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「ホリエモン」堀江貴文現象とはなんだったのか、なんなのか

現在目下炎上中の堀江貴文こと「ホリエモン」とはなんなのか。人気者の有名人なのか、元起業家のおじさんなのか、前科一犯の犯罪者なのか、日本のインターネッツが生み出した「怪物」なのか……。

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ある意味ですべてがそれぞれ少しずつ正しさのスペクトラムを持ち、見る人の求める像を結んで七色以上に輝きを放ち続ける、日本においてほかにないエンターティナー、それこそが堀江貴文ことホリエモンであります。その来歴を少し掘り下げて見ましょう。

まず彼は東大起業家として「金八先生」のような奇っ怪な風貌で流星のごとく現れ、瞬く間にメディアジャックしました。彼の指揮する企業「オンザエッヂ」はその後有名な「ライブドア」と名称を変えて、日本史に燦然と輝く一つのかがり火として歴史に確かに爪痕を残すまでになります。


ピーク時にライブドアが打ち立てた時価総額は6000億円とも言われていますが、オンザエッヂの祖業は当時まだ珍しかったウェブサイトの制作請負です。その後無料プロバイダーやインターネット広告、インターネットデータセンター事業などに手を広げますが、その間に東証マザーズに株式上場を成功させます。

その後彼は注目を集めることで株価をつり上げ、株式交換で中小企業を買収し、それでまた期待が高まり株価があがり、さらに価値の高まった自社株をもって株式交換で中小企業を買収する……という今でも珍しくない「ハコ企業」のようなことを積極的に行います。これ自体は違法性のないものです。また、彼は株の分割を積極的に行います。これは取引あたりの最低金額が少なくなり購入できる人の裾野が広がり、やはり株価上昇に寄与します。最近でも米国企業でよく行われる手法です。

1999年11月 フープス JV 無料Webページ
2001年9月 フープス 売却 無料Webページ
2001年12月 パイナップルサーバーサービス 買収 サイト制作
2002年3月 アットサーバー 買収 レンタルサーバー
2002年6月 アスキーイーシー 買収 EC
2002年6月 スプートニク 買収 ASP
2002年7月 AD4Portal 買収
2002年8月 ビットキャット 買収 ISP
2002年8月 ビットキャットコミュニケーションズ 買収 ISP
2002年9月 プロジーグループ 買収 ソフトウェア
2002年11月 ライブドア 買収 ISP 1.2
2003年3月 ビットキャッシュ 買収 決済 0.14
2003年3月 イーエックスマーケティング JV CRM
2003年5月 バカボンド 買収 リサーチ
2003年10月 イーバンク銀行 資本参加 銀行
2004年3月 クラサワコミュニケーションズ 買収 携帯販売店 8
2004年3月 ウェブキャッシング・ドットコム 買収 金融仲介
2004年3月 トライン 買収 人材派遣
2004年3月 バリュークリックジャパン 買収 広告 25.42
2004年3月 日本グローバル証券 買収 証券 39.88
2004年3月 ABS 買収 貸金
2004年5月 ターボリナックス 買収 OS 13.5
2004年6月 テントラー・コミュニケーションズ 買収 携帯販売店 0.6
2004年6月 Mail Creations 買収 広告 6.3
2004年7月 「JBBS@したらば」 買収 掲示板 1
2004年7月 ジェイ・リスティング 買収 広告 3.5
2004年8月 アルチェ 買収 メディア 1.63
2004年9月 セッション 買収 画像変換
2004年9月 「AAA!CAFE」 買収 掲示板
2004年9月 サイバーアソシエイツ 買収 メールシステム
2004年9月 キューズ・ネット 買収 結婚仲介
2004年10月 Myrice 買収 広告
2004年10月 イーバンク銀行 売却 銀行
2004年10月 ロイヤル信販 買収 貸金
2004年11月 弥生 買収 会計 130
2004年12月 ワイワイシー 買収
2005年1月 エイシス 買収
2005年2月 ミクプランニング 買収 マーケティング 15.67
2005年2月 ベストリザーブ 買収 旅行予約
2005年2月 ライフドアパブリッシング JV 出版
2005年3月 西京ライブドア銀行 JV 銀行
2005年5月 ライブドアパートナーズ 売却 670
2005年6月 日商岩井フューチャーズ 買収 先物 20
2005年7月 ビュー・ジャパン 買収
2005年7月 ネクストステップ 買収
2005年7月 ワークアウト債権回収 買収 債権回収
2005年9月 ジャック・ホールディングス 買収 自動車買取
2005年9月 ターボナリックス IPO サーバー・クライアントOS
2005年10月 ClickDiario 買収 メディア 10.5
2005年10月 セシール 買収 カタログ通販 103.82
2005年11月 Innovation Interactive 買収 広告
2005年11月 360i 買収
2005年11月 eXact Advertising 買収
2005年11月 Exact Serch 買収
2005年12月 メデイアエクスチェンジ 買収
2005年12月 ダイナシティ 資本参加 不動産
2005年12月 ゼロ・ゼウス 買収 決済 109.93
2006年1月 ジャック・フランチャイズ・ステーション 売却
2006年3月 ライブドアドリームテクノロジー 売却


