スキーで転倒したお客さんの施術
スキー選手で数年のお付き合いになるお客さん(=Pさん)が遠方から来られました。先月スキーで転倒して足首と肩を傷めた、とのことです。足首は地味にずっと痛い、肩は痛くてこれ以上は挙げられない、と見せてくれます。
足首と肩、のような組み合わせは少し注意が必要で、転倒して同時に傷めることはあまり考えにくい。大抵は、本当に傷めているのは足首だけで、その傷めた足首をかばって肩も痛くなっているに過ぎない、というパターンが多いです。そしてその場合、肩への施術はほとんど必要ありません。足首にきっちり施術ができたら肩は自然に改善します。
遠方のお客さんですから猶のこと時間を急ぎたい……焦る気持ちは湧きますが、どこにどれだけ施術をするか、その時間配分こそが勝負ですからまずはちゃんと問診をする。ここで多少時間をかけても、見通しを持って施術に臨むことができればすぐに取り戻せます。
案の定、Pさんも、実際に傷めたのは足首だけのようです。「病院には行っていないけれど、骨にひびが入っているのかもしれません。ひと月ほど経つのに痛みが引かない」とおっしゃるので注意して検査する。で、まずは患部と思しき場所の周辺に施術。ひと通り作業が済んだら立ち上がってもらって確認。この時点で肩の症状はほぼ改善していました。よし。肩への施術は不要。
また寝転んでもらって、今度は患部近辺に取り掛かります。検査すると施術できそうなので、どうやら骨折はなさそうです。おそらくは、短い靭帯をピンポイントで傷めたとかそんな感じなのでしょう。きゅきゅッといじくっていると足首の緊張がじわっと抜けて、関節がくたっと弛んだのがわかりました。よし、これで行けたぞ。私の感触ではこの時点で本丸が落とせました。あとはケガにまつわる全身の混乱を解除して、プラスアルファの作業で全身のバランス向上に努めれば作業は完了です。
非アスリートな人の身体を一般車に例えると、アスリートの身体はレーシングカーみたいなイメージで、用途が明確な分、身体に起こっている不具合とその立て直しのための筋道はわりと見えやすい印象が強いです。要は、「こうしたいのにできないの、だからここを何とかして!」の自己主張が明確。ただそこはわかりやすい分、改善への要求もはっきりしています。「もうちょっとこうじゃないと良しとは言えない」、採点基準が細かく設定されている感じで、非アスリートな人の身体とは違った徹底さが大事になります。
なのでPさんにも施術中、散々動いてもらいます。施術用ベッドから寝て・起きて・寝て・起きてで忙しないことですが、遠方だしアスリートだしだから仕方ない。
で、まあまあこれで良かろう、Pさんも私も納得できたところでちょうど時間も良くなって、終わりにしました。これで問題が生じなければ、引き続きの施術は必要なし、また来たいときに来てください、と伝えました。実に愉しい施術でした。
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