見出し画像

今、生きることを選択できますか?そのために必要なことを知っていますか?

真下貴久さん、39歳。34歳のときにALSを発症し、5年経った現在、ご自身が立ち上げた訪問介護事業所の運営や講演活動、患者相談への対応など、多忙な日々を送られています。そんな中、今回のインタビューの申し出に快く応じていただきました。感謝です。

真下さんは、ALSと診断されてから、積極的に講演活動を行なってきました。それは、声が出せなくなった今でも変わることなく、依頼があればいつでも全力でALS患者として、真下貴久という一人の人間としての思いを語り続けています。
そのエネルギーの源ってなんでしょう?
どうすればそんなに前向きになれるの?
伝えたいこと、成し遂げたいことというのは?

…と聞きたいことがありすぎて質問連投。
それでも一つひとつの問いに、丁寧に、本音で答えてくれた真下さん。
その言葉には、強い存在感が感じられました。
彼の大切な思いが多くの人に届きますように。

Interview
人との出会い、つながりで
病気を乗り越える。

画像6

「ALSに関する啓蒙活動的なことは、最初からすごく強い思いがあったというわけではなく、自然な流れでやり始めた感じです。講演したり、自分で企画に携わったりするうちにいろんな人と出会い、ALSの患者さんとも知り合うようになって、僕自身、助けられることがたくさんありました。治療法もないこの病気と向き合うには、医療の進展ももちろん必要ですが、それ以前に日々の生活があるわけで、やっぱり“人”が要なんだと思うようになったんです。
人の助け、人の思いやり、人のやさしさ、人との出会いに勝るものなしだなって。それが、活動を続けるエネルギーになっていると思います。」

体が辛い、心が折れる、そんなことが病気になると日常茶飯事。それでも、真下さんは立ち止まろうとはせずに、前に進みます。ALS患者の話に興味があって講演を聞きに来た人は、いつの間にか真下貴久という人間に惹かれ、彼の生き方に心を動かされます。病気や障がいがあってもなくても、思いは伝わり、人は繋がっていくものなんですね。

「同病の先輩患者の方から、ALSの患者さんを励ますなら、自分がしっかり生きている姿をみせるのが一番だと教わりました。なるほどと思って、講演では自分の生き方がみえるようにしています。
ALSって、マイナスなイメージが強くて、それだけだとみんな目を背けたくなってしまいます。だから、ALSになってもこんなふうに好きなことをして、人との新しい出会いに一喜一憂して、人のためになりたいと思い活動して、そしてヒゲはやして面白いことを言うヤツもいるんだって見せてるんです(笑)。
講演を聞いた人には、今を精一杯生きるというより、自分に納得してちゃんと燃焼しているのかということを伝えています。
人生は決して無限ではない、有限なんだということに気付くきっかけになればうれしいですね。」


生きることが選択できない。
そんな悲しみを無くしたい。

画像6


「体の不自由さが増して、日常生活に介護が必要になってきたという時に、いろいろな問題が見えてきました。とくに公的支給の介護時間は深刻な問題。なぜなら、病気が進行していった場合、重度訪問介護の支給時間が在宅で自分らしく生きることのカギになっているからです。
私の周りにはその時間数がないために、病院から退院することができない方、施設入所される方、家族に負担をかけたくないからと、生きたいけど、生きない選択をされる方々がいました。
人には平等に生きる権利があります。なのに実際は地域差などでこれらの障害福祉サービスに差があります。それは不平等であり、憤りを感じます。」

ALSは進行すると、自分で呼吸することもできなくなり、気管切開をして人工呼吸器をつけた生活になります。24時間、医療介護の必要が生じるため、十分な介護体制がないと患者は自分らしく生きることが難しいのが現状です。
真下さんの話を聞いて、こうしたことをついつい先送りにしてしまっている自分に反省しました。わたしにとっても、家族にとっても大切なことだから、やっぱり正面から向き合わなければいけないのです。そして、少しでも多くの人にこの問題と向き合う機会が生まれてほしいとも思いました。
真下さんは、誰もが生きる選択ができるように、まずは環境整備のサポートを行なおうと考え、訪問介護事業所を立ち上げることにしたそうです。


相談にのります!
一人じゃない、一緒に闘いましょう!


「訪問介護事業所『たかのわ』はオープンしてもうすぐ1年が過ぎようとしています。 事業所を始めようと思ったのは、自分自身の生活サポートの充実というのがまずありました。自分で動かなければ、望むような生活はできないと感じたからです。それと、周りにも同じように困っている人がたくさんいたので、少しでもサポートできるようになりたいという思いがありました。
今後、会社規模を大きくしたいとか、事業所を広げていきたいとか、そういう野心があるわけではないんですが、目の前で困っている人がいたら、力になれるくらいのパワーがある事業所にはしたいと思っています。

『たかのわ』では、現在ケアスタッフ募集中です。資格がなくても研修があるので心配いらないとのこと。少しでも興味のある人は、連絡してみてください!!

