日曜日は遠回りしていこう。

『こっち！』

と駆け出した息子くんは目的地とは逆方向に走っていく。むちゃくちゃ楽しそうだ。

＊

『じてんしゃのろーよー！』

久しぶりに晴れた日曜日。息子くんが誘ってくる。
今週ずっとあめ続きで、お散歩にいってない。望むところだ。

しかし。

小さい子とお散歩にいったことのあるひとならおわかりいただけるだろう、キッズのマインドは秋の空。お出掛けまでずっと『じてんしゃ！じてんしゃ！』コールだったのに、階段を降りたときにはもう『でんしゃみにいこー！』と走り出していた。ストライダーを抱えて、電車が見える線路沿いまで歩く。

最近好奇心の鬼と化した息子くんはお散歩中に手をつないでくれなくなった。でも今日はストライダーを抱えてる私をじっと見て、手をつないでくれた。泣ける。

＊

朝早くのお散歩だけど、お天気に誘われて散歩してる人がけっこういる。つい数ヶ月前まで、道行く人すべてに天使の笑顔を振りまいてた息子くんもいまは人見知りするようになった。

『おはよう〜』とおばあちゃんに言われても、じっと見てわたしの横に隠れる。

くすくす笑いながらおばあちゃんが歩いていったあと、小鳥が鳴くような声で『……おはよだね』とつぶやく。うん、いいよ。少しずつだよね。

＊

開店直前の花屋さんの前を通ると、ミニブーケがきれいだった。
そのままうちまで帰ってきたけど、お花が忘れられないみたい。しばらく

『お花屋さん開いたみたいだから、ママに買いにいこうか？』
『おおー！』

勢いよく駆け出した。お花屋さんとは逆方向に。

『こっち！』

『むし、たべてるねー』

言われるままついていった先には、アジサイがあった。まだ咲いてないかなー、と見回すとちょっとだけ咲き始めてた。

ちょうど数年前、アジサイが咲く頃に息子くんが生まれた。それからアジサイは我が家のフェイバリットフラワーだ。知ってか知らずか、息子くんはアジサイを見つけて満足そうな顔をしてる。

買い物も、通勤も何でもかんでも、とりあえず最短ルートを思い浮かべてしまう。なにかに焦る理由もないのに、散歩だって一番近い行き方を考えちゃう。

ほんとうは遠回りでも、最短ルートでもなんでもよくて。
行きたいようにいくのが、正解なんだよね。

すぐ真裏に行くのに30分以上かけて、息子くんのお花屋さんにも寄って、自慢げに買って帰ったミニブーケをママに渡す。
はにかみながら『いししっ！』と笑う息子くんの大冒険を、たぶんママは知らない。

＊

お風呂で今日は楽しかった？と聞いたら、
『にちようび、たのしかったからあしたもにちようびにするね！』と満面の笑みで言われた。

それにはパパも大賛成です。