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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(再会⑨)(無料試読あり)
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以下本文
私たちは昨日と同様に、周りに気を配りながら歩き出した。元気いっぱいになったクロ君と小さなアオバミは意気投合したようで、何かを見つけては2人ではしゃいでいる。傍から見たら楽しいピクニックだ。
アオバミは私を通しての世界しか知らない。だから見るものがどれも新鮮なんだそうだ。はしゃぎすぎてクロ君と一緒に私から離れていってしまうこともある。ある程度の距離になったところで体からガクンと力が抜けることがわかった。アオバミもそれは感じるようで、クロ君によると離れるほどに体が透けていくんだそうだ。
何度か試してみて、アオバミが私から離れられるのが10m程というのがわかった。でもアオバミがそばに戻れば体の力も戻る。スオウの屋敷の時のように、倒れ込んでしまうかと思ったが、そんな感じも無い。
クロ君やアオバミのはしゃぐ声を聞きながら、私は少しでも知識を頭に入れたくて、リュックから本を取り出した。本棚の中から見つけた、『結界、及び解呪指南』だ。難しくてもちゃんと読めば、無くなっているページについても何かわかるんじゃないかと思ったのだ。
「読みながら歩くのは危ねぇぞ」
「大丈夫」
「熱心になんの本を読んでるんだ?」
「これ、本棚の中にあったの。水篝火様のお仲間たちの呪いを解くのに使えるかもって思ったんだけど、難しくて」
「そりゃ、あんたみたいなひよっこじゃ難しいだろうな」
「だから一生懸命読んでるんでしょ!」
「なんでなんでも1人でやろうとするのかねぇ」
スオウが小さく言った。聞こえないように言ったつもりらしいが、私はしっかり聞いていた。そうか、つい癖で自分でなんとかしようとしてしまっていた。私は何も知らないんだから、知ってる人に素直に聞けばいい。例え、それがムカつく相手でも。
わからないことをわからないと言える方が大人なんだと、この数日で学んだ。花さんも、教えるのは楽しいのだと言っていた。
スオウはお母さんの修行をずっとそばで見てきたようなことを言っていたから、もしかしたらこの無くなったページのことも知っているかもしれない。それにあの長老の弟子なのだから、きっとこの本に書いてあることにも詳しいだろう。
スオウの屋敷の時は、長老がスオウに教えることを促してくれていたから自然とそういう流れにできたけど、今は自分で頼まなければならない。私は湧き上がる恥ずかしさをグッと押し戻した。
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