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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(暗雲⑥)(無料試読あり)

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以下本文


 みんなが何も言えずに黙っていると、布団がもぞりと動いた。クロ君がゆっくりと起き上がったのだ。慌てて長老が背中を支える。

「クロ! 無理に起きるんじゃねぇ」
「もう大丈夫です師匠。ご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした」
「何言ってんだ。お前が無事ならなんだっていい」
「そうだよクロ君。クロ君はなんにも悪くないよ! ホントに、死なないで良かった」
「えっと・・・・・・助けてくれて有難うございます・・・・・・渚、お姉ちゃん」
「え!? 今、私のこと・・・・・・?」

 照れて顔を赤くしているクロ君が、コクリと小さく頷く。
 クロ君の方が年齢的にはずっと年上だから、お姉ちゃんと呼ばれるのはなんだかおかしな感じがする。それでも、クロ君に初めて名前を呼んでもらえた。本当に弟ができたみたいだ。すごく嬉しい。

「真っ暗な世界の中で、渚お姉ちゃんの声がずっと聞こえてたんです。こっちだよ、もう大丈夫だよって。それから、なんだか優しい女の人の声も。体の中の物を守れって。声が聞こえる方に歩いていて、明るくなったと思ったら、長老様のお顔がありました」
「そうかい。お嬢ちゃんと魂が繋がったからだろうな」
「あそこ、クロ君の魂の世界だったの?」
「そうだ。魂にかけられた呪いを解くには、魂のある場所に行かなくてはならない。そんなことができる奴、そうざらには居ないのよ」
「だから、誰にもできないって」

 長老が優しくクロ君の背中をさする。多分、クロ君が聞いた優しい女の人の声はユリノ様の声だ。ユリノ様は、クロ君が何か大切な物を持ち帰っていると言っていた。クロ君が飲み込んででも持ち帰った物のことを、ユリノ様は知っていたんだ。
 ユリノ様は魂の存在だから気づけたのだろうか。それとも特別強い力を持っているから? きっとクロ君が快復しなかったら、勾玉のことは誰にもわからないまま、水篝火みずかがりび様のお仲間のことがわからないまま、戦いは進んでいたに違いない。
 水篝火様との約束は、「仲間を解放すること」だ。勾玉の呪いを解けば閉じ込められた仲間たちは解放される。しかし、それではみんなチリになり、もう2度と、仲間たちと会うことが叶わない私の中の水篝火様は、今何を考えているのだろう。
 スオウが勾玉に手を伸ばす。やろうとしていることはここに居る全員にわかった。そして、やらなければならないということも。

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