「東大生ベンチャー企業」という看板による高い期待と、上がり続けるから上がる株価、繰り返される買収で祖業から本業はすぐに取って代わられイーファイナンスによる証券関連事業がキャッシュカウ事業となりました。ですから彼は起業家ではなく「買収家」なのです。起業した事業そのものは安定しているが低調で、膨らみきった期待によって買収された事業の中にいくつもの優良事業があったのであの急成長が裏付けられました。最近もっと進んだ似たような事例がアメリカで起こっており、さすがにあきれ果てるばかりです。

頂点に立った堀江貴文は村上世彰からフジテレビ・ニッポン放送の資本関係の異常性を教えてもらい、逆転している時価総額を逆用してフジテレビを買収することができると判断、実行に移します(政治の介入のせいで失敗)。野球球団の再編が報道されると楽天市場とライブドアで新規参入争いを演じ、またひとつメディアがライブドアにぐびったけになりました(ナベツネに嫌われたなどの憶測があるがとにかく楽天に競り負ける)。

そしてとうとう、「ヒルズ族」ライブドアに雷が落ち塔が崩壊する事件が起きます。証券取引法等違反による堀江貴文への逮捕状請求、ライブドアへの強制捜査です。これは買収先企業がライブドア株式での買収代金の受け取りを時価変動のリスクから拒否し、現金の手持ちが少なかったライブドア側が一度自己株を受け取らせ、ライブドア側の用意した会社で買い取り、その新株をその後市場で消化するスキームをつくったことでした。詳しくはWikipediaから引用する

2003年7月、ライブドアは携帯電話関連事業を行っている、クラサワコミュニケーションズの買収を検討し、2003年8月、資産査定等をおこなった上で8億円で買収することに合意したが、クラサワコミュニケーションズの株主が現金による買収を条件とした。
しかし、ライブドアは現金の支出をできるだけ避けたいとの意向から、ライブドアファイナンスがM&Aチャレンジャー1号投資事業組合に8億円の出資をおこない、M&Aチャレンジャー1号投資事業組合がクラサワコミュニケーションズの株主から株式を買取りクラサワコミュニケーションズの株主となった。M&Aチャレンジャー1号投資事業組合とライブドアとの間で株式交換をおこなうことでクラサワコミュニケーションズを子会社化する方法が考案された。
この株式交換により、M&Aチャレンジャー1号投資事業組合に対しライブドア株式913,407株が交付された。 M&Aチャレンジャー1号投資事業組合は株式交換で取得したライブドア株式をVLMA2号投資事業組合に現物出資し、VLMA2号投資事業組合が市場でライブドア株式413,407株を売却した。
ウェブキャッシング・ドットコム
ウェブキャッシング・ドットコムの買収に際しても同社の株主が現金による買収を希望したため、クラサワコミュニケーションズと同様の方法で買収がおこなわれた。M&Aチャレンジャー1号投資事業組合に対しライブドア株式480,771株が交付され、VLMA2号投資事業組合に現物出資された後にVLMA2号投資事業組合は市場で480,771株を売却している。
株式売却の流れ
M&Aチャレンジャー1号投資事業組合がクラサワコミュニケーションズとウェブキャッシング・ドットコムの買収に関わり取得したライブドア株式のうち、VLMA2号投資事業組合が894,178株を43億3,947万6,888円で売却した。
また、M&Aチャレンジャー1号投資事業組合が当時のライブドア代表取締役社長堀江貴文からライブドア株式5,000株の貸株を受け、VLMA1号投資事業組合に対し現物出資をおこない、VLMA1号投資事業組合が市場で売却し、M&Aチャレンジャー1号投資事業組合がクラサワコミュニケーションズとウェッブキャッシング・ドットコムの株式交換でライブドアより交付を受けた後に堀江に返却している。これら一連の行為で13億3,600万6,524円分の株式を売却している。これら取引から原資を引いた37億6,699万6,000円を売上として計上している。

