使用ツールの選択とみんなの愛用ツール
小説を書く上でまず最初につまずくのは、「何を使って書くか」です。
この問題を侮ってはいけません。使用ツールが決まらないと、最初の一歩すら踏み出せないのです。小説を書ける人にとっても大敵です。「あれもいいなぁ」なんて迷っていると、使用中のツールで集中して書くことができなくなってしまうのです。
そこでマシュマロちゃんのフォロワーに使用ツールを聞いてみました。が、「これにしろ!」と言えるほどの定番ツールなどありませんでした。その代わり、多くのツールが存在し、また書き手によってツールも千差万別であるということがわかりました。
しかし今度は「選択のパラドックス」という問題が立ちはだかります。選択肢が多すぎるとかえって選択が難しくなってしまうという問題です。つまり、ツールが決めきれない人に膨大な数のツールを紹介するのは鬼の所業なのです。
鬼の所業も悪くないなと思ったのですが、このマニュアルは「書きたいけど書けない人」のためのものです。なるべく突き放さずサポートしていくべきです。ですからまずはツールを選ぶ際の考え方と、それに基づいたおすすめツール紹介します。そのあとでみんなの使用ツールをざっと紹介します。
本文執筆とメモ
使用ツールは大きくわけて2つあります。
まずは本文を書くためのツールです。これは一般的には「エディタ」と呼ばれます。小説を書く際には、基本的にはエディタと向かい合うことになります。また、エディタさえあれば作品を書くことができます。
もう一つは、ふとした気付きや作品の構想をメモするツールです。これは一般的に「メモアプリ」と呼ばれるものと変わりません。メモアプリの中には、作品の構想に特化したものもあります。
書き慣れて自分の執筆スタイルを確立していると思われる人の多くは、エディタとメモアプリをわけていました。本文を書きやすいこととメモを取りやすいことは別だからでしょう。
しかし「書きたいけど書けない人」ならば、1つのツールで済ませられるほうが迷いがなくていいかと思います。執筆スタイルが定まっているからこそツールをわけることが活きるのであって、定まっていないとツールの使い分けに迷ったりしてしまうからです。
そのため、このマニュアルでは本文執筆もメモもこなせるタイプのツールをおすすめします。メモが取りづらいエディタは除外しますし、本文を書きづらいメモアプリも除外します。執筆スタイルが定まってきたら、それに応じて後からメモ用や構想用のツールを追加していくといいでしょう。
縦書きと横書き
小説は縦書きが合う。これは書籍において小説が縦書きであるため、自然な感覚です。だから文章の細部の細部までこだわる人は、執筆時も縦書きを採用していることが少なくありません。
ですが縦書きだと使えるエディタが限られます。また、多くの端末やサイトが横書きを前提としています。そのため、ネットに投稿するなら横書きで読まれることが基本です。縦書き用のモードが用意されていたとしても、それはネットではあくまで特殊モードでしかありません。
これらのことから、横書きエディタでの執筆に適応しているほうが非常に有利ではあります。もちろん書きやすいのが一番なので、縦書きじゃなきゃ書けないなら縦書きで執筆すべきです。でも横書きでも縦書きと同じように書けるなら、それに越したことはないのです。
そのため、このマニュアルでは横書きのエディタをおすすめします。まずは自分が横書きに適応できないか試してみる価値は十分にあります。
どの端末を使うか
執筆に使う端末やその他の道具で主要なものは、4種類あります。
・紙
・スマホ
・PC
・ポメラ(ワープロ)
紙は自由でお手軽で素晴らしい道具です。紙のメモ帳を持ち歩き、常に気付きを文章や図でメモしていく行為が可能ならやったほうがいいでしょう。それは観察の訓練として最高の方法の一つです。
でも実際のところ、紙のメモ帳よりもスマホを取り出すほうが圧倒的に速いという人が大半でしょう。つまり、さっとメモを取るという行為においてはスマホの圧勝なのです。そのため、メモ用にはまず紙よりスマホを使う方をおすすめします。
エディタを使って本文を書くための一番の端末はPCです。ですが、書くことに特化した端末もあります。それは古くはワープロ、今はポメラです。ポメラは書くことしかできない小型ノートパソコンのようなもので、非常に素晴らしい端末です。とはいえ、「書きたいけど書けない人」が既に小説のためだけにポメラを用意しているとは思えないので、ポメラはおすすめから除外します。そのため、PCをメインの執筆用端末とすることをおすすめします。ちなみにタブレットと外付けキーボードの組み合わせはほぼPCなので、PCとして扱います。
ということで、本文執筆はPC、日常のメモはスマホというスタイルが一番のおすすめです。実際そのスタイルの人が多いように思います。
ただし、スマホしか持っていない人もそれなりにいるでしょう。そういう人に小説のためだけにPCを買えというのは酷なので、スマホでの本文執筆も想定した上でおすすめを紹介します。
全方位に強いおすすめ
