見出し画像

方法論より大切なこと!~起立性低血圧の経験から~

はじめまして

本日も”臨床BATON”にお越しいただき、ありがとうございます。
6月15日(11日目)を担当します!大阪府在住作業療法士のふじ(藤井和正)です。

現在、脳外臨床研究会で大阪支部と脳卒中基礎セミナーのスタッフをしています。職場は回復期リハビリテーション病院で勤務しており、疾患は脳血管疾患、運動器疾患や時折、脊髄損傷などの患者様を担当する機会があります。


最近、後輩から治療方法(方法論)を教えて頂けませんか?と言われることがあります。
私は今まで、セミナーや文献から“方法論という答え”を教えてもらえるものだと思っていました。しかし、このようなセミナーや文献に対する思いが間違っていたのだと気づかされる機会があり、私自身の臨床に対する思考過程が変わりました。今回、起立性低血圧を伴った患者様との関わりの中で得た方法論より大切なことをお伝えします!

セミナーや文献についての考え

セミナー

新人の頃から私はセミナーや文献に“答え(方法論)”があると考えていました。そのため手技や方法論に関するセミナーに幾度も参加しました。しかし、臨床では全然効果が得られない事を多く経験しました。(いま考えると私の理解不足であったと反省します😢)
そんな中“明日の臨床から実践できる!”セミナーと出会いました。最初は“答え”を求めるために参加していましたが、継続してセミナーに参加しているうちに“臨床では方法論の効果判定ではなく、仮説・検証をいかに考察して実践していくことが重要である!!”ことに気づきました😊。
その気づきを基に臨床の中で、方法論から仮説・検証に思考過程が切り替わった体験をお伝えします!


思考過程が変わった体験

<症例紹介>
80歳代の男性。夫婦で旅行中に転落をして頸椎損傷(C3-C6レベル)を受傷。急性期病院から回復期病院へ転院して来ました。意識障害JCSⅠ群。フランケル分類C。経鼻管栄養の状態でサマリより意識障害を伴う重度の起立性低血圧があると情報がありました。
<希望>
奥様から「夫婦2人暮らしで老老介護になることは分かっていますが、旅行に誘った責任を感じています。どんな状態であっても家で世話をしてあげたいです!」と在宅希望がありました。


『思考:まずは疾患と症状を調べて方法論も調べてみよう!』

脊髄損傷とは・・・
主として脊柱に強い外力が加えられることにより脊椎を損壊し、脊髄に損傷をうける病態である。また、脊髄腫瘍やヘルニアなど内的原因によっても類似の障害が発生する。略して脊損(せきそん)とも呼ばれる。
脊髄を含む中枢神経系は末梢神経と異なり、一度損傷すると修復・再生されることは無い。現代の医学で、これを回復させる決定的治療法は未だ存在しない。     (引用:ウィキペディア)
脊髄損傷の起立性低血圧のメカニズム…
下肢や腹部内臓の血管収縮機構が障害されるため、急に臥位から座位あるいは立位をとると、血液は麻痺域に移動し停滞する。その結果、低血圧をきたし目眩などの貧血の症状が出る。
(引用:作業療法技術ガイド P509)
起立性低血圧の対処方法(方法論)…
血圧のチェックを行いながらギャッジアップ、ティルトテーブル、リクライニング式車椅子などの角度をあげ、座位へとつなげる。脳貧血症状が現れた場合には直ちに角度を戻す。血圧低値が持続する場合には下肢の挙上、弾性圧迫帯を適応する。
(引用:OT臨床ハンドブック P173)

包帯jpg


『思考:方法論を実践してみよう!』

<基本方針>
早期に離床を図り、意識障害の改善を図り、経口摂取の獲得を図る。方法として弾性包帯を使用してベッドup座位からリクライニング車椅子へ移行するとしていました。

<経過>
意識障害の改善に伴い嚥下機能の改善がみられ経口摂取が可能になりました。理学療法・作業療法では弾性包帯を使用してリクライング車椅子移乗より離床を図り、ティルトテーブルなど起立性低血圧の改善を図りましたが状態は変わらず、経口摂取はベッドup30度で約30分の間に徐々に低下します。STとしては経口摂取が出来る限りベッドを起こした状態で獲得させたい意向がありました。


『思考:起立性低血圧が改善しない…どうしよう?』
(今までは、対処方法を継続してリクライングからベッドup座位へ活動量を下げていました!)


  思考展開を仮説・検証へ!
『思考:なぜ効果が出せないのか考えてみよう!たしか、
ふくらはぎと血圧に関係性がなかったかな?調べてみよう!』

腓腹筋のポンプ作用の血圧の作用といえば…
ふくらはぎの筋肉は下半身の血液を上半身に循環させる役割を果たしているため、第2の心臓と呼ばれている。
(引用:ウィキペディア)

<仮説>
下腿三頭筋を賦活することで起立性低血圧を改善されることが出来ないか!そのために下腿三頭筋の状態を評価して介入を行うこととした。
<初期評価>
下腿三頭筋は触診でかなりの筋萎縮をしており、MAS(筋緊張) 0で筋収縮は辛うじて伸張反射に対して反応がある程度でした。
<治療>
下腿三頭筋を徒手で圧迫を行い筋緊張の改善を図りました。そこから伸張反射を利用して足関節底屈運動を行い随意性の改善を図りました。その後、弾性包帯を巻いてベッドup座位からリクライニング車椅子移乗を行い離床しました。
<最終評価>
少しずつではありますが下腿三頭筋のMAS 1で筋収縮は伸張反射による反応が軽度の改善が見られました。それに伴い起立性低血圧も少しずつ改善が見られました。
最終的にリクライニング車椅子で食事摂取が可能となり、奥様と自宅退院されました。

まとめ

臨床に“答え(方法論)”を求めて文献を探したり、セミナーに参加していました。臨床では、そこで得た方法論を実施することに固執していたため、方法論に対する効果判定だけをしていました。その経験の積み重ねは、臨床家として自信を得ることはなく常に臨床と向き合うのに不安な思いを抱いていました。
私は脳外臨床研究会のセミナーと出会い、臨床で大切なことは方法論ではなく、なぜこのような症状が出ているのか?どうしたら改善できるのか?を日々、仮説・検証をしていく事が重要であることを学ばせて頂きました。それによって臨床で思考過程を変えることができました。今ではこの仮説・検証の積み重ねが、臨床家として少しずつ自信が得られるようになりました!
後輩から治療方法の相談を受けた時は、方法論より仮説・検証をして行くことの方が大切だよ!と伝えています。


明日は、訪問看護ステーションで勤務されている理学療法士のワーリーさんから“訪問領域のリハビリテーションについて”です。私は訪問の経験がないので、概論や制度のことを知る機会をとても楽しみにしています。
ワーリーさん、臨床BATONどうぞ😊

皆様の貴重なお時間を頂き、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?