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困難校での美術教育実践③〜提出物編〜

 教育困難校。生徒たちは勉強について行けないストレスからの逃避行動で荒れたり無気力になったりしています。
中には発達障害や学習障害そのグレーゾーンで認知機能やワーキングメモリの少なさに課題を抱える生徒も多く、サポートを必要としています。

 他教科よりは多少マシかもと期待して美術を選択してくれた生徒たちに楽しくて「できる」「分かる」授業をしたい。
つまらない躓きで美術に苦手意識を持ってしまっては勿体無い!

今回は、そういった問題の対策となる提出物の工夫を紹介します。

初回の記事↓


ノート→プリント

 ノートを撤廃しました。まあ取らない。取れない。
それ以前の問題なのだ。ノートは持ってこないし筆記用具すら出さない。

  まずプリントを配って「それ今日提出やから手元に来たらまず名前書いてね。評価にも入るよ。」と言われると「まあこれくらいなら…」ととりあえず筆箱から筆記用具を出して名前を書く。これで書く体制が整う。

  真っ白なノートは何が難しいと言って、先が見えないのが辛い。
終わりの見えない作業は苦痛だ。
これも、穴埋めや指示と空欄の書いてあるプリントなら見通しがつく。

文字を書くのは時間がかかる。
早く終わった生徒が時間を持て余して集中が切れたり、書くのが遅い生徒が取り残されていったり時間のかかることはどうしても集中力が切れる。
また、どうしても教員の書く速さが最大スピードになるので、私のような遅筆教員だと本当にダレる。

授業を聞きながらノートを取ることはマルチタスクだ。
ノートを取ることが作業になってしまって、どこが大切なことかわからない。
私自身が自閉傾向があって、「いかに綺麗に整理されたノートを取るか」に意識が引っ張られて、前を見ていなかったり話を聞いていなかったりしてしまう生徒だった。
書くのが苦手だったり時間のかかる生徒にも言えることで、ノートでいっぱいいっぱいになってしまう。
見て欲しいのはモニターの写真や前で説明している道具や作品だったりするのに、ノートに意識と時間を取られてしまうと指示も通りにくくなる。

スライドでの説明を聞きながらキーワードのみを書き込む方式。
ワークシート合体型で手を動かしながら進める。

 うまく管理して要点を説明して、綺麗に黒板を書いて生徒にノートをとせている先生には頭の下がる思いですよ本当に。教員にとっても超マルチタスク。私には無理だった。

 とにかくつまらない躓きや授業のダレで美術を嫌な時間にしたくない。
本文は実技。鑑賞と表現だ。

スケッチブック→ワークシート

 スケッチブックも撤廃しました。スケッチブック、大変なんですよ。
何が大変って、まず重い。
回収して評価をつけるのが大変なのはもちろん、生徒が描くときに手を動かしやすい方向に作品を回せなくて絵が歪む。

 他にも、無くしたとか、他のクラスメイトに落書きされただとか、紙が無くなっただとか、途中で失敗して枠を書くところからやり直しだとかなんだとか。
私物は無くしものとトラブルの種。そもそも高いのに使い切らなくて無駄。

 作品がバラバラになって困るって?
作品もプリントと同じファイルに綴じてしまおう。
美術室の机で回しながら作業ができるサイズの限界は、せいぜい八切り。
どうせ八切りならプリント類に合わせてB4にしよう。

枠や名前欄も先に刷っておけば、枠の寸法が取れなくてつまづく事も無いし、名前が無くて慌てる事も防げる。

アクリルガッシュの練習用枠。B4ケント紙に印刷して配布。
アイデアスケッチもプリントに本番用紙と同じ比率の枠があると考えやすい。
枠を並べて取っておけば複数アイデアが出しやすい。

全部ファイルに綴じる!

 プリントも作品も提出後評価をつけたらパンチで穴を開けて返す
返した時に全部ファイルに綴じさせる。
ファイルは、ノートでワークでスケッチブックで作品集。全て綴じ込む。
ついでに教科書も挟んで、美術室に置き勉!
ワーキングメモリ不足の生徒達にとって、物は少なければ少ない程良い。

 このスタイルにしておくと、学期末に提出物の取り立てにでドタバタすることがかなり減る。
プリントが終わる毎に提出してチェックすれば良いので「○○のプリント出てなかったよ。持ってる?」と聞けば大抵出てくるし、無ければ新しい物を渡して提出を指示できる。
切羽詰まっている時は勝手にファイル棚を漁らせてもらう。

 自治体の非常勤講師の制約上、授業のない日には交通費すら出なかったので成績評価は授業のある時にうまく分散させてマメにつけておかないといけなかった。


 今回は提出物の工夫についての実践をまとめました。
次回以降も、鑑賞授業編、表現授業編といった具合で全5回ほどで実践の記録と成果を記事にまとめていく予定です。

あくまで一例とはなりますが何かしらのお役に立てる事を願っています。

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