KK

かんがえちゅう

KK

かんがえちゅう

最近の記事

『ハンチバック』読後感想

芥川賞を受賞した『ハンチバック』を読んだ。感想を書く。 店頭に並んだときは芥川賞候補作のときの帯がついていて、女性の芥川賞作家が推薦文をよせている。ひとりは「小説に込められた強大な熱量にねじ伏せられたかのようで、読後しばらく生きた心地がしなかった」と書いている。そういう感想もあるのかもしれない。とはいえ芥川賞はあくまで新人賞であり、これまでの芥川賞受賞作がそうであったように、本作は新人作家に相応の出来のいい小説という印象を超えるものではなかった、というのが私の正直な感想であ

    • 英国のクイズ番組を観て、てきとうに注釈する2

      前回紹介した英国の人気クイズ番組『ユニバーシティチャレンジ』が、およそ30年ぶりの新司会者アモル・ラジャンのもとで新シーズンをむかえた。インド生まれのジャーナリストで、クリケットの大ファンである40歳。早熟さが買われているという。 そこそこ面白かったので、今回もてきとうに注釈してみる。 当然だが、出題や回答はすべて英語でなされる。そして私はネイティブの英語話者ではない。したがって、私はどんなクイズが出題されたかを、ネットの辞書を駆使したりして推測し、かなり不完全かつ不十分

      • 英国のクイズ番組を観て、てきとうに注釈する

        クイズに長いことふれていると、自分が出題したくなるような事柄や、自分の身の回りで出題されている事柄が、どれもこれも同じくパターン化されたものに感じる。さながら金太郎飴のように。いわゆるマンネリ化というものだ。まれによくある。 そうした気分から逃れるために、たまに海外のクイズ番組を見たりするとなかなか楽しいのではないかと思うのである。国によって、出題されやすい知識や出題の仕方が違っているからだ。 その違いにふれ、クイズのありようについてより柔軟に思考できるようになれば、クイ

        • 『君のクイズ』ざっくり感想文

          ※ネタバレ注意 本書『君のクイズ』は、「クイズは人生を肯定するか?」という問いをめぐる、思想小説として読むことができると思います。 まず、私なりに小説のあらすじを要約してみます。 メインの登場人物は3人。 ① 語り手であるクイズプレイヤーの「三島」(平均的なクイズプレイヤー像を感じさせる) ② 語り手とクイズで対戦する「本庄」(『頭脳王』に出ていた何某がモデルと思われる) ③ クイズ番組を企画するプロデューサー「坂田」(視聴率ありきで動くリアルなテレビ業界を反映し

        『ハンチバック』読後感想

        • 英国のクイズ番組を観て、てきとうに注釈する2

        • 英国のクイズ番組を観て、てきとうに注釈する

        • 『君のクイズ』ざっくり感想文

          クイズのメタゲーム性について

          (推敲中。) ある日の「Mondo」について 最近、QuizKnockが公開している「Mondo」というゲームがマイブームです。全ての文字が伏字になっている問題文の中からいくつかの字を選んでオープンし、正解を導き出すというものです。 例えば、6月20日のクイズはこんな感じでした。 もし問題文が二字熟語や三字熟語で始まるならば、2文字目を見ることで、その前後が推測できる可能性もある。かりに1文字目がカギカッコであっても、なにかしらヒントを得ることができます。 できるだ

          クイズのメタゲーム性について

          みんはや回想記

          「みんなで早押しクイズ」をふりかえる クイズ愛好家の御用達ともいえるアプリ「みんなで早押しクイズ」がリニューアルするという知らせとともに、公式ツイッターが開設された。 もしかすると、このリニューアルをもって、「みんなで早押しクイズ」(以下「みんはや」と略記)は大きく変わるかもしれない。もともと、画面の上半分を参加者のアイコンと問題文が、下半分を早押しボタンが占めているという簡素なデザインが特徴的だったからだ。プロの声優が演じるキャラクターが出てくるというだけでも、ただごと

          みんはや回想記

          佐藤優は「雑学クイズ王」なのか?(クイズ愛好家の立場から)

          昨年(2021年)、元外交官である作家の佐藤優を名指しで批判した本が出版されました。 題して、『佐藤優というタブー』。 出版社のページによると、 という意図の本らしい。 私は佐藤優という人物について詳しくはないのですが、巷がもっている「クイズ」についてのイメージを把握するのに、ひじょうに役立つ本だと思いました。 ちなみに佐藤優氏は、本書に名誉毀損等の内容が含まれるとして、著者と出版社にたいして訴訟を行っていますが、私が調べた限りでは、この「雑学クイズ王」という強烈な

          佐藤優は「雑学クイズ王」なのか?(クイズ愛好家の立場から)

          日本クイズ史の「東洋的な見方」(ユリイカ『クイズの世界』を読んで)

