見出し画像

第3相(伸展相)の役割

 第3相は、肩甲骨外転/上方回旋、肩甲上腕関節外旋、肘関節最大伸展、前腕中間位保持が生じます。

第3相(伸展相)

〜観察ポイント〜
 
❶足底への重心移動
 
❷体幹/骨盤姿勢を維持しつつ軽度前傾
 
❸肩甲上腕リズムを保ちつつ肩甲骨の外
 転/上方回旋/前方突出を強める
 
❹肘最大伸展と前腕の中間位でのコント
 ロール
 
❺手掌面での正確な把持と5指の分離

 この相では、

上腕三頭筋」の活動

前腕筋群の適度な中間位を保つ為の
腕橈骨筋/円回内筋/円回外筋/伸筋群
」の活動

 「手関節の安定と手内在筋」の活動

 が重要となります。

①コップとの距離を肘関節で調節し、
②コップの形状に合わせて前腕/手関節/ 手指が  
 手の構えを作る

 この一連の動作を協調的に行う為に、上記の3つが必要になります。
 
 また、この相では、前方への質量中心が移動する為、足底への重心移動から骨盤/体幹の前傾に伴い、肩周囲筋の緊張が高まる事で、より遠位な範囲へのリーチが可能となります。
 脳卒中患者の場合、肩周囲筋の低緊張から、手指屈曲の放散反応や、体幹での距離の調節など、代償運動が見られます。
 なので、肘関節伸展と、手の構えを観察しつつ、肩甲骨や骨盤など、中枢の安定性を考慮した評価と治療が必要となります。

〜陥りやすい観察ポイント〜
・体幹のさらなる屈曲と前傾
・肩甲上腕リズムの欠如
・肩甲骨/体幹/骨盤/股関節での調節(代償)
・肘関節屈曲位での把持
・非麻痺側体幹側屈/上肢のpushing
・麻痺側股関節外転or内転にて足底が浮く

具体的な治療方法

リーチ(肘)の空間課題 : 五目板

❶ target(行為)
コップに対して手を伸ばせない
 
❷ 現象(動作分析)
骨盤/体幹での代償、肘関節屈曲の伸長反射
 
❸ 仮説(問題点)
・身体図式の逸脱
肘関節における手の身体からの距離の位置、運動の情報を知覚/認知困難。結果、肘関節の伸長反射の異常(屈曲)が出現し、骨盤、体幹で代償…と仮説。

❹ 検証(治療方法)
・体幹正中に合うように五目板を設置
・患者の手を他動的に動かし、空間に対する情 
 報の収集と分析を求める(閉眼)
→問いは「どこの関節が動いたか/手の位置はどこか/どこを基準に判断しているか」
→非麻痺側と比較(運動覚/位置覚/注意)
→麻痺側で再現(肘関節の運動覚を認識)

「まとめ」

・上腕三頭筋/前腕の中間位/手関節の安定と
 手内在筋の活動

・手の構えは、手関節だけでなく、comの
 移動と肘関節伸展に合わせた中枢の安定性

参考文献
1)脳卒中の動作分析
2)リハビリテーション臨床の為の脳科学

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?