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自分が心地良い空間をつくることが、他人の居心地のよさにもつながるカフェ運営

武蔵小山で小さな喫茶食堂「kenohi」をひとりで切り盛りする田中さん。IT業界からカフェへの転身にはどんな思いがあるのでしょうか。
オープンまでの経緯や開業時の奔走、不安の捉え方や居心地のいいお店の秘訣などについてうかがいました。

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動かす金額の大きさ、社会的な影響力よりも、目の前の喜ぶ顔に価値を感じる

ーーカフェをオープンするまでの経緯を教えてください。

小学生の頃から、料理やお菓子作りは好きでした。祖母の家で一緒におにぎりをつくったり、家でお寿司屋さんの真似ごとをした記憶もあります。

高校生になると夜な夜なお菓子をつくって、クラスや部活の友達に配っていました。学生の頃は運動や勉強で周りと比べることも多い中、お菓子作りで人に褒められたり喜んでもらえるのはうれしかったですね。

ーーでは学生時代からカフェ開業を目標にしていたのですか?

いえ、新卒でITの会社に就職しています。そこでの昇進がひとつのきっかけです。

やりがいや楽しさを考えずに、がむしゃらに仕事人間のように働いた結果、評価してくださって昇進の機会をもらいました。そのときに、仕事とお金について考えました。
仕事の報酬は、より責任がある難しい仕事だと思っていて、その対価としてお給料が増えるものだと思っています。まず、僕はより責任ある仕事に対して喜びを感じられませんでした。重い、怖いと思ってしまいました。

一方で、お金に関して考えてみても、幸せに変換できるのだろうかと疑問に感じました。
もともと物欲もないほうで、海外旅行に行きたい!とか車や家がほしい!といった強い思いもなく。働けば働くほど、自分で自分を苦しめる未来しか見えませんでした。かといって、「じゃあ、僕はこれくらいの量・質の仕事で大丈夫です」なんて、できない。そんな気持ちで働くなら、僕はこの会社にいる意味はないと思いました。

ーーそこからどのようにカフェ業につながっていくのでしょうか。

一週間ほどの休暇の機会を得て、小笠原諸島の父島に旅行しました。そこで出会ったのが「USK COFFEE(ユースケコーヒー)」というコーヒー屋。

居心地がよくて丸2日そこで過ごしました。ユースケさんに「丸2日もオープンからクローズまでいたやつははじめてだ」なんて言われて(笑)、個人的にいろんな話を聞きました。

ユースケさんが愛知で焙煎士をしていたこと、豆から作りたいと勢いで父島にきたこと、そして今に至って、東京のコーヒーフェスに参加するまでになったこと。話を聞いているうちに、勢いではじめてもなんとかなるんだな、と背中を押されました。

ーー旅行での出会いが転機になったのですね。

そうですね。それまでもカフェ開業は意識していて、貯金目標として200万円と設定し資金を貯めてはいました。でもまだ貯まっていないことをいいわけに先延ばしていましたね。
なぜ今なんだろう、なぜカフェなんだろうと、答えのない問いをこねくりまわして考えていたんです。

ーーいまではその問いの答えは見つかったのですか?

カフェでは自分を偽らずに好きにやっています。自分に無理をしていません。それでも好んで来てくれる人がいて、目の前で喜んでいる顔が見える。

前職はデジタル広告関係の仕事をしていて。何百万インプレッションや数万クリックと大きな規模の仕事をしていましたが、だれがどんな気持ちでその広告をクリックしたのか、顔も心もわからない。また、仕事上の損得を考えて、人と仲良くしようとしたこともありました。

それが今のカフェでは一人ひとりの顔がみえ、ほとんどの人とは人間関係が築けています。損得のために付き合うのではなく、対等な関係です。それらを考えても、カフェでよかったと思っています。

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消えない不安と共存しながら、よりよい居心地の空間づくりを目指す

ーー実際の開業準備についても教えてください。最初は不安でしたか?

めちゃめちゃ不安でした。ワクワクと不安で行くと、断然不安が大きかった。一番はお金をやりくりできるかですね。物件の頭金や内装、コーヒーミルや食器などで、自分のクレジットカードから数百万円支払ったときは特に不安でした。信用金庫や親からお金を借りましたが、本当に返せるだろうかと。

ーー不安にはどう対処していきましたか?

