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プチ家出という名の、夜の散歩に出た

今日は、「プチ家出」という名の夜の散歩に出た。

プチ家出は我が家にとって頻繁に行われる行事だが、楽しいものでもなんでもない。

ここ数ヶ月はほとんどなくホッとしていたものの、今日また起きてしまった。

原因は99%、高次脳機能障害を持つ父にある。
障害により更に自己中心的となった父は、周囲の人のことを全く考えず意見を押し付け、突き通そうとしてくる。

もはや論理も何もあったものではなく、会話も成り立たず、めちゃくちゃだ。

「そうじゃねぇんだよ!」
お決まりの嫌なセリフが飛び出すと、私達は黙ってそっと外に行く支度をする。

向こうは動けないのだから、嫌になったら、こちらが出ていくしかないのだ。

途中のコンビニで冷たいお茶を買い、夜道をあてもなくふらふらと歩く。

出てくるのは愚痴ばかりで、楽しくもなんともない。飲み屋からちらりと見える楽しげに盃を交わす人の様子が、この時ばかりはとても羨ましく思えた。

昼間と比べると気温が下がり、幾分と歩きやすい夜道だが、反対に足取りは重くなっていく。

帰る場所は家しかない。けれども、今は1番行きたくない場所でもある。

なんとなく歩き疲れた足は家の方に向かい、とうとう家の前につき、カギを取り出す頃には、さらに気分が落ち込む。

気分を反映させたかのように真っ暗な部屋に足を踏み入れれば、より気持ちが沈むような感じがした。

わかってる。この20分くらいの散歩で済む家出はとても軽い方で、ひどい時は、タリーズに蛍の光が流れるまでいたこともある。

父を止められる家族は私達しかいないし、支えていける人も私達しかいない。

けれども、いきなり突きつけられたこの不条理に、どうしようもなく心が辛くなる時がある。

障害があるのだから、仕方ないと思うことは簡単だ。だけど、その影で周囲の人は涙を堪えているのかもしれない。

障害を持つ人とその家族になかなか日が当たらない現状の中、そんなことを強く思う。

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