娘 バイト おじさん 弁当

何年前かの話だという。
娘の焼肉屋でのアルバイトでの出来事。

チェーン店なので、若い子が多く、店長も若い。
そこに60歳のおじさんが採用されて働き始めたとのこと。

名札には名が書かれており、店員どおしも名で呼び合うお決まりだそうだが、そのおじさんだけは苗字が書かれており、みんなから苗字で呼ばれていたという。

おじさんは、ミスばかり多く客からクレームを受ける始末。店長からはみんなの前で呼び捨てで呼ばれてタメ口で怒られる日々。

ある日、休憩室でおじさんと鉢合わせになった娘。
クレームには、反省文で店長に返さないといけないらしく、書いてる姿を見て落ち込んでるかなー、大丈夫かなーと近づいたら、

「あれ?俺、なにが悪かったんだっけ?なにしたんだっけ?あれ?」

えー?!?!

お孫さんはおられるんですか?
と聞いたところ、小さい可愛い子供の写真を見せて、

「娘👍」

えー?!?!

また、別の日におじさんと一緒に働いていた時、休憩室に行くと、また店長に怒鳴られていたらしい。

あー、またか。と気の毒になっていたら。
店長が休憩室を出て行った。

その時

「やっと行ったよ!はー、やっと行ったな!」
ぜんぜん落ち込んでない

メンタル、凄い(笑)
が率直な感想だったという。

おじさんは、みんなから嫌われていたが、娘は気にかけて話をしていたそうだ。
割と仲良くしていたらしい。

ある日、アルバイトと社員で遠出のお出かけが決まった。
バスを借りて出かけたそうだ。

おじさんだけは、誘われなかったとのこと。
欠席を希望したのではなく、声すらかけていないらしい。

そして、当日。結構早い朝の集合。

集合場所に行くと、そのおじさんが待っていた。
誰よりも早くきて待っていた。
みんな動揺し初めて。。

「はい!これ、持って行ってください!」

みんなに渡したのは

手作りの海苔巻き弁当だった。
しかも人数分。

奥さんが作ったのか、
おじさんが作ったのかはわからないけど、
自分は誘われてないのに、
朝早く起きて作ったのだろう。。

僕はその話を聞いた時、涙が出てきて。。。
泣いてしまった。。

この話には続きがある。。。

バスでのお昼の時間。
みんなでおじさんの弁当、それぞれ開け始めた。

そしたら。。
みんなマズいと言い、捨て始めたという。

しまいには、
ゴミ袋が回り始めて、そこにみんな捨て始め、手も付けず捨てる人もいたらしい。

娘は、本当に人間の愚かさにびっくりしたと言う。

娘のところにもゴミ袋が回ってきた。

「ほら、捨てなよ」

と先輩が言う。

「いや、大丈夫です。食べますので」

「いや、マズいから捨てて良いよ、無理しなくて」

「いや、大丈夫です」

娘は、全部食べた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?