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脳卒中後の回復の基本原則

難しい部分は置いていて、脳卒中後の回復には何が必要なのか、簡潔に列挙させて頂きます。
 
以下の原則を組み合わせることが、回復に向けた神経の可塑性を促通させることができます。

反復練習

再学習したいと思う行為を繰り返し練習することです。原則として、質が高く、集中することが望ましいです。

この質とは、「なんとかできそうなレベル」の運動が望ましく、これを徐々に難易度を上げていくことで目標の行為が可能になります。
 
脳内が変化する具体的な回数は?
「肘関節を伸ばす」で例えると、約2000回の繰り返しが、運動制御を担う脳の一部を変化させることが可能です。
 
ただ、肘のような単関節ならまだしも、行為のような複雑な運動を求めると、どのくらいの反復練習が必要か…
 
数万とまではいかなくても、数千回の反復が必要です。
 
考えて下さい。
子供の頃、自転車を乗れるようになる為にどれだけ繰り返し練習したか、思い出してみて下さい。
あの状況に近いことを、目指す為にはそれなりの反復的な練習が必要になります。
 
この練習は残念ながらセラピストによる介入ができません。なぜなら、セラピストが関わる時間だけでは、反復練習に必要な回数を満たすことができないからです。

課題指向型トレーニング

神経可塑性的変化は、再学習を試みている運動が、実際の生活動作と直結しているほど生じやすいです。

また、その課題が自身にとって意味のあること(重要性)でなければいけません。
より重要な課題であるほど、回復は促進されます。
 
たとえば、「物を掴めるようになりたい」では、より必要な意味のある課題を活用すれば、回復が促通されます。
もし、「ビールジョッキでビールが飲みたい」という目標があるのなら、実際にビールジョッキを持っことが望ましいです。しかし、ビールジョッキを握る能力がない場合はどうするか?
その場合は、課題の一部を練習に当てるだけでいいです。まずはテーブルの上に腕を乗せる、ビールジョッキに近づけるところから始めればいいのです。
 
部分的な課題ができるようになれば、確実に意味のある目標に近づくことができます。

集中型プラクタティス

ここは難しいですが、セラピストから受ける施術を5〜8時間と長い時間を、1週間〜数週間程度、続けて行う方法です.
 
現実的には、日本で最も店舗数の多い自費リハセンターでは、このような関わりも可能ですが、正直に言うとほぼ無いです。
しかし、この方法は極めて効果的であると研究報告されています。
 
他の研究者からはリハビリテーションの治療セッション分割するべきと唱える方もいます。午前2時間/午後2時間/夕方1時間などです。
 
つまり、スケジュール管理をした方が、神経可塑性的変化は起きやすい、ということです。

新奇性(チャレンジ)

研究者たちは「新奇性」という用語を使いますが、ここでは「チャレンジ」という用語の方が適切だと思います。
 
病前と比較して80%程度の運動の質を達成しているなら、他の新奇な運動にチャレンジした方が回復効果は高いです。

P.E.N.S.コンセプト

P.E.N.S.コンセプトとは、選択したトレーニングが果たして意味のあるトレーニングなのかを確かめる為に有効な手段の1つです。

Pは『患者への駆り立て/駆動』を意味します。

☑︎ 自身で正しい動作を行えるか?それとも指導者や介助者が必要なのか?
☑︎ 多くのトレーニングが必要なのか?複数を理解することが難しくないか?
☑︎ 日常の範囲内の中でできるのか?環境を整える必要があるのか?

回復に向けて選択したものが、自宅でも活用できる、再現することが容易で、コストが掛からないものかを理解する必要があります。
Eは『根拠に基づく』を意味します。

根拠が乏しい順に挙げます。
☑︎ 一度もテストがなされていないもの
☑︎ 小規模研究でのみテストされたもの
☑︎ 営利目的の人達によりテストされたもの
☑︎ 研究効果がほとんど得られていないもの
☑︎ 研究成果が得られているもの
 
行うトレーニングが根拠に基づ居ているのは、非常に重要です。

以下のウェブサイトにエビデンスのある情報が掲載されているので参考にして頂けると幸いです。
Nは『神経可塑性』を意味します。
 
片麻痺の回復には、神経可塑性は必須であり、それを促進する為には、上記で述べた反復訓練や、モチベーション(自分自身が治せる、諦めない気持ち)など、様々な要素を持ち合わせて、トレーニングを行わなければいけません。
Sは『シュミレーションの方向』を意味します。 

言い換えると「回復のためのプラン考えていくこと」です。
新しい医療技術は常に変化しています。その変化に合わせて効果的ではない治療は排除されている為、その時期に適したトレーニングを選択しなけれないけません。
また、回復段階において、身体機能も変化している為、どの時期に何を行うのかを決定し、定期的にそれが正しいのかを、計画的に行う必要があります。

ポジティブ情報とネガティブ情報

片麻痺の回復は大変な労力と献身を必要とする為、簡単なことではありません。
正直に言うと、これまで経験してきた人生において最も過酷なチャレンジかもしれません。

ただ、神経可塑性を用いればいくら発症から時間が経過していても改善する可能性は確実にあるのでポジティブな要素もあります。ただ、それは多大な労力を必要とするため、過酷と言えます。

補足

片麻痺は、片側のみが障害を受けている印象があると思いますが、違います。
研究では、脳卒中による脳へのダメージは、両側の手足すべてに影響を与えています。

まとめ

回復の基本原則は「反復練習/課題指向型トレーニング/スケジュール管理/目新しいものを選択」が大切です。
 
また、そのトレーニングに価値があるのかを決定するにはP.E.N.Sコンセプトを確認すると、より確実なものとなります。
 
本日もお疲れ様でした。

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