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世界に挑む|ZENKIGENの価値創造の仕組み

『テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する』
当社のビジョンであり、創業よりここからブレずに事業を推進してきました。
前回の記事では、今年もビジョンの実現に向けてメンバーと力を結集して邁進する、ということを宣言しました。

では、「どのようにビジョンの実現に向かうのか」

ZENKIGENの価値創造の仕組みについては、社内メンバーと対話を重ね、ピッチやセミナーでは、度々発表をしてきました。
今回、価値創造における当社の強みと位置付ける【データ数/解析、AI開発・UI/UX、Lab.】の組織を一手に統括するメンバーの小荷田 成尭と対談しましたので、
noteでは初めて「ZENKIGENの価値創造の仕組み」をお届けしたいと思います。


<Profile>
小荷田 成尭  Nariaki Konita
所属:インキュベーション本部部長 兼 データアーツ室室長
入社:2019年10月
1988年栃木県生まれ。学習院大学物理学科に進学。その後、慶應義塾大学大学院SDM研究科に進学し、システムズエンジニアリングとデザインを学ぶ。2014年ソフトバンク株式会社に新卒入社。ITインフラのSEとしてBI開発を行う。その後、アクセンチュア株式会社に転職し、ジョイントベンチャーである株式会社ARISE analyticsにデータサイエンティストとして参画。2019年10月に株式会社ZENKIGENへ入社。現在はデータサイエンティストとして 新規事業開発 、マーケティングを兼務し、ブランディングやAIプロダクトの設計など幅広く携わる。

■精度が上がる個々のAI - 大きな目的を考えることこそが    "価値"につながる!


(野澤)
当社は、面接や1on1など世の中に出回ることのないデータを数百万件保有し、
このデータ基盤を強みのひとつとしています。
独自開発したAIの進化、プロダクト開発を支えてきましたが、データサイエンティストの視点でこの強みをどう見てますか?

(小荷田)
面接や1on1のような特異なデータを持っているだけでは強みとは言えなくなってきた、と感じています。コンピュータービジョンに使われているAIは、すごい速度で進化し、一つひとつの精度が上がっています。
例えば、面接で重要な「笑顔度」や「発話比率」の判定は、面接などの特異な動画データがなくとも一定の精度でアウトプットができるようになっているのです。

(野澤)
ですよね。
とは言え、ZENKIGENでは、harutaka EF(ハルタカ エントリーファインダー)harutaka IA(ハルタカ インタビューアセスメント)、面接力分析BIと順にプロダクトが生まれてきました。例えデータの価値が相対的に下がっても、改善・発展ループのサイクルが生まれて、プロダクトの価値が増幅してくるのではないですか?

(小荷田)
それはあると思います。
先ほど挙げた面接における細かなKPIである「笑顔度」や「発話比率」を超えて、
例えば、「良い面接とは?」というような、より大きな目的をAIの用途とすることで価値が上がっていくのだと思います。

■『AIは手段』- 発展の過程で貯まる知見を広めたい

(野澤)
その上でなんだけど、ZENKIGENは「動画データが溜まり、自社開発したAIがアップデートされ、解析精度が上がり、UI ・UXを磨いて届ける」そして、専門的研究組織であるLab.が一貫して社内にあることが特徴的であり強みだと思ってます。
この点、統括する小荷田さんは何が、どのように強みとなっている、と感じていますか?

(小荷田)
ZENKIGENの目指す「採用DX」に対して大きな強みになっていると思います。
採用プロセスには細かなKPIがあり、KPIの計測・改善が高精度にできるほど改善効果が高いですよね。前述の通り1つひとつのAIは精度が上がり、ある意味でKPI改善のひとつの手段になっている。つまり、AIがDXの一部になってきていて、組み合わせを考え、本質的に何をするのかが問われています。
DXのためには、一気通貫して内製できている当社の体制が大きな強みになると言えるのではないでしょうか。

(野澤)
確かにそうですね。
「AIがDXの手段になっている」というのは同感で、顧客の事例でも証明されていますよね。

(小荷田)
そうですね、ZENKIGENはここに至る過程も恵まれていたと思います。
ZENKIGENの歴史をテクノロジー視点で振り返るといくつかの発展フェーズに分けられると思っています。

1.プロダクトをインフラ化してデータを溜める
2017-19年にかけて「Web面接」は社会に普及していませんでした。
それ故にプレイヤーも少なく、先行者メリットがあったように思います。2020年からはコロナ禍になり、急激に一般化しました。急激に一般化する前にWeb面接導入のノウハウを得られたことは、インフラ化(データ保有)に大きな影響があったと思います。

2.UI・UXが良くないと、多くの人には使われない
広く一般化したが故に、「導入しても使われない」状況が明らかになりました。
プロダクト発売当初はAIを搭載しておらず、UI/UXの専門家も社内にいませんでした。
広く一般化し、多くの顧客が導入してくれたからこそ、「より深く、分かりやすく」しなければ使ってもらえない、という重要な壁に当たることができました。

