裏社会ルポライターが訴える「高次脳機能障害」の苦悩 「人が早く歩いているのすら怖いんです」〈dot.〉
今日はルポライターの鈴木大介さんの記事を読んで感じたことを書きます。
鈴木大介さんは、「脳が壊れた」などでも高次脳機能障害についてかなり分かりやすく、ユーモアを加えながら説明されています。
作業療法士である私にとっては非常に興味深く、とても共感できることの多い内容となっています。
そんな鈴木大介さんの記事があったので、少し紹介させていただきます。
◯ 高次脳機能障害について
「簡単に言うと、日常生活の『当たり前』が全滅する障害です。『当たり前』とは、病前は無意識に行っていたこと。何も考えなくても脳が自動的に情報を処理してくれて、やれていたこと、それができなくなるということです」
と非常に分かりやすい説明をされています。
本当にこの通りなのです。
今までの当たり前が急に当たり前じゃなくなる。
無意識で行っていたものが、意識ないとできなくなる。
それが高次脳機能障害です。
しかし、そのことに自分では気が付きにくい。(病識の低下と言います)
それもまた高次脳機能障害者の支援を難しくする要因の一つです。
さらに、
▽人ごみを歩く(上手に人を避けられない)
▽自然な会話をする(相手の会話のスピードがとても速く感じて話についていけない)
▽スケジュールを立てたり組み替える
▽多くの物の中から特定の物を探す(テレビのリモコンからあるボタンを探す作業など)
▽気持ちを平静に保つ
と鈴木大介さん自身が感じられた症状を語られています。
◯ 情報処理地獄
この言葉は非常に印象的でした。
脳損傷が起きると、ほとんどの人がこの情報処理地獄になると言っても過言ではありません。
脳の処理は非常に複雑で、高度な作業です。
それが脳損傷によってダメージが起きると、システマチックに動いていた部分は急に作動しなくなる。
結果として、処理が遅れて、判断が遅れて、脳も非常に疲れる。
「起きているだけで、脳があらゆる情報を全力全開で処理し続けている状態なんです」
日々患者様と関わっていると、本当にその通りなんだと思います。
◯ 見えない障害
見た目には、麻痺もなくて歩けますし、生活動作も問題ありません。
だからこそ、理解されにくい障害でもあります。
脳の処理の過程など誰にも分かりません。
ましてや自分でも気づかないことのある障害ですから、他人には分かりません。
だからこそ困るのです。
◯ 就労場面では努力が足りないと思われる
情報処理が追いつかない、脳が疲れている、混乱している。
このような状態のために、作業が止まってしまったり遅れてしまう。
それなのに、外から見たら怠けている。
やる気が足りない。などと思われてしまう。
彼らは必死にやっているんですよ。
彼らの状態をしっかり理解しようともせずに、「たるんでいる」などと解釈しないでほしいのです。
症状の理解は、私たち作業療法士もかなり気を遣って慎重に会社の方に伝えていきます。誤解されてはいけませんからね。
◯ 必要なこと
「当事者が願うのは、機能回復ではなく、日常の生活で困らなくなることです。頑張っても病前の自分には戻れないし、戻ろうとすると、とても辛くなります。生活で困らないためになによりも必要なことは、周りの方のご理解とご協力です。高次脳機能障害は、一人では生きていけない障害なのです」
本当にその通りだと感じました。
リハビリでも一定の回復は認めますが、それでも長く険しい道のりです。
高次脳機脳障害は、年単位でゆっくりと改善、、いや新しい環境に適応していくといった理解の方が正しいかもしれません。
そのためには、当然家族のサポートや、職場の理解がなければいけません。
まだまだ高次脳機能障害は理解が進んでいない分野だと感じています。
そして、作業療法士として、障害の理解をもっと多くの人に広めていく必要があると思っています。
鈴木さんのように実体験が聴けることは非常に貴重な体験です。
支援者では感じとることのできない部分も、分かりやすく書いてくださっているし、私も非常に勉強させていただきました。
明日からの臨床も頑張りたいと思います。
最後に記事を貼っておきます。
ご興味のある方は見てみてください。
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