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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(暗雲⑤)(無料試読あり)

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以下本文


 暫く、いや、一瞬だったのかもしれない。部屋に流れた沈黙の時間はとてつもなく長いように感じた。

「え? この中に、水篝火みずかがりび様のお仲間が?」
「そうだ」
「この・・・・・・不気味な勾玉の中に居るの?」
「だからそいつを聞いてくれって言ってるんだ」

 訳がわからない。どう見ても呪いの類だ。あまりにもスオウが怖い顔で聞くので、仕方なく頭の中で水篝火様に話しかける。

『水篝火様』
『聞いている。今確かめているから少し待て』

「今確かめてるから待てって」
「わかった」

 2回目の沈黙。なんだか落ちつかなくて、嫌な感じがして、今すぐ立ち去りたくなる。
 水篝火様に勾玉がよく見えるようにと思って、勾玉から目を離さないようにしているけれど、そもそも水篝火様はどうやって見たり聞いたりしているのかわからない。でも、怪しく蠢く勾玉からは目が離せなかった。
 勾玉からは、悲しみのような、苦しみのような、痛ましいような、背筋がゾッとする声が聞こえる。その声は、甲高く嘆く泣き声だった。

『あまり、見るな』
『え』
『お主の心では此奴の心に引っ張られて帰って来られなくなるだろう。それにもうわかった』
『わかったって、もしかして・・・・・・』
『狸どもに伝えろ。確かにこの中には我の仲間だった者が閉じ込められているとな』
『そ、それってどういう』
『我は少し閉じる』

 水篝火様はそれきり、いつものように気配を消して黙ってしまった。

「おい、どうだって?」
「あ、えっと・・・・・・『確かに仲間だった者が居る』って。でもそれっきり・・・・・・」
「やっぱりそうか・・・・・・畜生めが」
「ねぇ。どういう意味? 『だった者』って」
「最初に言ったろ。もう元の姿じゃないかもしれないって」
「う、うん。でも、魂は救えるかもしれないって」
「これじゃあ無理だ」
「え? なんでよ」

 スオウが悔しそうに勾玉をぎゅっと握りしめて、そしてそっと畳の上に置いた。まるで小さな花を労わるかのように、そっと。

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