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痛みを読み解く:肩後方の痛みを考える「伸張ストレス」

お疲れ様です。はらリハです。

本日は…
肩後方の痛みの原因の1つである伸張ストレス』について説明します。

痛みを誘発する動き

肩関節後方の疼痛は、力学的ストレスから考えると「伸張ストレス摩擦ストレス」に大分できます。

伸張ストレスとは…
組織に伸張が加わった際に発生するストレス」のことです。

この伸張ストレスが加わっていることで痛みが生じる場合、どの運動方向で疼痛が出現するのか、読み解いていきましょう。

運動方向による伸張ストレス

肩関節後方部に伸張ストレスが加わる肩関節の運動は「屈曲/内旋/水平内転」であり、麻痺側上肢で袖を通す動作や、頭部の洗髪、テーブルを拭く、バスタオルを干すなど、外側から内側に動かす動作で疼痛が出現しやすいです。

一般的な動作では、投球動作を繰り返すことで、肩後方部に伸張ストレスと牽引ストレスが加わり、疼痛が増強します。

※ 牽引ストレス:接する表面から垂直に働く力で、押したり、引いたりしてある物体がお互いに離れる運動で生じるストレス

これらの伸張ストレスによって疼痛が生じる場合は「上腕三頭筋長頭」と「後方関節包」に問題が生じている、と仮説を立てて考えてみましょう。

疼痛原因と仮説:上腕三頭筋長頭/後方関節包

【上腕三頭筋について】
起始
長頭:関節下結節
外側頭:上腕骨後面橈骨神経溝の近位
内側頭:上腕骨後面橈骨神経溝の遠位
停止:尺骨肘頭、肘関節の後方関節包
作用:肘関節伸展、長頭飲み肩関節伸展

上腕三頭筋長頭は、関節下結節に起始し、上腕骨後面を走行しています。

アトラスより 上腕三頭筋長頭

そのため、肩関節挙上では「上腕骨頭を関節窩に引きつける作用」が生じます。

これは、上腕骨頭後方に位置する関節包も解剖学的には引きつけられる為、肩関節内旋と水平内転時には、後方関節包にも強い伸張ストレスが生じます。

※ 肩関節後下方部には侵害受容器が特に存在し疼痛を誘発しやすい部位

これらのストレスが続くと…

投球ストレス(上記で言う肩関節屈曲/内旋/内転)により、後方関節包と上腕三頭筋起始部に繰り返し牽引ストレスが加わることで「骨棘」が形成されると報告
Bennett
有痛性のものは骨棘に原因があるのではなく、疼痛の原因はそれに伴う関節内病変(後方関節唇損傷/腱板関節面断裂)によると報告
Ferrari

上記の問題が生じると報告があります。

※ 骨棘は有痛性と無痛性に分かれ、無痛症状であることが大部分を占めている

もう少し、関節包について深掘りしましょう。

関節包は、以下4つの筋肉に囲まれており、お互い強固に密着しています。

上方:棘上筋
前方:肩甲下筋
後上方:棘下筋
後下方:小円筋

これらの筋肉に囲まれて、お互いに強固に密着しています。

棘下筋斜走繊維と小円筋の関節包側の繊維群は、関節包の後下方部に直接付着しており、小円筋の関節包側の挟み込みを防止するとともに、挙上位における関節包の緊張を高め「骨頭を支持」しています。

そのため、小円筋の伸張性低下やスパズムが生じることで、小円筋の機能低下を引き起こすと肩関節外旋時における関節包の挟み込みを防止することが困難となり、インターナルインピンジメントを引き起こす要因になります。

※ スパズム:筋肉が意図せずに収縮すること
※ インターナルインピンジメント:肩関節が外転+最大外旋した時に大結節と後上方関節窩との間で、後上方関節唇と腱板関節面が衝突する病態のこと

また、偏った部分の拘縮は、上腕骨頭の骨頭変異(オブリゲートトランスレーション)を誘発すると考えられています。

これにより、関節周囲筋にスパズムを生じたり、周辺組織に侵害刺激を与え、疼痛の要因となることが非常に多いです。

疼痛誘発テスト

上腕三頭筋長頭の評価

上腕三頭筋長頭付着部と後方関節包で生じる疼痛を、理学療法評価にて厳密に区別することは困難ですが、上腕三頭筋長頭の影響を見る有用な検査法は杉本が報告している「TL(triceps long head)テスト」を用いると良いです。

【TL(triceps long head)テスト】
□ 検査肢位
肩関節水平内転位にて、肘関節伸展を抵抗下のもと自動運動させる
□ 操作
肩関節90°外転位にて水平屈曲させ、検者は肘関節伸展運動に抵抗を加える
□ 判定
肩関節後下方に疼痛が誘発されると陰性
□ 機能的意義
X線上、Bennett骨棘を認めない場合、上腕三頭筋長頭付着部障害の判別に有効である
上腕三頭筋長頭の疼痛誘発テスト

後方関節包の整形外科テスト

後関節包の疼痛を識別する整形外科テストは存在しないので、伸張テストにて後方関節包の伸張性低下の有無を識別しましょう。

【後方関節包の伸張テスト】
□ 検査肢位
背臥位にて肩関節は肩甲骨面上で外転45°とする
□ 操作
肩甲骨を固定しながら、肩関節内旋させる
□ 判定
内旋70°まで達しない場合、後方関節包の伸張性低下を疑う
拘縮が強く内旋中間位まで達しない場合はマイナスで表記する
※ 注意点
棘下筋斜走繊維の触診を同時に行い、筋の緊張の有無を確認する
筋短縮やスパズムが制限因子となっていないかを識別する
後方関節包の伸張テスト

触診と評価からわかる根本的な原因

Bennett損傷における疼痛誘発テストに加えて、上腕三頭筋長頭の圧痛や収縮時の痛み、伸張時の痛み、関節窩後下方の圧痛の確認が重要です。

疼痛誘発テストの結果、Benntt損傷を疑う場合、上腕三頭筋長頭、後方関節包への伸張ストレスが増大する原因として、以下の5つが問題と考えられます。

1)上腕三頭筋の伸張性低下

2)肩関節後方軟部組織の拘縮

3)腱板構成筋の筋力低下

4)肩甲胸郭関節の安定性低下

5)股関節柔軟性の低下

次回は一つずつ問題点を深掘りしていきます。

おわりに

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