見出し画像

四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(再会⑧)(無料試読あり)

割引あり

次話全話前話

(本文、表紙絵の無断転載等、著作権侵害となる行為は禁止です)

スキ♡での応援もお願いします!
全話一覧で、Xで拡散のお手伝いをしてくださると無料で全文読めるお話も要チェック!

メンバーシップ会員(月額550円、初月無料)になるとお得にそして手間無く全文読むことができます!


小説マルシェについてもっと知りたいという方はこちら↓の記事をお読みください


.:*゚..:。:.☆.:*゚..:。:.:*゚..:。:.☆.:*゚..:。:
☆感想、お問い合わせ等は公式LINEを友達追加すると便利です!
.:*゚..:。:.☆.:*゚..:。:.:*゚..:。:.☆.:*゚..:。:
以下本文


 がばりと跳ね起きると、寝た時と同じ、洞穴の中だった。ドクン、ドクンと脈打つ心臓が、まだ生きていることを教えてくれている。気持ち良さそうに寝息を立てているクロ君の寝顔が、狐族は来ていないことを証明していた。
 少し離れた場所で、もぞもぞと影が動いた。

「なんでぃ。もう起きたのかい。随分早起きだな」

 大きな欠伸をするスオウだった。顔が少し白くなって、目の下の血色が悪くなっていた。もしかして、徹夜で見張ってくれていたのだろうか。

「お、おはよう。もしかして徹夜?」

 声を出せた。思わず喉に手をやる。

「ちゃあんと寝たさ」

 そう言いながらも、いつも被っているハットを探す手がフラフラと宙を舞っている。本音と建前。スオウは確かにわかりやすいようだ。
 寝相の下敷きになったのか、潰れてぺしゃんこになったハットを拾い上げて、形を整える。「そんなとこにあったのか」と言うスオウに手渡して、洞穴の外に出る。夏の早起きな太陽が、朝日を世界中に振り撒いている中に立つと、心の底から心地良かった。
 私が感じる恐怖も、寂しさも、焦りも、喜びも、怒りも、楽しさも、誰かを愛しく思う気持ちも、全部私のモノなんだ。誰かがコントロールするモノじゃないし、隠したり否定したり、無かったことにしていいモノじゃない。それがあって、初めて私になるんだ。私は、何色にでもなれる魂を持つ、水龍の巫女の末裔。私は、なんにでもなれる。

『クソ! ユリノの奴!』
「アオバミ⁉︎ どうしたの⁉︎」

突然頭の中に響いた声に声が大きくなる。

『ユリノの奴が、もうこっちはいいからお前についててやれって追い出しやがった! まだ完全に回復してねぇのに!』
『え⁉︎  ユリノ様、大丈夫なの⁉︎』
『まぁある程度の応急処置はしたし、あいつも完全に力を失ったわけじゃねぇから・・・・・・』
『なんか・・・・・・ごめんなさい』
『なんでお前が謝る』
『だって、私がちゃんと巫女の修行をしてれば、みんなのことを知ってれば、ユリノ様がそんな風になることもなかったし、今頃お母さんのことも・・・・・・』
『思い上がるな』

 アオバミ声が低くなった。私の心臓がどきりと跳ねる。

ここから先は

1,830字 / 1画像
この記事のみ ¥ 0〜

この記事が参加している募集

頂いたサポートは主にまつかほ家の食費、執筆活動費、そして娘の画材購入費になります。サポートしてくださった方には良いことが立て続けに起こるおまじないをかけておきます。