スローなブギにしてくれ

＊本作は南佳孝さんの「スローなブギにしてくれ」をイメージしたオリジナルショートストーリーです。歌詞とは一切関係ありません。

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

その女は突然、俺の前に現れた。町外れのこのショットバーには不釣り合いの綺麗な顔立ちの女。腰まであるワンレングスを気怠そうに掻き上げる仕草は、わざとヴァンプを装っているように見えた。オレンジのキャミソールにタイトなミニスカート。サンダルを突っかけた足のペディキュアが剥げて貧相なはずなのに、なぜか気高さを感じるその女に俺はいつのまにか自分の身の上を語っていた。吸い込まれそうな瞳に一瞬、時が止まり慌ててペラペラとまるで魔法にかけられたように昔話をする俺。

あー　このジンのせいだ…

　　　お前が…

　　　　　　　　欲しい。

戯れるふたつの光寄る辺なく仄かに紅いそこだけが時間