超短編小説 043
『笑顔』
「僕やっぱり笑えないよ。だって死んじゃうかもしれないんだよ。
みんな大丈夫だっていうけれど。やっぱり怖い。泣いちゃうと思う。」
「なにも怖がることは無いよ。安心して身を任せればいいんだよ。緊張しないで。ひとりじゃないからね。」
「でも、今までのみんなは、ちゃんと笑うことが出来たの?」
「いや。ほとんどが泣いている。」
「ほらー!やっぱりみんな泣いてるじゃん。怖くて今からどきどきしてきたよ。」
「大丈夫。苦しいのは、最初だけだから。がんばってきなさい。ポン!」
僕はおしりをポンっとたたかれた。しかも、頭をがっしとつかまれて引っ張り出された。怖くて、驚いて、やっぱり泣いちゃった。笑うことは出来なかった。
でも、泣いている僕を見てみんなが笑っていた。心からの嬉しそうな笑顔が、生まれたばかりの僕を囲んでくれた。お母さんの胸に抱かれて僕はようやく安心できたんだ。
笑顔になれないで、泣いちゃったけれど、笑顔っていいなぁって思ったよ。
《最後まで読んで下さり有難うございます。》
僕の行動原理はネガティブなものが多く、だからアウトプットする物も暗いものが多いいです。それでも「いいね」やコメントを頂けるだけで幸せです。力になります。本当に有難うございます。