いけばな展に行ってみた
2023年6月7日(木)から6月12日(月)まで、
丸井今井札幌本店 大通館9階で行われていた、
「とらわれのない美」という
いけばなの展示会イベントへ行ってきました。
正直、お伺いさせていただくかどうか、
直前まで悩みました。
というのも、この度、
ありがたいことにチケットをいただいたのですが、
私のこれまでの人生で、
「いけばな」というキーワードに
触れたことがありませんでした。
というか、
そもそも「花」にあまり馴染みがありません。
花をもらったことも、買ったことも、
数えるほどしか記憶にありません。
また、「いけばな」というワードには
何となくハイソなイメージを持っており、
自分の生活とは
かけ離れたもののような気がしていました。
そんな「いけばな」素人が
チケットをいただいたので、
「これってどんな人が見に来る催し物なの…?」
「素人が普段着で歩き回ってていいの?」
「知らない人に話しかけられたりしないかしら。」など、
不安な気持ちが7割くらいでした。
残りの3割は、
自分が知らない新しいものへの好奇心。
「見てみたい」という純粋な好奇心。
素敵なものをこの目で見たいという好奇心です。
内心ドキドキしながら
エレベーターで9階までたどり着くと、
そこには、
たくさんの素敵なお召し物を着たマダムたち。
「やはりここはハイソな世界なのか…」と
若干圧倒されながらも、
早速入場すると、
「いけばな鑑賞ガイド」という
初心者向けのパンフレットが置いてあり、
一気に入りやすくなりました。
そこには、作品鑑賞の仕方であったり、
基本的には写真を撮ってもよいということ、
池坊いけばなには3つのスタイルがあることなど、
いけばなを拝見する上での
基礎を知ることができました。
このように入口で、いけばなを鑑賞するハードルを
ぐっと下げてくださっていたので、
結果的に、とても楽しい
貴重な経験をさせていただきました。
やはり不安な気持ちを乗り越えて、
参加できてよかった!
今回参加させていただいて、
考えていたことをまとめます。
①伝統からの脱却というテーマ
先日参加させていただいた
コンテンポラリーダンスの講座でも感じましたが、
いけばなの世界でも、
「伝統からの脱却」というテーマが
流行っているんだなと感じました。
ところで、池坊いけばなには
主に3つのスタイルがあるそうです。
「立花」や「生花」はその中でも最も伝統的なものです。
これは室町時代から続くスタイルで、
いけばなを水際から垂直に立ち上がらせる
という特徴を持っています。
一方、「自由花」という分野は、
いけかたに約束事がない文字通り自由な分野で、
天井から吊り下げられていたり、
絵画のように壁に掛けられていたりなど、
様々な工夫が施されています。
しかし、立花や生花が伝統的だからと言って、
その表現方法が
お堅い伝統的なルールに縛られているかというと
そうではありません。
アップビートな音楽が流れている空間に
煌びやかなライトアップと共に
作品が置かれていたり、
器がなんとも表現し難い形に工夫されていたり、
一言で言うと、
めちゃくちゃ映えてました。
「伝統的」だからといって、
「古いもの」とは決して言えません。
「脱却する」と聞くと、
私は、
まっさらの地に新しいものが生まれるのではなく、
ありきたりで溢れた世界から、
一歩飛び出したところに新しいものを見出す、
という様子をイメージします。
伝統の中から新しさを追求するからこそ、
「何が新しいのか」を
多くの人と共有することができる。
新しさの背景に、ありきたりさであったり、
伝統、古さがあるからこそ、
新しさが際立つのかもしれません。
伝統に片足を入れつつ、
新しいものを作るためにもがき苦しんでいる様は、
どの世界でも、今の時代に
共通して起きている事象なのかもしれないと
思いました。
②空間をデザインするということ
「いけばな鑑賞ガイド」によると、
作品を鑑賞する際には、まず正面から見ます。
作品の手前には「席札」(せきさつ)という
ネームプレートのようなものが置かれているので、
それが置かれている位置が正面です。
特に「生花」という分野のいけばなは、
正面から見ると水際から延びる草木の部分が
1本に見えることが重要なんだそうです。
正面から見ることが正統的な見方であるならば、
正面ではない方向から見ることは、
何をもたらすのでしょうか。
「正面ではない方向」から同じ作品を見てみたら、
全く別の作品のようでした。
正面から見える形が2Dであるならば、
正面以外の方向から見える形は、3Dです。
2Dと3Dが入り乱れる様が
絵画とは違う、彫刻に近いものを感じました。
一方、これが彫刻と大きく異なるのは、
生きているものを扱っているという点です。
実際、今回の展示会も6日間開催だったのですが、
同じ作品が6日間ずっと置かれているのではなく、
その日によって、
展示されている作品は異なります。
いけばなをやっている方からすれば
当然なのかもしれませんが、
刻一刻と生花は姿形を変えます。
「お披露目の日に合わせて、
いけばなが最もよく見える形を造形する」
かつ、
「そのお披露目の場に適しているものを配置する」
というのは、
とても難しいことなのだろうと
容易に想像できます。
場所の空間と、時間的な空間をデザインするという
神秘的な世界だなと感じました。
まとめ
「いけばな」という、
自分がこれまでに経験したことのない世界に触れ、
「新しいものを作り出す」という行為について、
「空間をデザインする」という
人間の美に対する行為について、
考えました。
正直よく分からないことだらけでした。
何となく綺麗で、
何となくすごいのはわかるけれど、
その感情が引き起こされる実態はよく分からない。
だからこそ、人は道を極め、
意味や意図を理解しようとするのかもしれないなと
思いました。
これらの作品を作っている人たちは、
どんなことを考えているのか、
ぜひ今度話を聞いてみたいなと思いました。
素敵な学びの機会に感謝です。
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