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『この悲しみは何色だろうか』

『この悲しみは何色だろうか』【超短編小説 067】

悲しみや苦しみは誰にでもあるもの
重要なことはその苦しみや悲しみをどうやって乗り越えて、前を向いていくかだと思う。

わたしの場合は24色の色鉛筆。

一番初めは小学校の頃でした。クラスの全員から無視された。悲しかったのはそれまで仲良くしていた友達まで、そのいじめに参加していたこと。クラス全員から無視されても、一人でも味方がいてくれれば、やり過ごせたと思う。

そうなった原因や思い当たる節があれば、親や先生に相談していたかもしれない。しかし唐突に始まった事に訳もわからず戸惑い、誰にも相談はできなかった。

2週間もするとそのストレスは溜まり、朝、腹痛になり学校を休む事になった。休む旨を親から学校に伝えてもらった時はホッとしたのだが、布団で休んだり、家で本を読んだり、していると無性に悲しくなって、胸が苦しくなって、涙した。

学校は嫌いでは無かった。ついこの間まで楽しく過ごしていた。なのに今は怖い。しかしこのまま家に居ることはもっと怖かった。一人でいると悔しさや情けなさが倍増するのだ、”このまま一人でいたら押し潰されてしまう“それが怖かった。

涙を流しながら、悲しみのはけ口を探した。勉強机のイスの背に掛けてあるランドセルを持ち上げ真下に思いっきり投げつけた。ランドセルは1度弾んだ後、ロックが外れて冠せが開いた。中の物が全て散らばった。

教科書、ノート、筆箱、そして24色の色鉛筆が出てきた。わたしは24色の色鉛筆から青の色鉛筆を取り出して、両手に持ち、真っ二つに折った。両手に折れた色鉛筆を握り締め、散乱したランドセルの中身を眺めながら暫くぼうっとしていた。

青の色鉛筆には思い出があった。わたしは青が好きだった。そして一番仲の良かった友達も青が好きだった。24色の中で一番背が低い青の色鉛筆をお互い見せ合ってどちらの色鉛筆が早く使い終わるか競争をしていた。その友達がイジメに参加した。

真っ二つに折れた青の色鉛筆をごみ箱に放り込んだ。その瞬間全てがどうでも良くなった。大切な物も思い出も、いざとなれば、へし折って捨てて仕舞えばいいと思えた。気が楽になった。次の日から普段通り学校に行った。唐突に発生した無視行為は、夏休み明けには自然に消滅していて、“友達だった”友達も普通に話しかけてきた。

わたしの人生で、色鉛筆をへし折ることで乗り越えた苦しみと悲しみは、この他に2度ある。祖母が亡くなった時と初めての失恋。24色の色鉛筆のケースの中には、21本しか入っていない。

へし折る色鉛筆の色は選ぶのでは無く、気が収まると手に持っている色鉛筆の色に気がつく。一番初めの青の色鉛筆の時のように、色には何かしらの意味があって無意識の選定であるが、的を得ていた。

わたしは、さっきまでどうしようもない苦しみと悲しみの最中にいた。目の前には24色の色鉛筆のケースが置いてあり、両手には折れた色鉛筆の感触。

さて、この悲しみは何色だろうか。

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