「不安を隣においてながめられるようになる」を目標にしていました。
自分の性格的に、何事にも不安を感じてしまいます。自分の特性を受け入れる形でしっくりくる表現が、この目標でした。

悪い面ばかりではなく、きちんと準備を進めたり、最悪のパターンを考えるきっかけとして不安は必要です。不安は消せないけど、不安が生まれてきたあとの処理は訓練でどうにでもなります。そう考えると、今は不安にとらわれるようなことはなくなりました。

ーー今は不安とワクワクはどれくらいの割合ですか?

割合は難しいですが、お店を開けている時間帯はネガティブにならずにいられますね。どんな人が来てくれるかな? どんな話が聞けるかな? と楽しみです。
一方、一人で数字を見ていると、不安になることもあります。売上に波があることは分かってはいるんですけど、「来月も続くとマズいなー」と思ったり。

ーー月次の振り返りをnoteで公開されていますね。どんな意図で公開しているのでしょうか。

神保町にある未来食堂さんを参考にしました。元エンジニアだった方がやっている食堂で、事業計画書や月次決算などを公開されています。エンジニアのオープンソース文化を、飲食業界でも自然と実現されています。

僕の場合は、毎月情報をだすと宣言しておき、怠惰な自分を制するためでもあります。儲けることを最優先にお店をやっているわけではないので、売上目標は設定していませんが、継続的に経営していくために最低限の指標は確認しておきたいです。

自分のためでもありますが、それが人のためにもなるなら喜んでシェアしたい。note上で交流している人たちが面白がって見てくれたり、開業の参考になったりしたら、ラッキーですね。

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ーーnote以外にも、カフェでのイベントなどを通じて人のあたたかみを大切にされている印象があります。アイデアはどこから生まれるのでしょうか。

コンセプトである「日常を整えられる空間と食事を。」から考えることが多いです。映画鑑賞会や読書会は、どうしたらkenohiでより居心地よく、日常を過ごしてもらえることができるのかを考えて生まれました。

既に気に入ってきてくださってる方に、どうしたらもっと喜んでもらえるのか考えるのはもちろん、気に入ってもらえるはずだけれど、まだkenohiを知らない方が知ってくださるきっかけになりそう、といったことも考えます。
ゆるやかに、新しい切り口でkenohiを知ってもらう手段としてイベントを開催しています。

ーー思いついたらすぐ実行されるのでしょうか。

基本的になんでもやってみないとわからないし、微妙だったらやめればいい。身動きのとりやすさが個人事業主の強みだと思っています。
kenohiがやっていることで、大きな会社に真似できないことはなにもありません。でも、ひとりでやる意味を考えたときに、大手が真似しにくいことはできる。

ーー「相手のために」を重要視されているのですか?

「相手のために」が先に来ると、ためにならなかったときに両者ともツラいじゃないですか。「やってくれたけど嬉しくない...」「やってあげたのに逆効果だった」とか。なので、常に先に「自分のために」があります。
でも、その結果として誰かのためになったときはとても嬉しいです。

ーーそうやってお互いに気負わない関係性をつくっていくのですね。

そういうつながりは価値がすぐ消えるものではありません。価値観が変わることはあっても、相手のことをもう好きじゃなくなった、というのはあまりないはず。

これからもふらふらした生き方をしていきそうですが、そういうときに助け合える人が20人くらいいたら、なんとかなるのではと思っています(笑)。

ーー田中さんにとってカフェとはなんでしょうか?

リセットしたり、整える場所ですね。kenohiのお客さんも、滞在する時間で何かが前向きに切り替わってくれるとうれしいです。

今はこのお店を運営しているだけで楽しい。お客さんが全然来なくても、本を読んだり、noteを書いたりして楽しく過ごしています。自分も好きにしているから、お客さんにも自由に過ごしてもらいたい。押し付けがましくならない、気を遣いすぎない関係性が、お互いにとって心地が良いと思っています。

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過去の苦い経験から、毎日1分サッと処理。会計ソフトは自動化しないと意味がない。

ーー経理業務についてもうかがいます。開業当初から会計freeeを使っているのでしょうか。

お店を開いた2019年5月に登録しました。開業当初はバタバタで手をつけられず、実際の入力は開店2カ月後でした。800件くらいの項目をエクセルに手入力して、それをインポートしたのですが、大変でした……。口座連携の大事さを知りました。

ーーどのくらいの頻度で使っていますか?

