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果物と果実

今日はなんとなく悲しい
悲しい理由はない

もしあるとすれば、
友達が果物から果実になった理由を知ったこと
本棚が崩れて読みかけの小説が部屋から逃げたしたこと
二の腕にいつの間にかデキモノが生まれたこと

街のリズム
川は水かさを増して逆向き

果実になった友達のそれは
甘かった
甘かったけど美味しくなかった
美味しくはないけどうなずいた
甘い、甘いとうなずいた

だから、皮は庭に埋めた
春の土で隠した

「裏のおばあちゃんからもらった果物どうしたのよ」
食べた、美味しくはなかった

二の腕のデキモノは
プツンと赤くて美味しそうだった

だから、果物ねとつねった
痛い、透明が滲みでる
痛い、ペロッと舐めてみると
鈍かった

さっきの恐竜ぐらい大きいトラック
あれのせい、きっとそうだ
大きく弾むように、揺れた

だから、壁一面の本棚は崩れた

本に隠れていた明け方
本に隠れて逃げ出した
読みかけの小説

くだらない、でも
居心地のいい小説

だから、今日はなんとなく

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