高尾から富士を望む 後編
電車は高尾駅に到着し、京王高尾線へと乗り換える。
乗り換え通路を歩きながら、駅前のスーパーのお惣菜がとても美味しかったので、次来た時もここで食料を買おうと思っていたのだが…そんなことはすっかり忘れていたので、後ろ髪をぐいぐい引かれながらホームへの階段を登った。今日登った階段で一番つらかった。
ホームに進入してきたシルバーのボディに赤紫のラインが入った電車に乗り込む。車内は大変空いていたが1駅しか乗らないので、入ってきたドアの向かいのドアに凭れた。
ほどなくして、終点 高尾山口駅に到着。
この高尾山口駅の駅舎、いつ見ても美しい。
この建物の設計した人誰だろうなと調べると、高確率で隈研吾さんのデザインなので、手の上で転がされている感じがなんだか悔しい。
改札を出て、右手にまっすぐ進むとケーブルカーとリフトの乗り場がある。
その乗り場を左手に、右へ進むと高尾山別院不動院があり、ここで参拝しておく。
無事、帰れますように。
不動院を出て、一号路を進む。
コンクリートで舗装されており、革靴でも登れる初心者用の道だ。
ただ、この参道が一番キツいのでは?と思っている。ひたすら4、50分間、上り坂しかないからだ。
高尾山の上にある薬王院、弘法大師の教え「空」を意識せずとも、思考は勝手に働かなくなる。
体感を意識しながら、ただ前に足を進める。
登る。
登る。
山を登っていると、眠れないほどの悩みもすごく些細なことに感じてくるのがすごく不思議。
上に登れば登るほど、木々が野生的に自由にのびのびとしている。
いくつかのヘアピンカーブを経ると、ケーブルカーとリフトの駅が見えてきた。
駅の付近で、団子やらソフトクリームやら売っている。
とても山の上と思えないラインナップ。悩ましい。
この天狗焼き、焼きたてで外カリ中モチの最高の生地に、ホクホクの黒豆の餡が入っている。
大変、美味であった。
天狗焼きをいただいた後、観光名所を全スルーしてひたすら登る。
登る。
しばらくすると、山頂へ到着。
高尾山は、世界で一番登山人口が多い山らしい。
この時期は特に登山者が増える。
太陽が富士山へ沈むダイヤモンド富士を見られるのが、冬至付近のいまだけだからだ。
私もダイヤモンド富士目当てに、登りに来た。
今日はちょっと曇ってるなと思っていたら、
「今日は天気が良くてよかったね〜」
と聞こえてきたので、今日はいい天気らしい。
なんとなく紅白歌合戦を見るよりも、この景色を見た方が今年一年を無事に終わらせられる気がしている。
今年もいろんなことがあったなぁと、ファインダー越しに富士山を見ながら思った。
引越しをしたり、転職したり、色んな人との出逢いがあり、別れもあり、いままでで1番未来のことを考えた年でもあった。
来年もいい年になりますように。