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片麻痺は情報を構築できない

引き続き、『脳の可塑性』について投稿させて頂きます。

はじめに

脳の可塑性を利用するには、これまで述べてきたように、脳の自然発生的(自然回復)な修復過程に加えて、目的とする脳細胞間のシナプス結合が必要になります。

前回も記述した通り、神経の可塑性は単に感覚刺激や運動刺激を受動的に与えれば起きるものではなく、『大脳皮質や基底核などの調節系が関与し能動的に環境と相互作用する』ことで起きます。その相互作用には「情報化」という視点が重要になります。

情報とは、対象に対して意図(中枢神経系)した能動的(筋収縮)な直接的もしくは間接的接触(相互作用)によって構築されたものです。(わかりにくいですよね笑)
 
以下、説明します。

身体とは情報の受容表面である

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情報とは差異を生み出す差異である

私たちは、常に身体と環境との接触から始まり、何かをするときに、単に運動をするだけでなく、常に皮膚、関節、筋、神経系を介して知覚します。

つまり、何かをする(行為)とは、運動と知覚の連続であり、その連続から知覚したものを「情報」と呼びます。この情報を基に、行為は遂行されます。

ここで疑問になるのが、どうやってこの情報を構築するのか、です。そこには、情報を構築する為の手前、知覚はどうやって起きるのか考えてみましょう。

運動とは知覚探索である

人が物体の存在を知覚する為には「運動」が必要です。

ペルファッティは運動の本質について「知覚探索」と「認知」の2つで説明しています。

『運動は世界を認知し環境世界と相互作用を築くためのストラテジーである。このストラテジーがどれだけ洗練されたものであるかは、運動を行う主体の中枢神経系のもつ組織化能力に関わってくる』

ここでは、運動を単なる関節運動、筋収縮の作用とは捉えず、運動を「知覚探索」と解釈しています。

たとえば、手でリンゴ持つことを想像してください。持った時、軽いや重いなどの重さ、つるつるなどの質感、大きい小さいなどの形など、意識を向ければ複数ほ知覚が想起できます。
その時に、その情報(大きさや触り心地)を知る為には持ち方や触り方が変わますよね?

このように、客観的に捉えることが知覚です。
↪︎ここでは、身体(運動)と物体(リンゴ)との相互作用が複数の知覚を生み出しています。
 
もし、運動異常があればリンゴの物体としての情報は知覚することできません。
なぜなら、リンゴの重さも形も、手の中で知覚できなければ、そこに何も存在していないのと同じことだからです。

また、「認知」という言葉も使っていますが、それは知覚に何らかの意味的な解釈を与えることです。たとえば、目の前にあるリンゴとの「距離」は知覚ですが、それを「リンゴは手を伸ばすと取れる場所にある」のように、自分の行為と関連づけれるのが認知です。

情報の構築=機能環

例をあげて考えてみましょう。
想像してください。目の前にお味噌汁があります。
持つためにはどんな情報が必要でしょうか??

以下にまとめてみました。

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機能環の視点から考えると、
まず、お椀(対象)を視覚的に捉え、お味噌汁を飲む(中枢神経系)という行為を選択し、実際にリーチや把持などの運動(筋収縮)がおき、手(身体)とお椀(対象)との相互作用により、予測より重たく表面が滑るなどの(情報)が構築され、お椀を落とさないようにする(中枢神経系)ために、さらに指を屈曲させ(筋収縮)、そのちから加減が適切かどうかを情報として構築し、問題ないかどうかを認知する。この連続性があって初めて行為が遂行されます。

この身体と環境(対象)との相互作用を『機能環』といいます。

片麻痺では情報を構築できなくなる

片麻痺の方は、この「情報化」ができない事で行為が困難になります。

つまり、運動麻痺や感覚障害を呈した患者様は、動かないから動けないのではなく、情報を構築する能力が欠如している為、動かすことが出来ないと考えられます。

では、どうすれば片麻痺の方が情報の構築が出来るようになるのか…
どうやって脳の可塑性を引き出していくのか…

本日はここまで。
次回は、情報を構築=回復のメカニズムについて投稿させて頂きます。

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