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扁桃周囲炎

帰省した日、喉がヒリヒリした。
子ども頃、お世話になった病院に行って、扁桃周囲炎と診断された。

相変わらず薄暗い診察室、何千人と座ったであろう茶色の診察台。

消毒液だろうか、香水だろうか。すん、と香りがした。

舌圧子を使ってひりつく喉を診られる間、口から鼻へ、その香りが抜けていた。

「子供は何人?二人目か?はは。」ペタり。お腹を触られた。
びっくりした。私の扱いは小学生のままで止まっているらしい。
対面すると、ぽっこりした先生のお腹が私の膝にあたった。
「先生は何ヶ月ですか」って言えば良かった。

「さおりちゃん、子どもがいるの知らんかったあ。久しぶりだね。」
「授乳中かあ、薬がめんどくさいなあ、」
ぶつぶつ言う先生を見ながら、私は子どもの頃を思い出していた。


「おお、かわいいね。センスがいい」
スマホケース褒められた。
お気に入りだったから嬉しかった。

「うん、これは母乳に出ない薬だからね。疲れないようにしてね。」
先生は笑って言った。

気安くお腹を触られてモヤモヤする気持ちと
診察室で感じる幼少期の懐かしさと
スマホケースを褒められた嬉しさと
変わらぬ先生の笑顔と。

不思議な時間だった。

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