はじまりはいつも雨
コロナ4日目。
味覚と臭覚がおかしい…全然分からん。
療養しながら雨音を聞いていたら
思いついた話です。
ちょっと中途半端な終わり方ですが…。
「明日は目白台へ行ってくる」
君の声と重なる様に雨音が聞こえた。
僕は君が散歩の途中で電話をかけて来ていると分かっていた。だけどつい聞いてしまう。
「今、どこからかけてるの?」
「お散歩途中の公園から…何でそんなことを聞くの?」
君には少しでも気の利いたことを言いたいと思っている僕は、少し気取って言った。
「雨の音しか聞こえないから…」
君はくすっと笑って、少しの間黙っていた。
スマホから雨音が聞こえて来る。
「わたしは雨が好きなの。静かだし…あなたは雨の日が憂鬱かもしれないけどね…じゃあ、電話切るよー…」
「あ、あのさ、何時ごろ…目白台辺り…」
僕は焦ったように君に声をかけた。
「9時ごろかな…?」
「じゃあその頃、護国寺周辺を歩いてたら君と偶然すれ違えるかもしれないね…」
「すれ違えたら素敵だけど…締切あるんでしょ?じゃあね」
君は少し寂しそうに答えた。
電話を切った後、外に出て海を眺めた。
灰色の雲が立ち込めていた。
雨の中を散歩する君の姿を想像した。長靴を履いて子どもの様な君…思わず笑ってしまった。
タバコに火をつけようとした時、ポツポツと雨が降り始めた。野良猫がのそのそと僕の方へ近寄って来た。
「雨宿りに来たのか?寂しいおやじ二人だな」
僕はタバコをふかして、海を眺めた。
君はいつも雨を連れてくる…。(了)
askaさんの『はじまりはいつも雨』が聴きたくなりました 笑
写真はホスタです。
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