まずおすすめしたいのはEvernoteです。Evernoteは様々な文書を保管しておくためのツールです。まだ執筆ツールが決まっておらずこだわりも特にないなら、とりあえずこれでいいでしょう。
理由としてはまず、本文執筆もメモも両方扱えることです。そのため、これだけあればどうにかなるのです。
次に、対応端末が多いことです。大抵のスマホやPCで使えます。端末間のデータ同期も非常にスムーズです。
ただしデメリットもあって、無料プランだと2端末でしか使えません。ですがスマホとPCの2端末に入れるなら無料で十分です。スマホのみの利用ならなおさらです。
人によってはEvernoteの機能が多いこともデメリットになるかもしれません。Evernoteは汎用性の高さが特徴で、本文執筆もできるメモアプリです。つまり、文章を書くことに特化した純粋なエディタではないのです。そのため、執筆への集中をサポートしてくれる要素は皆無です。むしろ人によっては常に気が散ります。集中をサポートしてくれるようなツールを求める場合には、おすすめできません。
シンプルが好きな人へのおすすめ
Simplenoteです。これはもうめちゃくちゃシンプルです。名前からのほんのり感じるでしょうが、まるでEvernoteの中の過激派が独立して文字装飾のないプレーンテキストに特化したバージョンを作ったかのようなツールです。ですから、これも純粋なエディタではないものの、本文執筆にはEvernote以上に強いです。また、機能は絞られていますが、分類しにくいということもありません。そのため、本文執筆もメモもこれだけで扱えます。
SimplenoteもEvernoteと同じく、大抵の端末で使えます。しかもデータはただのテキストファイルなので同期は爆速です。
また、編集履歴を見ることができます。それにより誤った変更をしてしまった場合でも、過去の状態に戻って修正することが可能になります。推敲で大きく変更する際に、以前の本文を別ファイルとして保存しておくなんて作業も必要なくなります。
さらに、ページをWebサイトとして公開する機能もあります。それを使えば、ちょっとした作品をSimplenoteに書いてそのままWebサイト化してツイートしてみるなんていうのも可能になります。別途投稿サイトが不要というのは、投稿のハードルが高く感じる人なら随分気が楽になるかと思います。
スマホもPCもApple製の人へのおすすめ
デフォルトのメモアプリです。デフォルトで入っているアプリとはいえ、Evernote等のサービスのいいところを盗んで、いえ取り込んで、そこそこ出来のいいアプリになっています。執筆ツールがまったく決まっていないなら、とりあえずデフォルトのメモアプリで始めましょう。
ただし、すでにメモアプリを使っているなら、避けたほうがいいかもしれません。小説とそれ以外のネタが混在することは集中を妨げる要素になります。そういう場合は、定番好きならEvernote、シンプル好きならSimplenoteがおすすめです。
ただし、これらは無料に限定した話です。ちょっとくらいの課金だったらOKな人には、Bearをおすすめします。
BearはSimplenoteと同様に、シンプルでプレーンテキストに特化したツールです。ただし、Simplenoteよりもデザインがよく、なおかつ文章を書くことに集中することサポートする工夫が随所にあります。あくまでメモアプリではありますが、かなりエディタに近く、純粋なエディタを凌駕する書きやすさです。そのため、集中をサポートしてくれるツールを好む人には非常におすすめです。しかも不思議なことにスマホでもPCでも同じ感覚で本文を書いていける優れものです。
ただし、端末間でのデータ同期は有料プラン限定の機能になります。スマホでもPCでもぐいぐい書いていけるツールであるからこそ、データ同期ができないと不便です。そのため、課金はほぼ必須です。とはいえ、月額150円なので格安です。
みんなとりあえずBearにしろ! と言いたいところですが、BearはなんとiPhone/iPad/Mac専用、つまりApple製品以外には対応していません。そのため多くの人にはおすすめできず、Apple製品のみを使っていてなおかつ課金OKの人だけという狭い範囲の人にだけに強くおすすめしておきます。
スマホしか持っていない人へのおすすめ
デフォルトのメモアプリです。AndroidでもiOSでも、まずはそれでいいでしょう。
ただし、デフォルトのメモアプリを既に使っているなら、やはり小説とそれ以外が混在するのを避けるために別のツールがいいでしょう。そういう場合もやはり定番好きならEvernote、シンプル好きならSimplenoteがおすすめです。
iPhoneユーザーでデフォルトのメモアプリ以外にするなら、Bearがおすすめです。端末間のデータ同期が有料機能なのですが、スマホしか持っていないならデータ同期も不要なので無料で十分使えます。そうなるととりあえずBearにしておくのをおすすめします。