基本的にfreeeと連携しているクレジットカードで支払うようにしていて、freeeに上がってきた明細はすぐに処理するようにしています。キャッシュレス決済の使えない八百屋さん等で現金を使った場合は、帰り道にスマートフォンアプリでレシート撮影し、すぐ登録。溜めに溜めて一度に入力したあの経験を、もう二度としたくないので……(笑)。
会計ソフトを使うからには、自動化しないと意味がないと考えていたので、定期的にある支払いや売上はルールを作成して自動化し、入力の手間を省いています。

ーーレジとの連携はおこなっていますか?

Airレジと連携しており、自動で上がってきた前日の売上を、翌朝アプリでぽちぽち処理しています。1分くらいで終わりますね。アプリの方が動作がサクサクしていて便利ですが、PCも毎日​ついつい​開いてチェックしちゃいますね

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ーー初めての確定申告が、前回の2019年度ですよね。スムーズに申告できましたか?

確定申告の受付開始日から1週間以内に電子申告したと思います。普段から漏れなく仕訳していたので、確定申告書類作成のための作業時間は2時間もかからなかったと思います。
年金や保険など確認が必要な書類があるので、事前に会計freee内で確認しておくと楽ちん。あとは会計freeeの手順に沿えば終了です。

ーー経理業務にどんなイメージをもっていますか?

会計freeeのおかげでネガティブなイメージはないです。開業する前は面倒なイメージがありましたが、今はルーティーン化できているので、プラスもなくマイナスもなく、ただやること、毎日ついついやっちゃうものになりました。
何も勉強してない状態で始められて、複式簿記の知識がなくても確定申告まで完結できたので、苦手意識はありません。

ーー同じ飲食業の方に会計freee利用時のアドバイスはありますか?

定期的な取引にルールを設定して、自動化を徹底することですね。そのためにも、クレジットカードやインターネットバンキングとの口座連携は必須です。できればプライベート用と事業用分けた方がさらに楽になります。
最初は手間だと思うかもしれませんが、こういう使い方をしないと会計freeeを使う意味が薄いと思います。

ーー経理業務が効率化できて、時間短縮以外によかったことはありますか?

もし経理業務に時間も心もとらわれてせかせかしていると、忙しそうな感じ、疲れている感じはお客さんに伝わってしまうと思っています。効率化できているからこそ、心の余裕が生まれ、kenohiが大切にしている居心地の良さを作り出せていると思います。

ひとつに縛られず、自由に選択していける未来を描きたい

ーー最後に、今後についてもおうかがいします。noteの記事で「5年で一区切りを考えている」と書いてあるのを拝見したのですが、どういう意図があるのでしょうか。

世の中もどんどん変わるし、自分の興味だってどんどん変わります。つまり先のことはわからないので、一生続けていく覚悟を持つことは難しいと思っています。
そのうえで、何年でもいいけれど区切りを置いたほうがいいと思いました。

5年あれば借金も返せるだろうし、その間に新しいビジネスの話や、他にやりたいと思うこともでてくる。お店と同時並行でやっていくうちに、どこの方向にいきたいのか新しく見えてくると思っています。いろんなことを同時にやったほうが、今ある楽しさや大事さが身に染みるかもしれない。生活の全部がkenohiになったら嫌になったり、飽きちゃうかもしれません。

1年4カ月、なんとかやってこれています。今後もしだめになっても「世の中そんなに甘くないんだな」と、今度は「仕事はそういうもの」と割り切ってサラリーマンに戻ってもいい。そのくらい、なにか一つに縛られることなく、選択していけたらいいと思っています。

ーー本日はありがとうございました。

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▶︎ 喫茶食堂 kenohi情報


▶︎ 会計の知識がなくても 確定申告ができる「会計freee」


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freee株式会社でアプリのマーケティングを担当しているnozomiです。 三度の飯より一杯のうどんが好き。

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