          (過去に書いたものを加筆修正しました) まえがき『ユリイカ 2020年7月号 特集=クイズの世界』(以下『ユリイカ』と表記)を読んだので、ここに感想をあげていきたいと思います。 もともと習慣としては思想誌を読まないこともあり、日ごろクイズを趣味にしつつも、この『ユリイカ』にもあまり食指が動かなかったのですが、もともと愛読している文筆家などが参加していたこともあり買ってみることにしました。 本書には、大ざっぱにいって三種類の文章がありました。 とりあえず、この順番で感想

          日本クイズ史の「東洋的な見方」(ユリイカ『クイズの世界』を読んで)

          ケアとしてのクイズ

          ケアとクイズとのかかわりケアとはなにか この文章では、クイズがもつ「ケア」的な側面について考えていきたいと思います。「ケア」という言葉には、辞書的には「(老人・病人の)介護・世話」や、「(髪の毛などの)手入れ」という意味があります。また、英語の「ケア」という動詞には、「(人が)(人・物・事を)気にする」「(人が)(人・物・事を)心配する」「(人が)(人・物・事に)関心がある」というふうに訳すことができます。 「ケア」ひとつとっても様々なニュアンスがあるのですが、ここでは、

          ケアとしてのクイズ

          芸術と科学のあいだ(『フェルメールの謎』を見て)

          1.『フェルメールの謎 ~ティムの名画再現プロジェクト~』を見た。 1時間ちょっとなので量としては手軽に楽しめるドキュメンタリーだが、その内容はじつに示唆的だ。 あらすじは、アメリカに住む発明家のティム・ジェニソンが、フェルメールの代表作である『音楽の稽古』を再現するというもの。だがひとくちに再現するといってもその道のりは長い。まずはフェルメール本人の足跡を辿らなくてはならない。 フェルメールは17世紀に活躍した画家だが、一説によると、当時存在していた「カメラ・オブスク

          芸術と科学のあいだ(『フェルメールの謎』を見て)

          クイズにおける「ソウゾウ力」とは?

          1.クイズにおける「ソウゾウ力」とは何だろうか? というのがこの文章のテーマです。 先日(2021年9月10日)放送された「高校生クイズ2021」にかこつけてカタカナにしてみました。 ふりかえると、ここ数年の「高校生クイズ」は、「地頭力」というキーワードを前面に出して、現場における考察力や発想力を試すようなクイズが出されていました。 そして今年は「ソウゾウ脳」をテーマとして、知識だけではない「想像力」と「創造力」が問われるクイズが出題されています。 ところで、これは

          クイズにおける「ソウゾウ力」とは?

          『ユリイカ:クイズの世界』を読んだ感想

          書き直したので、こっちを参照してください。 まえがき『ユリイカ 2020年7月号 特集=クイズの世界』(以下『ユリイカ』とのみ表記)を読んだので、ここに感想をあげていきたいと思います。

          ¥500

          『ユリイカ:クイズの世界』を読んだ感想

          ¥500

          クイズ雑記:「生きた知識」などない

          この文章は、クイズ界において使われる「生きた知識」という言葉を批判するためのものです。 クイズプレイヤーのあいだで、「生きた知識」という言い回しはけっこう頻繁に目にします。この問題は「生きた知識」のおかげで答えられた、とか、クイズで知った料理を食べて「生きた知識」にした、とかいった具合に。 自分がここで言いたいのは、そういった意味での「生きた知識」など存在しない、ということ、そして、クイズを引き合いに出して「生きた知識」を主張するのは適切ではない、ということです。 「生

          クイズ雑記:「生きた知識」などない

          水で書かれた言葉たち:「最果タヒ」の詩語について

          この文章は、「最果タヒ」の詩語についての究明を目的としている。最果タヒ(1986-)はいうまでもなく現代を代表する詩人のひとりである。 しかし、彼女の資質は詩語そのものではなく、その流通のしかたまで規定してしまうような、詩語の特異なありかたに現れているのではないかと思う。ここではその特異性のありかについて論じている。 言葉が流通していくありさまを考えるとき、そのメディア的体験としての性質を無視することができない。「最果タヒ」以前の詩語とメディア的体験のかかわりについて、ま

          水で書かれた言葉たち:「最果タヒ」の詩語について

          クイズ雑記:「生きた知識」などない

          書き直したので、こっちを見てください。 0クイズプレイヤーのなかには、「生きた知識」という言葉を使う人がけっこういる。この問題は「生きた知識」のおかげで答えられた、とか、クイズで知った料理を食べて「生きた知識」にした、とか。 結論からいうと、「生きた知識」などない。

          ¥500

          クイズ雑記:「生きた知識」などない

          ¥500

          クイズの不条理性(Absurdity)について

          クイズは不条理(Absurd)なものである、というのがテーマである。 クイズの不条理性について、であって、不条理クイズについてではない。とはいえ、ちまたで「不条理クイズ」と言われているものが参考になるかもしれない。 ネットで検索して、上位の結果をみたところ、いくつか参考になるものがあった。まずはそれを見ていく。​ 1:不条理クイズ@オフラインクイズまず一番上にきた検索結果は、クイズ大会の紹介ブログ。 そのなかで、「不条理クイズNEO」というコーナーがあったらしい。以下

          クイズの不条理性(Absurdity)について