画像6

さらに、真下さんは、毎年2回開催され続けているALS患者がプレゼンを行うイベント『自分をプレゼン』のプロヂュースにも力を入れています。今年は、オンラインでの開催になる予定。まだ、参加されたことがないという人は、要チェックです!


「『自分をプレゼン』は、プレゼンターがそれぞれの思いや生き方について、真正面からプレゼンテーションを行うイベントです。病気を告知されて間もない方や、呼吸器を付けられた方、支援者やボランティアの方々と“横のつながり“を作ると共に、まだ知らない様々な“選択肢“を知ることができるというメリットがあります。
今年はオンラインでの開催になるので、予定が決まり次第、公表させていただきます。多くの人に、視聴していただきたいと思っていますのでよろしくお願いします!!」
★自分をプレゼン過去のイベント詳細はこちら↓


失ったら足せばいい。
コミュニケーションでも個性を尊重。

画像5


常に前向きなイメージの真下さんですが、さすがに声が出なくなった時は一番辛くて、落ち込んだと言います。
「発声できなくなった時は、かなりヘコミました。でもエアフリックで今までと変わらずにコミュニケーションがとれて、それに付き合ってくれる方々がいるのを想ったときに、あきらめないぞと思えました」。

『Air Flick(エア文字盤)真下式』? どんな方法?

「ALSは遅かれ早かれコミュニケーションに障害が出ます。だから発声以外のコミュニケーション手段を持っておく必要があると思い考えつきました。やり方は、目を動かして文字盤の平仮名を視線でさし、一文字一文字をヘルパーさんが読み取り伝える方法です。
いいところは、道具が不要なところと、口文字より圧倒的に早い。難点は癖をとらえる必要があるところです。人にもよりますが、当事者ならやる気があればすぐ! 1ヵ月くらいやればできます。
ヘルパーさんは頻度が当事者よりも少なるので、2、3ヵ月くらいはかかるかな。」
このインタビューは、エアフリックでやりとりをさせていただきました。その速さにびっくりです。これなら、習得すればどうにかコミュニケーションの問題はクリアできそうな感じ。
ALSで失うものは多くありますが、人やテクノロジーのサポートで補えばいい。自分(患者)ならではのアイデアだって役に立つはず。
真下さんと話していると、いろんなことがどうにかなると思えてくるから不思議です。

今の気持ち、
これからの希望

画像3

わたしが真下さんを知ったのは、彼がALSを発症した当初から始めているブログでした。とは言え、ブログネームを使用されているので、真下さんのブログと知ったのはつい最近のこと。自分自身の病状の変化を、冷静にフラットな目線で記録した内容から、このブログ主はきっと理論的思考の強い人にちがいない…と想像を膨らませていたので、真下さん=ブログ主と知ってビックリ。ちょとギャップあるな…と。
目の前にいる真下さんは、明るくて楽しくて、そして大らか。人と接したり、人を喜ばせることが好きな温かい人柄が伝わってきます。一体、どちらが本当の真下さんなのでしょう。
真下さんって、実はどんな人なんですか?
「単純で頑固、負けず嫌い」とのこと。

答えになっているような、いないような…。
でも、とってもストレートでわかりやすい(笑)。
なかなか引き出しの多い、奥の深い方のようですね(笑)。

真下さんに今、伝えたい気持ちをメッセージしていただきました。
ALSの患者さんは、諦める前に情報を正しく得て選択をして欲しいです。死ぬ気でやれば結構いろんなことができるはず。悩んだら遠慮なく僕に相談してください。
病気になって気づいたのは、今の社会が、障がい者にとって決して住みやすくはないことです。障がい者が住みやすい社会は、健常者にとっても住みやすい社会と言えます。みんなが当事者意識を持って視点を少し変えて社会を眺めてもらえたら、世の中はもっと良い方向に向かう気がします。そのために、僕はこれからも活動を続けていきます。」

ちなみに、これから新しくチャレンジしてみたいことはありますか?
「子ども食堂(笑)。幼少期から胃袋を掴み、将来優秀な介護職員に育て上げるのが目的です(笑)」
意外と本気らしい…。いや、いや、やっぱり冗談かな~(笑)
冗談だと思っていたことも、実行してしまいそう。これからも真下さんの活躍、目が離せません。
微力ながら、応援させていただきます!


NOW0 - コピー




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?