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「山際にふれる 小林花子展」の感想

 長岡市栃尾美術館で開催されている「山際にふれる 小林花子展」を観てきました。小林花子さんの作品は、長岡のギャラリー「旅のそらや」にて開催されていた「2019 NEW YEAR EXHIBITION」で拝見しており、なんだか沁みた作品だったので展示を楽しみにしていました。

 小林花子は「木」という素材を軸に、自分の原風景となる「街」のかたちを、古よりの時間と物語を湛える「森」という存在の中に見ようと制作を続けてきました。
新潟に移住した2005年以降は制作環境が大きく変化し、古民家との出会いによって生まれた、古材や絹などを素材とした作品展開を含め原風景を軸としてきたその立ち位置にも緩やかに変化を見せながら、制作を重ねています。
栃尾美術館では、小林が活動を始めてから現在までの作品の流れを、2008年までの作品群と新潟に移住し、作品に変化が現れた2009年から現在までの作品に分けて展示構成します。

(栃尾市美術館より引用)

 説明にもある通り、古材と絹を用いた作品の展示です。通常の展示室だけではなく、エントランス、通路、屋外にも作品があり、「展示を見る」というより「展示に迷い込んだ」と言ったほうが良いような設えでした。
 当日は小林花子さんによる作品制作についてのギャラリートークが開催されていました。ご実家の伊豆大島は生活していた都内とは正反対であったとおっしゃっていました。家やアパートなどの住宅地は四角形でその形に人の営みを感じていたとも。古材には人の営みが染みついている、それを表現しているのかなと感じました。

 この作品は鋸で地道に切っていったそうです。
 自由な曲線そのままの形を活かした古材に直線的な造形を施していく。切る。しるしをつける。穿つ。家を、営みを作るには、良い悪いは別として、そういった破壊的な行為を経るのだなと感じました。

 天井から伸びた絹糸はヒバリをイメージしているとのこと。
 繁殖期にヒバリは自分の縄張りを主張するために囀りながら高く舞い上がる「揚げ雲雀」という行動をとります。「ここには自分たちの営みがあるぞ」と宣言しているのかなと想像します。

 「木々の詩」

 その裏、虫食いの穴に糸を通しているのだとか。虫食いの穴も、虫にとっては住まいを、営みを作る行為なのです。素材と営みは地続きなのだなと、断絶されているわけではないのだなと感じました。

 糸の原料である繭と角真綿

繭から角真綿を作る手順
一般財団法人 日本真綿協会
http://mawata.or.jp/world/howtomake/square

 この手順をみていると、「繭」と言う蚕の蛹の生活の場から真綿が、そして絹糸ができているのだなとわかります。

「花の頃にー出会いの場所」

 小林さんの叔母の形見である帯をほどきその糸を梁に埋めてあります。
 いままでは素材から制作していたのは作品の中をさ迷い歩いて観てきました。けれどもこの作品は「既に在るモノ」を解きほぐして制作していました。小林さんは、「この作品によって遠かった存在の叔母と通じ合えた」という事を言っておりました。
 営みは続いていくのだなぁ。


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