兄が離婚したらしい。数年前に②

当時、2歳目前だった長男がさらによく喋るようになった。

甥がふと私に向かって

“長男ちゃん、もうこんなに話せるんだね。俺の弟はまだ全然話せないよ。”

と言った。


、、、


弟?!
(甥っ子は一人っ子という認識だった。)


私は内心[彼には弟がいるらしい]という事実に驚きながら


“へぇ〜そうなんだぁ。言葉の発達の早さはその子によるからねぇ”


と受け流した。


兄は離婚して1,2年くらいは経つが、
その後別れたお相手が結婚したとか、ましてや子供を産んだとかということは聞いていない。

というかそんなことを聞く術もなかった。


私が受け流していると、
近くにいた母が甥に向かって


“、、、あんた、弟いるの?”


と、率直に質問をしている。


さすがデリカシーのない母。  


忖度しない。



母も初耳だったらしい。



甥は
“そう。言っていいかわかんないけど、弟いるよー!言っていいかわかんないけどー!”



と、大人に気を遣ってるのか遣ってないのかわからない表現で説明する。



甥からは弟が好きな気持ちが溢れているような雰囲気があり、そこだけが救いだった。


同じ空間にいた兄は
仕方なくふふっと笑い、
いつもの低い声でボソッと”そうらしいんだよね”と言った。


母は”あんたの弟は何歳なの?”と質問し、甥は答え、


“パパはどんな人なの?”と質問し、
甥は答える。


質問するのもほどほどにしなよ、と私は内心思う。

どうやら私の息子と甥の弟はさほど歳は変わらず、


新しいパパはどうも乱暴でお金にだらしない人で、甥曰く”ダメだね”とのこと。

母が私に
“リリーも質問して”
と私に催促する。


私は、もうそっとしておいてあげてほしいし、わたしのこともそっとしておいてほしいと思った。

私は悲しい顔をしてしまっているに違いない。

しんどい。


しんどすぎる。


私と兄は幸せな家庭で育ったのに、


それを大好きな甥に提供できなかった悲しさか、


そんな大事なことを面と向かって言い出せない兄の弱さに対してか、


甥が懐いてもいないダメ男と一緒に住まなければならないことに対してなのか


出会った頃から終始勝手すぎる元嫁に対する呆れか

そんな女性に振り回される兄に対してか


なにか全ての感情のピースがうまくハマらず、迂闊にも泣いてしまいそうだった。


どう肯定的に考えたところで


兄が理不尽な離婚を切り出されたときにはすでに
お相手の方は妊っていたようだった。

数年越しに、離婚理由がわかった。


、、、つづく。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?