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歩行分析に必要な臨床的視点!重心位置を把握する重要性とは?

どうも!脳卒中の歩行再建を目指す中上です!

歩行分析は全てのセラピスト必須の能力ですが、その際に何をどうみるかは臨床上非常に難渋することが多いと思います。

そこで、今回は私自身が行なっている歩行分析に必要な臨床的視点を重心の位置を把握するという力学的視点からまとめました!

歩行をみる際のポイント

まず初めに、歩行分析において日々私自身が臨床場面で大切にしている歩行をみる際のポイントをお伝えします。

よく歩行分析の重要性について問われることが多いですが、この分析をする際に何を指標とし、どんなことを他のセラピストと共通理解するのか、ここは非常に難しく、どうしても主観的な部分になることもあります。

しかし、臨床場面ではある程度主観的な部分にも明確さを持ち、ご自身の中で核となる部分を把握することが、ある意味臨床における歩行分析であると感じています。

その中でも、私が歩行をみる際のポイントとして


歩行機能を司る脳機能
関節や筋活動などから考える運動力学(バイメカ)
具体的な歩行評価における評価バッテリー

の大きく3つの要素を大切にしています。

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今回はその中でも私自身が大切にしている、歩行をみるための3つの力学的視点(バイオメカニクス的要素)についてお伝えさせて頂きます。

歩行をみるための3つの力学的視点
1.重心の位置
2.床反力
3.下肢・体幹アライメント

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力学的視点から考える際、関節運動や筋活動をみることももちろん必要ですが、その前にまず身体重心の位置を理解することが重要です。

歩行を見る上での重心の位置を理解する

歩行を力学的モデルで考えた場合、より効率な歩行機能獲得のためには重心移動という考え方が必要です。

そのためには、正常歩行で起こる重心移動の軌跡を理解すること、それと比較して脳卒中患者様はどの部分で崩れが強くみられるのか、ここを評価します。

特に歩行時における重心の上下動の動き、左右の動きをまずは評価していきます(今回は上下の動きに着目していきます)。

重心の上下動については、以下に正常歩行と脳卒中片麻痺歩行における重心の高さの違いを一例としてあげます。


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この中で着目して欲しいポイントは、

歩行周期の中で重心が最もあがる相はどこになるのか?
それにより次の歩行周期にどう影響を及ぼすか?

という部分です。

正常歩行では歩行をより効率的に、エネルギーコストを抑えた中で実施できるように、重心の上下動が綺麗な波打つ波形としてみることができます。

これは重力という外的な力を利用することで、エネルギー変換(高くにある重心は、その後加速度を持って運動に変換される)がされやすくなるのが特徴です。

しかし、片麻痺歩行患者の波形をみてみると、特に麻痺側立脚期において重心の落ち込みないしそこからの持ち上がりが生じにくいという波形がみられます。

重心位置が与える歩行周期への影響

よく言われるのが、立脚中期(ミッドスタンス:MSt)の重心持ち上げ機能が、次の立脚後期に必要な股関節伸展運動を引き出すための重要な要素となります。

これは倒立振り子運動の観点からも考えることができます。

この時期に重心が一番持ち上がることで位置エネルギーが高値となり、その後の立脚後期には重心が落ちて運動エネルギーに変換されることによって、大きなパワーを必要とせず、立脚後期への移行が可能となるとされています。

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しかし、片麻痺歩行においては立脚中期での重心持ち上げが行われず(位置エネルギーが低値)、その後の立脚後期での運動エネルギーの低下により、股関節伸展が生じにくいという力学的影響がみられます。

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そして、近年重要視されるのが、この立脚後期に伴う股関節屈筋群(腸腰筋)の伸張刺激が、次の遊脚期につながるCPG(Central-pattern-Generators)発火のトリガーだとされています1)。

これは筋が伸張されることで、伸張反射の機能であるⅠa反射による筋収縮を誘発するため、より少ない随意的な筋活動として遊脚動作が可能になるということです。

そして、もう一つ歩行時の足関節背屈角度増大に伴うTrailing Limb Angle(TLA:大転子から第5中足骨頭へのベクトルと垂直軸のなす角度)に依存した足関節底屈筋群の活動が重要視され、この立脚後期における股関節伸展を作ることが、歩行における前方推進力に大きく影響を及ぼすということが多数報告されています2)。

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しかし、実際の臨床場面での片麻痺患者様の歩行の多くがこの立脚中期での重心持ち上げが困難となり、股関節屈曲位への崩れを呈しやすく、そこから前方への重心落下が引き出せないことで、前方移動に対する加速度を体幹前要素で代償する必要がみられてきます。

なので、まずは歩行を考える際には、この立脚中期でみられるような重心持ち上げに必要な肢位が、静的立位の段階からでも可能かどうかを評価する必要性があります。

まとめ

歩行分析において、歩行周期における関連性をみることは非常に重要である。
その際に着目すべきポイントは、歩行における重心の位置関係を把握すること。
なぜならば、歩行という動作そのものが重心移動の連続動作となり、その連続運動の中で、次につながる歩行周期の関節角度や筋活動に影響を与えることが考えられるため。
しかし、実際の臨床場面では重心位置を正確に把握することには非常に難渋する。
その際に重要なことは、まずは重心の位置がどういう位置にあり、それを左右や前後に少し移動させた際に身体機能反応としてどういった現象が起こるのか(例えば、麻痺側下肢へ重心を移動した際に麻痺側方向へ崩れていくのか、膝などが屈曲し、重心の位置が下がってしまうのかといったまずは簡単な評価から)をみていくこと。

では、次回は実際に重心位置をどのように臨床的に判断し、それを評価や治療に活かしていくかをまとめていきたいと思います。

次の記事は以下より!

引用・参考文献

1)Clare C,et al:The influence of walking-aids on the plasticity of spinal inter neuronal networks, central-pattern-generators and the recovery of gait post-stroke. A literature review and scholarly discussion.J Bodyw Mov Ther 21(2):422-434,2017

2)HaoYuan H,et al:The relative contribution of ankle moment and trailing limb angle to propulsive force during gait.Human Movement Science 39:212-221,2015

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