいそうです。
それに対し佐山さんはズバリ。

佐山:「人を交えるのも送った人の責任です。
経営は、経営者で9割決まる
だから交代が必要であれば変える。」

見切りをつけるタイミングとしては、3か月で会社の雰囲気が変わっているかどうかである程度判断し、半年で何かしらの結果が出ているかどうかで最終判断するといいます。

Q.  逆に、優れた経営者とは、どういう特質を持つ人なのでしょうか。

佐山:「私利私欲がないこと。
会社を愛し、社員を愛せるか。
24時間365日会社のことを考えていらか。
夢を語れるか。」

これにはグッときます。

ということで、最後の質問です。

Q. 仕事時間をどう配分していますか?

佐山:「デスクワークはしない。とにかく、外部に対して発信することに時間を使っている。」

慎さんがこんな質問をしたのにはわけがあり、今、ご自身が手を動かす時間を限りなく減らすことに取り組まれているそうなのです。

というのも、もともと器用な慎さんは、どんなことも勉強すれば人に追いつけるという感覚で、これまで馬車馬のように仕事をされてきたそうです。でも、マネージできるのは3か国が限界だとか。ある日、世界銀行のデータベースを眺めていて、カバーしなければいけない国があと50か国以上あると気づいたときに、今の仕事のやり方が会社の成長を阻害していると気づいたそうです。

それ以来、ご自身がやることは「ビジョンと価値観をレバレッジすること」と覚悟を決め、そのように動いているそうです。

「自分がやった方が早い」にどう折り合いをつけるのか。
ビジネスマンの誰しもが、向き合うべき課題ですよね。

佐山さんは徹底して、「自分しかできないことしかやらない」方針を貫いているそうです。

佐山:「M&A交渉はスカイマークしかやらない。
だけど、スカイマーク社員に向けての写真入りメッセージ作りは、毎週3時間以上の時間を投入する。それは、自分にしかできないスカイマークにとっての重要なことだから。」

佐山さんの投資先への、ハートとプロフェッショナリズムが感じられるエピソードでした。

会場には投資関連の仕事をしている方も多く詰めかけ、お二人への質問も飛び交っていました。

イベント後、慎さんからもこんなメッセージがありました。

「投資」に関する専門性の高い対談でしたが、どこか暖かな空気が流れていたのは、ハートのある投資を実践しているお二人だからこそかもしれません。

投資で社会課題が解決されるーーそんな未来をぜひ見たいです。

※本記事は、4月11日、一橋講堂にて開催されたNewsPicksアカデミアイベント佐山展生氏と慎泰俊氏の対談をまとめなおしたものです。

文:山口晶子
編集:柴山由香

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