【ネタバレ感想】 MEN 同じ顔の男たち
観ました、問題作。最後の数十分は、一生脳裏にこびりついて、呪いのように人生の至る局面でフラッシュバックしてきそうなインパクトと、メッセージを感じました。でもなんだか、CMっぽいというか、尖っていた時代のACが放映してそうなレトリックを感じたので、自分の勉強も含めて、備忘録的に書いてみます。飲みながら書いているので色々ご容赦ください。
「問題作なんてまたまた〜ちょっとグロいだけでしょ。同じ顔の男が襲ってくるホラーとか絶対面白いやつ〜」と上映時間5分前に席に着くほどウキウキして観にいった。バカヤロウだった。
序盤、とても画が綺麗。でも所々不穏なカット、不穏な音楽、不穏な人影を感じながら物語は進んでいく。特に、トンネルのシーンはすごく印象深かった。旧鉄道の線路だという小汚いトンネルが、とても幻想的で、不気味で、すごく絶妙なバランス。うわ〜きれい〜でも絶対怖いやつ来るな〜と思ってて、、やっぱきた!うわ、走ってきた!やっぱ怖い!と楽しかった。
そして、(観客として)徐々に異変に気がつく。
あれ、主人公、「同じ顔の男」が出てきてるって演技してないじゃん。気づいてない?いや、主人公には「そう見えてない」?
本筋は、そこじゃないんだ。単純にホラーな設定をお行儀よくやるだけではないか。にくいA24。
散歩している中で出会う男たち。全裸でストーキングしてくる変態だったり、ハーパーに女性差別発言を繰り返す学生(わざと顔の合成を浮かせてるのかな?)だったり、ハーパーのストーカーを「変なやつだけど別に有害ではない」と釈放する警官だったり、DV夫を肩を持つ神父(太ももを触るシーンが別に普通の仕草なんだろうけどゾッとしましたね)だったり、もううんざりする主人公。
そりゃ、一杯やりたい気分になった主人公は、村にあるパブへ。そこも、男だらけ。もちろん、全員同じ顔。ほっといて欲しいのに、やたらと話しかけてくる男たち。男。男。男。「どいつもこいつもクソ(男)だ」とパブを後にするハーパー。自宅に戻る。
ここからの展開が冒頭のそれです。問題シーン。
男が、男を産む。
文字通り、です。全裸の男が、股を広げて、ヴァギナ(無修正)から男を「産む」。生まれた男が、また別の男を産む。その繰り返し。赤ちゃんじゃなくて、成人男性を産みます。本当に気持ち悪い。はじめこそ、恐怖で顔が歪んでいたハーパーも、徐々に蔑むような顔に。呆れの表情。ここは、観てもらわないと、なんとも伝わらない気持ち悪さ。
簡単に言ってしまえば、Toxic masculinity(有害な男らしさ)を描いた作品なんだと、ここでハッキリわかります。
ストーカー、ストーキングを取り合わない警察、性差別者、暴行を加える牧師、、その根底にあるミソジニー(女性に対する嫌悪や蔑視)。
年齢、職業、その関係性に限らず、そんな「男」はみんな同じだと。同じ顔に見えると。
そして、そいつらが厄介なのは、続いて行くこと。そういう価値観の男の子どももまた、同じような価値観に育っていく。
別荘の持ち主である男が「小さい時に、お前は、軍人になりきれない男だ(的な)」と父親に言われたと語るシーンがありましたが、男が男を産むシーンをわかりやすく説明していると思いました。「男はこうでなくてはならい」と、父家長制を親から子へ、無自覚のうちに受け継がれていく。次々と、同じ価値観(ミソジニー)を持った男が生まれていく。同じ男の顔が生まれていく。
どんなにイケメンでも、社会的に地位のある職業についていたとしても、所詮MEN。同じやつら。同じ顔にしか見えねえクソヤロウだ、と。本当に救いのない解でした。きつー。
やりすぎな気もしますが、「ここまでやらないとお前らわかんねぇだろ、いやここまでやってもわかんねえか」と言われているような気もして、結構精神的に消耗したのでした。
私は、体も心も男なので、結構きつかったです。自分の過去の行いとかを振り返って結構吐きそうな感じになってしまいました。皆さんはどうでしょうか。絶対に友達におすすめできない映画ですけど、人生の中で、こんな2時間があってもいいんじゃないかな、と思えるいい映画でした。
ラストはどういうことなんでしょうかね。友達、妊娠してましたね。子供は男なのでしょうか。手の斧は、植物に変わっていましたね。この辺まで読みきれませんでした。
街中に現れる同じ顔の男。そいつらは自分(女性主人公)に対して、面倒なちょっかい/女性を軽視した発言を繰り出してくる。有害な男性象を見直そう、AC〜。
ありそ〜。
もうちょっと広告的な話にもよせて書きたかったけど、ワインがおいしすぎたのでやめます。飲みすぎた〜〜〜〜〜〜!!!!
2022.12.10.