見にくいあしたの子

見にくいあしたの子

北野りんご🍎

玉ねぎを切ったとき、妄想が始まった。そこは四角い部屋で壁は白かった。声をかければ、遠くから叫び声が聞こえてくる。セブンイレブンのお姉さんが僕の顔見て笑っていた。何がおかしいのか僕にはわからなかった。
でも、レジ袋に入れていく手つきは私と同じで、得意がっていた。
僕は私。性別不明だけど大丈夫です。お姉さんでもあり、お兄さんでもあり、妹でもあり、弟でもある。人だと思うよ。ね。ねえ。

もの語りは続く

雨が降り出した。物思いにふける。発達よりも統合の方が、大きいと言われているけど、何処が統合なんですか?
私にはあいだがない。だから伝わって来ない。
品物の袋詰めが得意。発想が優れている。積み木を組むゲームだねー。
明日明後日の予定を立てるのが苦手。ずーっと続いているのが好き。妄想側の、現実世界に住んでいるわたし。
だからいつもボーっとして、何を考えているのかわからない。

今から旅に出る。JRの駅まで2人で来た。しかし、お腰のハンディキャップを抱えた彼女は、ダイヤを逃してしまった。今夜の新幹線には乗れない。何もかも知っている彼女。白い部屋の事務机の監督席に、彼女は座った。会計係がドロアーの中の売り上げを数える。私は座った席を立ち、壁際のカウンターの上から現金を見つけ、会計係に持って行き、渡した。

ほら女性像があるから持って行きなさい。何処に?そのガラス枠をはずした窓のところ。
私は建物内から出た。確かに女性像はある。発泡石に彫刻してある。大きさは1.8メートルぐらいある。持てなくもない。折角だから貰って行こう。持てる重さだ。しかし、彼女をおんぶ出来ない。持って行くのを諦めた。

時は夜。野宿か。トコトコ歩いて行く彼女。その後ろを見てついていく。野宿するにはくっついて寝るしかない。知っている人がいる。探さなきゃ。居酒屋食堂ののれんを潜り、入っていく彼女。ついていくと2階に上がり、3階に上がる。女将さんがいた。美味しいね、ありがとうございます。声かけて、振り返ると、彼女は出口に向かっていた。その人は居なかったようだ。

暗い通りを歩く彼女。右斜め後ろから、語りかけた。何故かって、全てが滅び去って残ったのが君。これから2人でやって行く時が来たのに、何故君は去っていくの?私は涙が溢れ出た。黄泉の国の君。財宝は君のもの。1人でも生きていく。私無しでいいの?

彼女は横断歩道で小学生におんぶして貰おうとしていたが、それは冗談のようで2人で笑っている。私は必要ないのか?

私の車に向かった。彼女と私の荷物が積んである。ドアロックを解除した。開けた彼女。荷車を横付けした彼女は、自分の荷物を乗せ替える。違うんだよ。私は元のサヤに戻りたかったんだ。去って行って欲しくない。お願いします。行かないで。涙で彼女がはっきりと見えない。

付き合うということは、常に難局がある。それを踏まえてお付き合いはある。ある意味不公平かもしれない。でもね、諦めよりも、永遠のこころだと思うの。

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