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月の光 (著)劉慈欣(リウ・ツーシン)「時間線」と「持たざる銘柄の行方」

「読めば、投資の幅が拡がるかもしれない小説」
私が都合よく小説の内容を脳内変換して、株式投資(トレード)に関連する暗喩が含まれる作品を紹介していきます。

選定銘柄 小説

「時間線」と「持たざる銘柄の行方」
 株式投資をする際に必ず複数の候補から、これだと決めた銘柄を選定しているはずです。自ら調べて、テクニカル分析やファンダメンタル分析を行ったり、政府の政策テーマに合致しているものであったり、あるいは株式投資の雑誌に掲載されていたから、人に勧められた……何でも構いません。

 あなたが株式投資(トレード)はギャンブルではない、そう考えているのであれば無闇に銘柄を選んだりしないはずです。仮に強力な情報を企業内部の人間から入手したとしても、インサイダー取引として違法性があるので実行するわけにもいきません。

 試行錯誤の上に選び抜かれた渾身の銘柄が、描いていた未来の通り順調に株価が推移していくとも限りません。投資期間は短期であれば結果はすぐに出ます。中長期だとしても、いずれわかることです。当然ですが、時間の進行とともに株価は変動を繰り返しあなたの分析や予想が正しかったのか? 検証結果が明らかになるのです。

 あなたの思い描いていた結果(未来)にならなかったとき、あなたはどうのように感じ、どのように行動するでしょうか。反省し、失敗した要因を分析をする中で当初他の候補銘柄がどうなったか? そこに考えが及ぶでしょう。候補にあげた銘柄を選んでいれば利益を上げることができたのか? そこには違う未来が用意されていたはずです。

あらすじ
国家のエネルギー政策に携わる男は、ある晩、奇妙な電話を受ける。彼のことを詳しく知る電話の男は、人類と地球の絶望的な未来について、語り、彼にそれを防ぐ処方箋を提示するが……。

引用元:(著)劉慈欣(リウ・ツーシン) (作品名)月の光 現代中国SFアンソロジー(A HAYAKAWA SCIENCE FICTION SERIES) 

興味深いところ
 全くノーマークだった中国SFに興味を持ち始めたきっかけが、劉慈欣の『三体』です。米国のオバマ元大統領やマークザッカーバーグが絶賛し、世界的にも広く知れ渡るようになりました。SFファンだけではなく、小説を読まないビジネス層にも突き刺さるものを書き上げたのでしょう。(実は私は現時点では読んでいませんので、いつか読むときを楽しみにしています)

 この短篇のタイトル『月の光』は、英語版では『Broken Stars』となっており”Moonlight”ではありません。”Moonlight”は訳者の大森望氏によるものかもしれませんが、不明です。

『月の光』であればヴェルレーヌの詩や、ドビュッシーの作曲を連想した人もいるはずです。ですから、私も読む前からエンターテイメントとしてのSF小説としてではなく、芸術・文学作品としてのぞみました。この物語は短篇ですので、余分な描写は削ぎ落とされています。しかし、要所要所で必要最低限の心の動きや、情景描写が妙に印象に残りました。展開にはスピード感があり、いくつかの選択肢が並べられているが、情報が整理されているために全く混乱することはありません。余計なことを考えずに物語に没頭できます。

 展開には分岐があり、この点において株式投資(トレード)でいくつかの銘柄選定をする行為にリンクします。株式投資(トレード)をする上で、いくつもの分岐が訪れます。複雑に増殖していく選択肢のひとつを手にして進んでいくしかありません。

 思った場所に辿りつけなかった(損失が確定した)とき、あなたは必ず過去を振り返り、どうすれば良かったのか? 自問自答の末、後悔と反省に到るでしょう。

紹介文

 彼は、夢から醒めたようにぶるっと身震いした。ぼくはもう、この道を進むと決心してしまったのか? ああ、たしかにそうだ。この決断の結果はふたつにひとつ。成功か、失敗か。もしこの努力が最終的に成功を収めれば、未来はすでに変わっているはずだ。

 百年前になされる必要があったことが百年前に実行できれば、たとえ平凡な人間の行為であっても、いま神が介入するのにひとしい効果をもたらすことになる。

引用元:(著)劉慈欣(リウ・ツーシン) (作品名)月の光 現代中国SFアンソロジー(A HAYAKAWA SCIENCE FICTION SERIES) 

 あそこで”ああ”すればよかった、”こう”すればよかった……、できません。できないまま時間軸は移動していきます。保有していない株価をチェックして一喜一憂しても仕方がありません。なぜ、選択を誤ったのか、そもそもエントリーすべきタイミングでなかったのかもしれません。改善点は山ほど見つかりますが、それを活かしたとしてもうまくいくかはわかりません。

 仮に分岐点に戻ることができたとして、あなたが最善の手を打ったところで未来はまた変化する可能性もあります。少しの動きや出来高で、刻一刻と変化していく株式市場の未来を見通すことは不可能であり、だからこそ面白いものです。

著者紹介 
劉慈欣(一九六三~)
『三体』の鮮烈なイメージの強い作家だが、実は短篇の中にはユーモラスな味わいのある作品も少なくない。これら『三体』以前に発表した中短篇の中には『三体』に通じるアイデアや単語、テーマなどが散見され、いわば集大成として長篇化されたものが『三体』と言えるのかもしれない。

引用元:(著)劉慈欣(リウ・ツーシン) (作品名)月の光 現代中国SFアンソロジー(A HAYAKAWA SCIENCE FICTION SERIES) 

こんな人におすすめ

・仮説検証タイプ
・直感タイプ
・分析タイプ

https://novetra.net/broken_stars/

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