ストレッチと整体と筋肉痛

 「ふくらはぎの裏を伸ばしていたらその翌日から痛くなって、その痛みが1か月以上続いています」と、お客さん(=Pさん)が来られました。遠方からお越しの、初めてのかたです。

 いつものストレッチを少し念入りにしたら翌朝、寝違えていたとか、テレビでお奨めの軽い体操・ストレッチを見よう見まねで試してみたら翌日から痛くて動かせなくなったとかいった話はよく聞きます。たぶん何度かブログにも書きましたが、ストレッチはわりと危険なのです。失敗しないように、上手く効果的にするのが難しい、と言いますか。
 今回のPさんが私にとって珍しかったのは、Pさんがされていたのが一般的なストレッチでなく〈ゆる体操〉だったことでした。あんまり失敗例を聞いたことがなかった〈ゆる体操〉ですが、程度なのか強度なのか、これもしくじると後を引くのだなあ、と学びました。

 一般的に、伸ばしたい・ストレッチしたい・凝っていると感じるところは筋肉が縮こまっているところで、そのせいで血行が悪くなっている。だから伸ばして血流改善を、と、考えるわけですが、筋肉が縮むには縮むだけの理由がありますから、その理由を改善しないまま伸ばそうとすると、反発します。反発して、余計に縮む、これがストレッチ翌日の痛みです。

 このテの、筋肉がとっさに縮み過ぎて起こるタイプの痛みには、こむら返りとかぎっくり腰、今回のようなストレッチ後の痛みなどがあると私は理解していますが、これを整体で弛めるのは大抵、簡単です。1~2時間の施術でほとんどの場合が対応可能。作業に1~2時間かかって、痛みが引くまでには早ければ施術中、大体は1~2日、長くて1週間くらいかかる場合もあるかな、といったところです。
 作業時間は少ないのに痛みが引くまでにそれなりの時間がかかるのは、痛くなっている時点ですでになんらかの炎症的な事態が起きているからです。それが収まり、その影響がなくなるまでにいくらか時間がかかります。
 というわけで、Pさんにもせっせ施術。

 Pさんは数十年前に右手首の腱鞘炎をされていて、そのときは数回のブロック注射を打ってもらったとのことです。その後、半年ほど前には手根管症候群の診断の下に、同じ右手首に手術をされています。
 右手首の腱鞘炎以前にまでさかのぼれば他にも問題はあるのかもしれませんが、遠方のかたで・症状が明確ですから、わざわざ深掘りする必要はありません。今回の右ふくらはぎ痛の原因はおそらくは右手首の手術痕、と、因果関係は明確そうなので、慎重に検査しつつ・あちこちのバランスに目配りはしつつ、でも結果的にはピンポイントの狙い撃ちで、作業を進めました。
 途中、何度か立ち上がって痛みの加減を確認してもらいながら、施術終了。Pさんは、ずいぶん軽くなりました、と、ゴキゲンで帰られました。

 で、後日。
 正確には施術の2日後にお電話いただきました。当日・翌日は機嫌良く動けたけれど、翌々日になって、足は足だけど、元々とは異なる部分が痛くなった、だいぶ痛いんですけど大丈夫でしょうか、という問い合わせでした。
 2日開いて今日痛い、その痛くなかった2日はよく動けた、その以前には痛かった期間が1か月以上続いていた、ということは、急に歩き始めたことによる筋肉痛の可能性が高そうです。一種のリハビリによる痛みとでも言いましょうか。これは、上に書いた〈縮み過ぎて起こった炎症による痛み〉とは全然別物です。

 ストレッチをする以前・手根管症候群の手術以後からは、右手首周囲に〈使えなくなっている筋肉〉がいくらかあって、それはアタマでは自覚できないけれど筋肉的には全身のバランスを崩す要因になっていた。Pさんの場合、〈右手の負担を右足が引き受ける〉仕方でだましだまし動いていて、そのしんどさは〈ふくらはぎの凝り〉として自覚されていた。だからふくらはぎの凝りを弛めようと、ゆる体操をしたわけです。
 ところが整体をして、急遽、右手首周囲の〈使えなくなっている筋肉〉が使えるようになると、(かばう必要のなくなった)ふくらはぎの負担は軽くなる一方で、いままで負担の少なかった筋肉が積極的に働けるようになったり、そのために全体的な血行が良くなったりします。で、これが、それ以前とは異なる部分の筋肉痛につながります。この筋肉痛は、ふくらはぎの近くに生じることもあれば、全然離れた部分に生じることもあります。ともかく、Pさんにもその状態が起きているのでないか、と想像しました。そしてそうであれば、それは良い痛みです。

 Pさんには電話で要点を説明し、とりあえず1~2日様子を見て、痛みが治まってくるようなら筋肉痛だと思いますから、再度の電話は結構です、でもどんどん痛くなるとか・いっこうに治まらないようならもう一度お電話ください、とお願いしました。
 あれから数日経ちますが、電話は掛かってきませんので、まあ、大丈夫だったかな、と。

 で、ここからは蛇足ですが、お電話いただいたときの私は腰痛の真っ最中でした。右足の施術がうまくいったおかげで腰に筋肉痛が出てました。Pさんには、あ、私もいま同じ状態です、とよっぽど言いたかったけれど、ホントに・絶対同じ状態なのかどうかはその時点では断言できませんでしたから、黙ってましたが。ちなみに私のほうの筋肉痛は1日で引きました。やれやれ。

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