3.データは取れるが解釈が難しい(=改善できない)
AIを搭載し、UI/UXを磨いた結果また新たな壁に当たります。
実際にプロダクトを利用いただいている人事担当者にヒアリングに行くと「以前よりもデータは取れるし、AIの解析結果も見られて便利だが、解析結果をどう活かせばいいのかわからない」という声を多くいただきました。「良い面接とは?」「最適なコミュニケーションとは?」という大きな問いでした。こうした声を受けて、どのようなデータをどのように解析すると本当に使える「データ」となるのか、ということに向き合うこととなりました。

4.アカデミックとの連携
大きな問いに対して、アカデミカルな側面ではどう証明されているのか、答えはあるのか、ということで大学や外部の専門家との関係強化に動きます。
そこで分かったことは、どうやらアカデミカルな側面でも「人のコミュニケーション」や「働く」ということに対しては発展途上であること。ZENKIGENには実データがあるので両者の強みを活かせそう、と共同研究が加速します。
加えて、このような動きに賛同してくれる顧客も現れ、アカデミックを発展させながら、技術の社会実装へチャレンジできる状況となったのです。

こうしたステップを踏んだことで結果として、実践経験による知見が増幅しました。また、ZENKIGENなりの新規事業を生み出すステップ、また失敗パターンも見えてきたのです。今思うことは、「良いAIがあってもインフラ(データ)を持たないと難しい」というごく当たり前のことなのですが、とても恵まれた進化を遂げてこられたと思います。

(野澤)
本当にそう!SaaSプロダクトとしてまずはインフラ化することを創業から考えていました。加えてグローバルも見据えた時に「どのような思想を持ってAIを開発し、社会実装するか」ということが重要だということは何度も発信しています。
実際にプロダクトの導入(採用DX)には、オペレーションの変更などもあり、顧客の覚悟も必要ですよね。そういう意味でも私たちがいかに信念を持って届けられるか、がより重要になりますね。

(小荷田)
その通りで採用DXはオペレーション変革なので顧客の覚悟も必要なんです。
「人事」は一般的に人に向き合う仕事が多く、データだけで何かを言い切ることは好ましくないと思っています。データはあくまでも示唆として、判断は人事(人)にしてもらう、というのがAIの使い方として大切にしたい価値観です。

■『人とAIの調和』- ZENKIGENの大切にするAI開発の思想と世界の流れ

(野澤)
こうした思想も強みの一つではないかな?

(小荷田)
そう思います。
各国のAIに対する捉え方が全然異なることを実感します。
個人の見解の部分もありますが、例えばアメリカは「ターミネーター」に代表されるようにAIを支配的、超越的なものとして捉えているように思います。一方でヨーロッパは、機械(道具)として、主従関係は上が人間、下がAIというような感覚。
日本では、「アトム」や「ドラえもん」のように、立場も同じくらい、友達になれるような感覚ですよね。八百万(やおよろず)の神のような感覚が影響しているのかな、なんて思っていますし、こうした思想は大事にしたいです。
道具的思想は、主従関係がしっかりしているので分かりやすいのですが、「その道具を持っている人と持っていない人で格差が広がる」と感じています。人とAIが寄り添いながら「アトム」や「ドラえもん」のように、社会に広まることが良いのではないかと思っています。

(野澤)
本当に日本人ならではの感覚ですよね。
アニメや映画でも「人とAIがバトル(戦争)ではなく、友達になる」
ZENKIGENのAI開発コンセプトは「人とAIの調和」なので、まさにこの感覚をもって社会実装していきたいということなんですよね。

■マルチモーダルAIを採用する理由 - 『説明可能なAI』とは


(小荷田)
そうですよね。
思想に加えて、そもそもAIの開発において受託企業は多いのですが、受託企業はモノがデリバリーされたら関係が終わってしまうんですよね。ZENKIGENは、SaaS・リカーリングモデルなので、思想もそうですし、ある顧客で知見が貯まれば、安価で多くの企業に提供できるんですよね。

(野澤)
一方で、「社会的にAIの精度が上がっている」ということだけど、技術的な強みはどう考えていますか?
例えば、表面的には既存のAIモジュールを組み合わせてDXプロダクトを作ることもできますよね。

(小荷田)
その通りです。
その点では、「チューニング」「価格」「説明可否」という観点です。
ZENKIGENでは、基本的にはデータのクレンジング、アノテーションを自社で行っています。これにより、目的変数に対して、AIがどの程度、動画(画像)を学習すれば、結果精度がどうなるのか、が分かります。
故に精度を上げる「チューニング」もスピーディに繊細にできますし、解析単価も一気に下げることも可能です。
また、「説明可能なAI」にこだわって開発しているんです。
ディープラーニングに加え、古典的な機械学習手法も並行して実装しています。
例えば、採用活動において「一次面接通過率」を目的変数においた場合、ディープラーニングだけでは、動画(画像)など一斉に処理するため、精度は高いですが、「その精度が出た理由がわからない」のです。古典的な機械学習手法を同時に実装することで一つひとつの制度に対する影響項目が分かるのです。一定の手間は発生しますが、理由を解明し、「分かりやすく、なぜかを説明できる」ということが重要だと考えています。

(野澤)
人生においてとても重要な「採用・就活・働く」に向き合うためには必須ですね。
また、ZENKIGENのAIは「マルチモーダルAI」であることも稀有な存在であると思うのだけど、他社の動きも含めてどう捉えていますか?

