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映画スター、ヴァル・キルマーの光と影――『ヴァル・キルマー/映画に人生を捧げた男』

 12月22日公開の映画『ヴァル・キルマー/映画に人生を捧げた男』を鑑賞。
『ミッドサマー』(’19)で注目されたスタジオ、A24の日本初公開11作品をラインナップした特集上映『A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT』のプログラム中の1本。ヴァル・キルマーの半生を振り返るドキュメンタリーなのだが、これが滅法面白い。
 ヴァルは咽頭がんの治療と引き換えに、以前のように喋れなくなってしまったため、ドキュメンタリーの語りは息子が担当。とはいえ随所で当人も話しているのだが、喉の装置の穴を指で塞いで喋ると、確かに酷い声色だ。これについて「俺は病気でこんな声になったのに、各地のイベントで若い頃の写真を売っている。昔取った杵柄で金を稼いでるんだ。コンベンションに参加する他の俳優を愚弄する気はないけど、とても後ろ向きなことをしてると思って、時々気分が酷く落ち込むんだ。だけどこうしないとファンに会えない」と話す。しかしそんな彼の前に『バットマン フォーエヴァー』のポスターや、フィギュアを持参してサインを書いてもらっている”かつての少年”たちは、こう語りかけるのだ。「最高のバットマンでした」「お身体を大事に」。泣ける。

▲ 日本初公開となる11作品をラインナップした
『A24の知られざる映画たち』は、U-NEXT配給

この映画(原題は『VAL』)に関して、21年12月の自身のインスタで、こう言及している。

俺のドキュメンタリー映画”VAL”はアカデミー賞の最終選考に残らなかったけど、この場を借りて、今年受賞したドキュメンタリー作家仲間全員に祝福を送りたい

本作の見どころは、癌を克服した現在の彼が何を思い、どう生きているかの他に、若い頃から趣味で撮り続けたホームビデオの映像の数々である。
『トップガン』『ドアーズ』『バットマン フォーエヴァー』『D.N.A.ドクター・モローの島』等々、数多くの映画のオフショットや、現場で捉えた共演者の姿が次々と映し出される。ケリー・マクギリス、トニー・スコット、トム・クルーズは勿論のこと、ショーン・ペン、ケヴィン・ベーコン、ニコール・キッドマン、マーロン・ブランド……『ウィロー』の共演が縁で結婚したジョアンヌ・ウォーリーとの挙式の日のビデオ映像も。洋画ファン必見のドキュメントだ。

『A24の知られざる映画たち』は4週間限定のプログラムなので、お見逃しなきよう。11作のラインナップは公式サイト参照のこと。


『ヴァル・キルマー/映画に人生を捧げた男』
監督:ティン・プー、レオ・スコット
製作総指揮:ベン・コトナー
製作:ヴァル・キルマー、レオ・スコット、ティン・プー他
音楽:ガース・スティーヴンソン
ナレーション:ジャック・キルマー
2023年12月22日(金)日本公開
2021年 アメリカ 108分 カラー
配給:U-NEXT
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