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農業の光と闇~「ふしちゃんファーム」の成功と「ワールドファーム」の失敗~

日本の豊かな土壌の上、ひとつの夢が実を結び、もうひとつの夢が破れる。農業、古くからの伝統産業に新しい風が吹き、その中で繰り広げられる光と闇の物語。
成功を収めた「ふしちゃんファーム」は、どのようにして時代の変化に対応し、成果を上げ続けたのか。
一方、「ワールドファーム」は、どこで間違え、大きな挫折を経験したのか。
今回は、これら二つの農業ビジネスを詳しく見ていき、新たな農業の形を模索する中での教訓を探ります。この物語は、農業だけでなく、すべてのビジネスマンや起業家にとって、学ぶべきポイントが詰まっています。


有機農業での成功事例~「ふしちゃんファーム」の強み~

ふしちゃんファームのプロフィール

有機農業の重要性が注目される中、既に成功を収めていると言える農業ビジネスが存在します。
その名は「ふしちゃんファーム」。

創業:2015年

  • 栽培品目:主に葉物野菜(小松菜、水菜、ロメインレタスなど)

  • 特徴:すべてJASの規格に基づく有機栽培

日本の有機栽培の総面積は全体の一部に過ぎませんが、このファームは年商1億を超えており、毎年物凄い勢いで成長しています。

成長の秘密:出荷のノウハウと鮮度保持技術

ふしちゃんファームが他の農場と一線を画するのは、出荷に関する斬新なアイディアと技術導入です。
具体的には、日栄インテックの『スーパークーリングシステム』という鮮度保持技術を採用。

通常、葉物野菜は収穫後3日程度で鮮度が落ちてしまいますが、この技術により、2-3週間の鮮度維持が可能となりました。これにより、出荷のスケジューリングやロジスティクスの柔軟性が格段に向上。

多岐にわたる販路の確立

現在、彼らの販路は大手食品宅配会社やスーパー、そして生協など。
BtoB、BtoCの両方の市場で戦略的に展開しており、これが売上の伸びに繋がっています。

創業当初の年収は約1,000万円だったものの、2021年には8,000万円を超え、2022年には1億円を超える成果を上げました。コロナ禍においても、外食チェーンからの需要減少を乗り越え、直販やスーパー向けへのシフトなど、柔軟な対応を行いながら売上を伸ばし続けています。

ふしちゃんファームの成功は、有機栽培という質の高い生産と、鮮度保持技術、そして柔軟な販路戦略が三位一体となって実現したもの。新しい技術導入の勇気と市場の変動に応じた臨機応変の対応は、多くのビジネスパーソンにとって参考になる事例でしょう。

大規模農業の挑戦とその結末~「ワールドファーム」の倒産~

一方で、茨城県を拠点にした「ワールドファーム」の倒産は業界内外で大きな衝撃を与えました。ふしちゃんファームとの違いはどこになるのか?

ワールドファームの特徴と強み

ワールドファームは、大規模農業を取り入れたビジネスモデルで知られています。特に、野菜加工工場を併設することで、一貫して生産から加工までを手がけることが同社の大きな特長でした。この統合モデルは、生産の効率化や品質の統一などの利点を持っていました。

突如としての破産と破産の背後にある要因

しかし、先週の10月12日、ワールドファームは約34億円の負債を抱え、破産申請を行いました。多くの方が疑問に思ったことでしょう、なぜこんなにも急速に事態が進展したのか。

その要因の一つとして、コロナ禍の影響が挙げられます。外食産業の営業自粛により、野菜の加工品の卸先が減少。これが売上の低迷を引き起こし、結果的に債務の増加へと繋がりました。加えて、ワールドファームは薄利多売の戦略を採用していたことが、今回の状況に拍車をかけたと考えられます。

具体的には、外食産業への卸し先が減少する中、急遽スーパーなどの小売業への販路を開拓しようとしたものの、その切り替えには多くの投資や時間が必要となりました。結果、販路の変更が難しくなったことで、経営が困難となったのです。

今後の農業ビジネスモデルへの教訓

このワールドファームの事例から、単にスケールメリットを追求するだけのビジネスモデルには限界があることが示されました。今後の農業経営には、柔軟性や多角的な販路戦略が必要となるでしょう。また、不確実な時代においては、経営のリスク管理や事業継続のための戦略も重要となります。

今回の二つの事例から明らかになったのは、単なる農業ではなく「経営」の視点が不可欠であるということ。成功も失敗も、それぞれが背負う経営の哲学や戦略、そして対応力が鍵となる。ふしちゃんファームは変動する市場の中で、柔軟に方針を転換し、革新的な技術を取り入れて差別化を図りました。対照的に、ワールドファームは大規模化と効率化を追求するあまり、市場の変動に対する対応が遅れ、結果的にその重さに耐えきれずに倒れてしまいました。どちらの事例も、未来の農業経営にとって、大きな示唆を与えてくれます。新しい時代には、常に変化し続ける環境の中で、持続可能なビジネスモデルの構築が求められるのです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

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