四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(暗雲②)(無料試読あり)
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以下本文
クロ君の体に触れて、スーッと息を吐く。クロ君の体を癒やす水。私が知っている一番綺麗な水は、ユリノ様と会ったあの湖だ。
『いいぞ、渚』
ユリノ様の声がする。
『この者は何やら大事な物を持ち帰っているようでな。私も手伝おう。大丈夫、渚ならできる』
『この後、どうしたら』
『傷口から、アオバミの姿を水に変えて、この者の中に入れるのだ。この者の体と魂を渚の力で満たせ』
『はい』
言われた通りに想像する。力を使うのではなく、流れに逆らうのでもなく、水の流れに合わせて動かす。アオバミと一緒に遊ぶ。クロ君の体の中を満たしていく。
チャプンと水の跳ねる感覚が、手の平から伝わってきた。あぁ、今クロ君の中で水がいっぱいになったんだなと、なぜかそう感じた。クロ君の小さな鼓動が波紋になって伝わってくる。
気づくと真っ黒な場所に居た。足元に弱々しい波紋がゆっくりと当たる。そうか、ここはクロ君の魂がある場所だ。黒く寒々しいけれど、波紋の中心の方にはまだ微かな明かりが残っている。
その明かりの周りに、大きな黒い大蛇が巻き付いていた。三角頭をもたげて、真っ赤な舌をチロチロと出してこちらの様子を窺っている。蛇からは、寒気がするほどの憎悪しか感じ取れなかった。
「ここまで来たな」
ユリノ様が隣に現れた。汗をかいて酷く苦しそうだ。
「ユリノ様、大丈夫ですか?」
「なに、少し張り切りすぎただけだ。それよりも、早くこの蛇を」
「は、はい!」
「よいか? あの蛇に向かって、アオバミをぶつけるつもりでこう言え。『魔の者放ち穢れ 禊ぎ祓い給え』」
ユリノ様を真似て、左手を黒蛇に向けて大声で叫んだ。
「魔の者 放ち穢れ 禊ぎ祓い給え!」
言い終わった途端に左手からアオバミの形をした水の柱が現れ、あっという間に黒蛇に巻き付き、頭から飲み込んでいった。黒蛇が水の中で暴れ回っているのが見える。
「まだ気を抜くなよ」
ユリノ様に言われて、もう一度力を込め直す。お願い、クロ君を助けて。
水のアオバミに飲み込まれていく黒蛇が、その水の中で徐々に小さくなっていった。
黒蛇の体が完全に無くなると、小さくなっていた明かりが少しずつ大きく輝きだした。足に当たる波紋が、ひとつ、またひとつと大きさと速さを増していく。
「うむ。もう大丈夫だろう。よくやったぞ」
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