(小荷田)
そうですね。当社のマルチモーダルの解釈は、画像・音声・テキストなど視覚や聴覚、感覚を組み合わせて解釈、解析する、ということです。
一般的に現在のHRTechは、内定辞退率予測・低減、ストレス耐性計測など細かな項目を改善するために使われる傾向が強く、シングルモーダルでも対応ができます。
私たちは、各項目の改善は元より、「コミュニケーション」や「働く」ということを解き明かし、より良くしたいと思っているのでマルチモーダルAIを実装しているという点では珍しいと思います。

(野澤)
その点では、SalesTech領域は進んでいないですか?

(小荷田)
そう思います。
音声の連続データなどの取り扱いが進んでいますので、解析難易度の高い動画(画像)解析も発展していくのだと思います。

(野澤)
ということは、今後SalesTech企業と技術的には競合となることも想定される?

(小荷田)
それは想定しておらず、HRTech領域ではもう少し、「人間らしさ」を取り扱う方向に進んでいくのではないかと思っています。「働くとは」や「メンタル」など人間のウェットな領域のイメージです。
ZENKIGENのコンセプトとしても「個別のKPIを改善する」に加えて、「上司と部下のコミュニケーションをより良くし、働くことの負を解消する」という方向性が、社会に役に立つと思っていますし、AIの活用方法として有用ではないかと考えています。
「well-being」が話題となっていますが、まさに「良い会社」でないと働く人が確保できない状況ですよね。目の前では、制度などで「働きやすさ」が改善されているように思いますが、先日目にした2023年の人事トレンドでも「バーンアウト」が挙がっていました。
今後は「働きがい」とか「成長」ですよね。

■社内にある研究機関「ZENKIGEN Lab.」 - 副次的効果も見えてきた


(野澤)
まさにそうですね。そう考えるとZENKIGEN Lab.も特徴的ですよね。

(小荷田)
特徴的だと思います。現在、ZNEKIGEN Lab.には、「社会学」「産業心理学」「感情工学」の専門家が所属しています。
ZENKIGENのビジョンに向かうためには、事業の社会的意義がとても重要です。
そのためには、大局観で見ないと出ない視点が必要だと思います。
大局観を持つことで、短期的には売れるプロダクトは作れるかもしれないが
中長期的にはおかしい、というような社内のストッパー的な役割も果たすことができます。

例えば、新卒・中途採用システムも数十年前に定着しましたが、
既に老朽化し、本当は違和感を感じる、という方も多いのではないでしょうか。
こうした違和感に対してもアカデミックな視点からは多くの示唆が得られます。
産業心理学で言えば、働くに関するコミュニケーションの良し悪しや会社の文化計測の指標のプラクティスを持っていたり、感情工学では、働くにおけるロジカルでない感情の部分の研究が多数存在しています。
こうした知見をプロダクトにできれば社会実装できるのです。

(野澤)
「組織の中に自己否定できる組織がある」という点でもいいですよね。
加えて、「正確な情報」を深めたり、共有されるというのもLab.が社内にあって良かったと思う部分ですね。

(小荷田)
そうなんです、新規事業の企画の際に「〇〇(技術や知見)を活用して〇〇を実現できないか?」のような議論が発生した際にも、怪しい分野は自分たちで研究し、論文発表したり、そこで得た知見・経験を共有できるんですよね。

■今後の展望


(野澤)そろそろまとめに入りたいと思います。
今日話してきた多様な組織を統括している立場の面白さはどんなところに感じていますか?

(小荷田)
最近、友人などに「AI触ったことある?」って聞くことが多いのですが、答えは、ほとんどが「No」です。しかし、社会的には「AIに仕事が奪われる」という話も広がっています。
なぜ、漠然とした不安だけが広がるんだろう、と考えるんですよね。

面白さという視点と少しズレるかもしれませんが社内に多くのプロがいることで「手触り感のあるAI」に挑戦できていることですかね。ZENKIGENは、「人とAIの調和」を掲げていますが、目に見えないAIではなく、「私も使いこなせたぞ!」という、体験までデザインして、共存の道を探っていきたいんです。
また、「人間のデータ」は、まだ十分に取れていないですよね。
リアルとオンライン、ハイブリッドの時代となり、カメラもセンサーも精度が上がっているので人の可能性が拓ける時代になっています。
データを活用し、リアルとオンラインのシームレスな世界観で人の可能性を最大化することにも挑戦していきたいですし、ZENKIGENの役割でもあると思っています。

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これからも社内外の多くの方と対話を重ね、発信していきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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