これらは経済実態がライブドア側の自己株の取引であるため、これらを売上高や有価証券売却益に計上するのは会計基準から認められず、その他資本剰余金の増減により有価証券報告書に記載し計上するべきものだった。これを誤って売上高および当期純利益に算入したために「意図的に当期純利益を水増しし、株価のつり上げを図った」と検察は判断し、有価証券報告書虚偽記載容疑としての立件が実行に移された。個人的にはこれは複雑なスキームによる誤解なので、逮捕する必要があったかどうか微妙だと思われる、どちらかと言えば担当会計士や税理士の責任問題であり、そちらに損害賠償請求をするのが筋論ではないかという気もしている。

また、堀江貴文には偽計及び風説の流布容疑による立件も実行された。架空売上の経常容疑であったが、日本産業史の中でもっとひどい不正会計はあったが堀江貴文ほど厳しく立件されたものはいない。検察はこの一連の立件の前から強くライブドアに興味をもって望んでいたことが複数のジャーナリストから報じられていて、これらがある種の「国策捜査」として強引に立件されたと論じる向きもある。

とにかくこれで堀江貴文は逮捕される。しばらくかかる法廷闘争もむなしく有罪は確定し、堀江貴文は牢屋の中の住人となってしまう。刑務所からでも堀江貴文スタッフの献身により情報発信は活発に行われており、メールマガジンの読者との双方向性もなんとか確保され、刑務所の内情を赤裸々に綴ったメルマガの内容はその後出版され大いに売れることになる。

しかし、堀江貴文にとってライブドアから放逐され、前科一犯となったことは相当なショックであったことは明白で、仮釈放されて晴れて自由の身となってから彼はとても変わってしまった。

釈放後に起業したSNSサービスの「755」は潤沢な広告費によるポイントサイトへのダウンロードすると数百円分のポイントがもらえる施策もむなしく赤字を垂れ流す始末、「テリヤキ」も数年以上何のキャンペーンも行われず完全に過疎ってしまっている(一応最新OSへのアップデートだけは行われている)。また、ロケット打ち上げ事業はどちらかというとロマンによって運営されているためか、先の新型コロナによる被害を受けあの堀江貴文氏が損害をクラウドファンディングによって補填せんとするところまでいった。これには筆者は驚いた。有料サロンと有料メールマガジンによって数億円の売上高がありキャッシュフローは潤沢であろう堀江貴文氏は金持ちなのか金がないのか、そういえば和牛マフィアという堀江貴文プロデュースの外食店も新型コロナの煽りを食らって4分の1に規模を縮小して頑張っていくそうだ。頑張ってほしい。

そんな様々なことがうまくいかないことの鬱憤晴らしだろうか、今回の餃子店舗への「店舗名がわかるように書くクレーム」によって信者が特攻して店舗を閉店まで追い込んでしまうことになる。ホリエモンの囲いはSNSで「堀江さんは悪くないっすよ!!」と励ましのメッセージ発信に忙しいが、そもそも堀江貴文がそれだけ日常生活で怒りっぽく、またかつて攻撃した「老害側」になってしまっている根本原因を取り除かないことには第二の餃子店、第三の餃子店が生まれてしまうだろう。離婚したことは全く堪えてない、前科一犯であるせいで家が借りられずホテル住まいであることも全く問題ないというのなら、ホリエモンの心に去来するさみしさ、怒りはなんだろうか、筆者も「水着アイドルとの撮影イベント」にまで出なければならない現状を考えると、堀江貴文の現状が無念で無念でなりません……。

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