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【脚本】『SWORD OF SPIRITS』(壱)

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さて、本日から『SWORD OF SPIRITS』開始です。
2012年、STAR☆JACKS act#005の本公演です。
確か、本公演に書き下ろしたのはこの作品が一番最初だったはず。
当時から公言しておりましたが、STAR☆JACKS版の『三銃士』を書いた作品です。

(関係ないけど、私の中で『三銃士』というとやはりこれが思い出されます)

この脚本を思い出すのは

難産だった!!

もうその一点に尽きます。(いつも難産なんですけど)
あまりに書けず、枕に顔を押しつけて大声を出すという発狂寸前の状態だった苦い思い出・・・(笑)
タイトルの『SWORD OF SPIRITS』は、頭文字を取るとS.O.Sになります。
タイトルでまで助けを求めてますね(^^;;

そんな作品なので、公演後は読み返すことはしておりませんでしたが、今回改めて読んでみて、次の『じんない』の萌芽が見え隠れしたりしてて、意外と面白いです。

それでは、はじめましょう。

登場人物
跡部謙二郎:
「御供番剣士衆」になることを夢みて常陸牛久辺藩にやってきた青年。
窪田信吾:「御供番剣士衆」隊長。最強三人衆の一人。二刀流の遣い手。「阿修羅」の異名を取った。
乾八郎:「御供番剣士衆」最強三人衆の一人。「金剛」の異名を取った。木をも斬り倒すと言われた豪剣の男。趣味は変装。
片岡源五右衛門:「御供番剣士衆」最強三人衆の一人。居合斬りの名手。「雷神」の異名を取った。中老職である義父の片岡助左衛門の跡を継ぐも、実質的な権力は無く、鬱屈とした日々を送る。

藤吉:御供番剣士衆の下男。
片岡助左衛門:正親の守役。「爺」。牛久辺藩の中老職を代々勤める家系。源五右衛門の義父。
片岡佐和:源五右衛門の妻。助左衛門の一人娘。

稲葉正親(まさちか):
常陸牛久辺藩主・稲葉忠親の長男。民のことを考え善政を行おうとする。【二役】
稲葉正英(まさひで):常陸牛久辺藩主・稲葉忠親の次男。正親の双子の弟。双生児は正と邪の化身と信じられ、生まれてすぐ秘密裡に里子に出された。里子に家は盗賊に襲われ、盗賊の一味となる。盗賊の頭領に登り詰める。己の出自を知り、兄を憎悪する。【二役】

伊予:
正親の妻。身籠っている。
小夏:伊予の腰元。

妙蓮院(みょうれんいん):
正親の父・稲葉忠親の側室。正親を亡き者にし、権勢を握ろうとする。
菱屋嘉兵衛:妙蓮院と組み、密貿易を行う商人。一代で莫大な財を築く。

多恵:
元は武家の妻。嵐で遭難し、ロシアの商船に救われた。そのままモスクワへと渡り、エカテリーナ2世に拝謁。ロシアの勅使として日本にやってくる。
黒澤鬼十郎(きじゅうろう):元・御供番剣士衆隊士。妙蓮院の腹心。信吾に恨みをもつ。隻眼。
アゲハ:元・女盗賊。今は黒澤の部下に。

仙右衛門:
飯盛旅籠「またや」の主。裏では御供番剣士衆の援護をしている。
雛菊(ひなぎく):またやの女郎。
音羽(おとわ):またやの女郎。
朝霧(あさぎり):またやの女郎。
三郎:またやの使用人。
小吉:またやの使用人。

千影(ちかげ):
踊り巫女。
美影(みかげ):踊り巫女。

鉄仮面:
幽閉された稲葉正親。


プロローグ1

時は遡ること半年前。安永元年(1772)冬。
常陸(ひたち)牛久(うしく)辺藩(べはん)御供番(おともばん)剣士(けんし)衆(しゅう)道場。
木剣で撃ち合う剣士たち。稽古中。声が轟く。
窪田信吾は剣士たちに厳しい稽古を付けている。
片岡源五右衛門は正座し瞑目。
乾八郎はどかっと座り、剣士たちの稽古に口出ししている。手には櫂のような木剣。

剣士  「参った(と言って下がる)」
信吾  「次っ!」
剣士1 「はいっ!」

と、剣士1、挑んでいくも

信吾  「踏み込みが甘い!(と剣士1を打ちつける)」
剣士1 「う・・・(と倒れ込む)」
信吾  「次っ!」
剣士2 「お願いします!」

次々と厳しい稽古を付けてゆく。

剣士3・4「たぁーっ!」

と気合を発し源五右衛門に打ちかかろうとするも、源五右衛門の電光石火の抜き打ちでやられる。

剣士3 「う・・・(蹲る)」
剣士4 「ま、参りました・・・」

源五右衛門、納刀。

八郎  「(剣士3に)だーかーらー、腰が入ってねえからダメなんだってば。いいか、こうしてよぉ・・・ふん!」

と、重たい木剣を力強く振る。
剣士3慌てて受け止めようとするも受け止めきれず吹っ飛ぶ。

八郎  「一の太刀。これで倒せなかったら死ぬという気構えで打てよ」
剣士3 「は、はい・・・」

などと言いながらそれぞれに稽古を付けている。
一段高くなった神座に入ってくる稲葉正親と正室・伊予。

信吾  「(気づいて)やめ!」

剣士たち、稽古を止め集まる。片膝を付いて控える。

正親  「稽古中、邪魔をしてすまんな。皆に申したきことがある」
剣士衆 「はっ」
正親  「いよいよ明日、余は牛久辺藩藩主の家督(かとく)を相続致す。だが、父上から余が家督を継いだとて、そう簡単にものは運ばぬ。邪魔だてする輩も多かろう。牛久辺の民の為、これからもどうかお主ら御供番剣士衆の力を貸してほしい」
八郎  「わざわざ俺たちにそんなことを仰る為に・・・(と感動)若!若に拾われて生きる場所を見つけた俺たちです。存分にお使い下され」
正親  「うむ。心強く思うぞ。余とお主らは、立場は違えど同志じゃ」
源五右衛門「勿体なきお言葉・・・」
正親  「それとのぅ、もうひとつめでたき報せじゃ。わが妻・伊予が身籠った」
八郎  「なんと!」

色めき立つ剣士衆。

源五右衛門「奥方様、真(まこと)にございますか」
伊予  「はい」
八郎  「めでたいのう、めでたいこと続きじゃ」
信吾  「若、伊予様、おめでとうございます。我ら御供番剣士衆一同、心よりお祝い申し上げまする」
正親  「うむ。おまえ達には一番に伝え、共に喜びを分かち合いたかったのだ」
八郎  「若・・・(半べそ)」
信吾  「本日はこれまで!明日の準備に抜かりがないよう、各々持ち場の確認をせよ」
皆   「はっ!」

剣士たち、それぞれに道場から去る。

正親  「窪田、乾、片岡、遠駆けに参るぞ」
三人  「はっ」
正親  「伊予、先に城に戻っておれ」
伊予  「はい。お気をつけて」

正親出て行く。それに付き従う三人。

暗転。

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