ただし、将来的にPCを買う予定ならば注意が必要です。Macならたった150円払えばデータ同期の問題は解決できますが、Windowsならそもそも対応していないので非常に困ることになるでしょう。
硬派な人へのおすすめ
硬派は黙って手書き! 紙に書くのはおすすめしないものの、硬派な人は形から入るほうがうまくいく場合があるでしょう。そのため偏見に満ちた作家像を実践するといいでしょう。
まず、どの鞄にも入るような小さなメモ帳を用意してください。ボールペンを差せるようなものだとさらにいいです。100円均一で売ってるような安物が結構使い勝手良くておすすめです。
次にメモ帳用のボールペンです。素早く書くことを優先するので、書き味がなめらかなものがいいでしょう。とはいえ、高級なものはやめておきましょう。メモのために常に持ち出し、なおかつ頻繁に取り出すので、たまに紛失します。そのため、なくなっても問題のないボールペンにすべきです。
ボールペンのおすすめとしては、三菱の「JETSTREAM」というボールペンです。これはどこにでも売っているので簡単に手に入ります。余談ですが、三菱のボールペンの書き味は昔から物書きにはよく知られていて、三菱のボールペンを切らして買いに行く様を描いた短歌も詠まれているくらいです。
さらに本文の執筆も紙だと硬派です。原稿用紙と万年筆がおすすめです。万年筆は高そうなイメージがありますが、文房具店では意外と安い万年筆も売っています。そうして自分にとって書き味のいい万年筆を見つければ、書き味を楽しみつつ小説の執筆を楽しむという素敵な相乗効果を得られます。
万年筆までいくとほぼネタのように思えるかもしれませんが、実際マシュマロちゃんのフォロワーの中にもこういうスタイルの人はいました。硬派スタイルは隠れ一大勢力なので、執筆ツールに迷うようならいっそ試してみるのもおすすめです。
みんなの愛用ツール
ざっと考え方とおすすめを紹介しましたので、ここからはみんなの愛用ツールを一気に紹介します。
もし「ツールにこだわりたい!」と思ったり、執筆スタイルが固まってきて新しいツールを導入したくなったら、ここにあるものを片っ端からチェックするといいでしょう。
人気
やはり気軽に使えるデフォルトのメモアプリ、紙のメモ帳/ノート/付箋が最も人気ですが、それ以外だと以下が人気です。
Word
用途:本文執筆
対応OS:Windows/macOS/ブラウザ版ならほぼすべてのOS
縦書き:可
特徴:純粋なエディタとしては不動の1位を誇る採用率。でも嫌われエディタとしてもダントツの1位
Evernote
用途:メモ、本文執筆
対応OS:Windows/macOS/iOS/Android/ブラウザ版ならほぼすべてのOS
縦書き:不可
価格:2端末までなら無料
特徴:圧倒的汎用性。一応本文執筆もいけるので迷ったらこれ
Simplenote
用途:メモ、本文執筆
対応OS:Windows/macOS/iOS/Android/ブラウザ版ならほぼすべてのOS
縦書き:不可
価格:無料
特徴:Evernoteのプレーンテキスト特化版。Evernoteよりも本文執筆向き
Bear
用途:メモ、本文執筆
対応OS:macOS/iOS
縦書き:不可
価格:月額150円(1端末での利用で自動同期機能が不要なら無料で十分)
特徴:熊。日本語表示だとメモを名乗る癖にエディタモードがあって本文執筆にとても強い熊
PenCake
用途:メモ、本文執筆
対応OS:iOS/Android/Windows?(公式ページの存在が不明)
縦書き:不可
価格:基本無料
特徴:シンプルおしゃれ。明朝体で書ける。スマホオンリー勢から人気
SomNote
用途:メモ、本文執筆
対応OS:iOS/Android/ブラウザ版ならほぼすべてのOS
縦書き:不可?
価格:基本無料
特徴:フォルダ分けやデータバックアップに強い
Nola
用途:メモ、本文執筆
対応OS:ブラウザからの利用なのでほぼすべてのOS
縦書き:不可?
価格:無料
特徴:プロット作成補助機能など、構想をサポートする機能がある
ポメラ
用途:本文執筆
対応OS:基本的にはポメラ端末のみで利用可
縦書き:可
価格:数万円
特徴:本文執筆専用マシン。唯一無二のエディタなので、相性さえ良ければもうこれでしか書けなくなる
一太郎
用途:本文執筆
対応OS:Windows/iOS/Android
縦書き:可
価格:8,000円〜数万円?
特徴:Wordの日本語入力特化版
秀丸エディタ
用途:本文執筆
対応OS:Windows
縦書き:可
価格:4,000円~7,000円
特徴:高いカスタマイズ性。昔はエディタガチ勢の多くがこれに行き着いていた
Pages
用途:本文執筆
対応OS:macOS/iOS
縦書き:可
価格:無料
特徴:macOSにデフォルトで入っている文書作成アプリケーション。要はMacのWord。最近になってようやく縦書きに対応した
その他いろいろ
縦式
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