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#24 『ずっと徒歩 200km』(熊本〜鹿児島)

話し相手JAPAN TOURとは


『鹿児島中央公園』

「最南端は佐多岬よ、ここからだと、まだ60キロあるよ」
「・・・」

おじさんに罪はない。そりゃそうだ、親切に教えてくれたんやと思う。

熊本でも『話し相手』をやろうと思ってたのですが、7月4日に、木村さんの流れるようなネタ、というか、流してしまいかねないネタを聞きながら長崎から船をハシゴして熊本市内に到着、その日の夜は、誰もいないバス停のベンチで野宿をしました。
で、翌朝、自分が寝てるベンチの横に出勤する人たちがバスを待って並んでる時に目が覚めて、ものすごい恥ずかしかったのを覚えてます。

その日の昼過ぎに『鹿児島200km』と書かれた看板を見つけて、歩くには途方も無い距離なのに、なんか、この頃にはウォーキング・ハイ?みたいになってて、無性に歩きたくなりました。

それから丸4日間、あるき続けて鹿児島に到着したのは7月9日の日曜日でした。

熊本のバス停で起きて、そこから『鹿児島200km』の看板が見えて、歩き始めてから2日後に阿久根の海岸沿いにある『道の駅』で野宿した。
ちょうど七夕だったが、あまりの星の多さに天の川がどれか分からず、織姫も彦星も川に流されたような感じになってた。

年に1回しか会えないとは言っても、何億年も前からある星なわけで、という事は、もぉ何億回も会ってるから

「オリちゃん、今年どぉする?」
「ヒッキー、ごめん。今年はおばあちゃん還暦なんで、親戚で集まって川下りするから、ちょっと会われへんかも」
「いやいや、ちょうど良かったわ、オレも久しぶりに同星会に行こかなと思ってて」

みたいな会話が、あったりもするんやろうな。

7月8日には、川内と書いてセンダイと読む町にいた。
たまたま休んでた駅前のベンチで、タクシーの運転手さんと地元の人達3人で話をしてるのを5分程聞いてて、分かった言葉が『ガソリン』と『清原』と『ビール』の3つだけだった。

鹿児島弁って、江戸時代に『幕府からのスパイに言葉を理解させないために作られた言語』という説とか『第二次世界大戦中に重大機密事項をやり取りするための暗号』という説があって、たしかにオレがスパイだったら速攻で諦めるなぁと。

あれ?ちょっと待てよ・・・鹿児島で『話し相手』って出来るのか?そんな不安が頭をよぎった。そして7月9日鹿児島中央駅に到着。

結局『歩くだけ』しかしてない5日間(実質丸4日間)で、熊本から200km先の鹿児島に辿り着いて、ベンチに座ってたら、オジサンが話しかけてきた

「荷物いっぱいだね。どっから来たの?」
「あ、東京からです」
「東京からだと、どれくらいかかるの?」

駅にいたので、オジサンは深夜列車のイメージで聞いたのだろう。そこへ、まさかの

「3ヶ月半ぐらいですね」
「あれ?なに、自転車なの?」
「あ、いえ、歩きです」
「へぇ、歩いて・・・えッ歩いたの?」

二度見ならぬ二度聞き的な反応。で、まぁ、そんな流れで

「さっき、ちょうど、本州の最南端の鹿児島に到着したんで、なんか達成感と言うか・・・」
「あれだよ、最南端は佐多岬よ、ここからだと、まだ60キロあるよ」
「・・・」

そんなん言うなや、おっちゃん。
もう、終わった感満載で座ってんのに、そもそも、そんな厳密に最南端じゃなくてエエねん!しかも、その時にベンチにあった日刊スポーツの星座占いのコーナーを見たら、蠍座の今日の運勢

「気分を変えて旅に出れば『吉』」

そんなん言うなや、日刊スポーツ。また?まだ足りないの?旅。

気分を変えて鹿児島中央公園に行ってみた。桜島もちょっと見えてたりして、晴れた日の公園やから、うん、すでに十分『吉』

鹿児島中央公園では、いつもの日曜日だと思う。ファミリーとかカップルとか、大人はノンビリしてた。ただ子どもはノンビリをヨシとしない。
4,5歳のこどもが一人、噴水のところで一心不乱に水遊びしてた。
あの子どもは、水しか見えてないっていうか、パンツ履いてんのにチンチン丸見えで、パンツの横からはみ出してるのに全く気付かずに遊んでる。

パンツ、履いてなかったら目立たないんやろな。と、ぼんやり思う。

なまじっかパンツ履いてたりするから逆に目立つという。見えてはいけないもの、見せたくないものは、隠そうとするから見える。出してたら、気にならない。

と、なんか真理のような名言のようにも聞こえるけど、要は、こどものチンチンが見えてしまってるというだけだ。



『感動風』

中央公園は暑かったけど、風が心地よかった。

熊本からの200km という道のりは、とにかく山道で、上っても下って、下っても又上って、ちょっと町が出てきたら、またスグ山道がやってきて、いや、やってきてるのはオレだ。なんなら、やらかしてる。
200キロって長いな。一気に歩く距離じゃないな。
九州の人が特別優しいというわけではないのだろうけど、何回も「乗せていこうか?」と言ってもらった。

「この先も、ずっと山だよ」
「そうですよね、たぶん。この手前もそうだったんで」
「一昨日、熊本に用事があって、山の中歩いてるアンタの事チラッと見たのさ、その後、福岡に出張で今日帰ってきたんだけど、また見かけたから、鹿児島まで歩いてるんだろうなと思ってね」
「正解です」
「乗っていく?」
「あ〜乗っていきたいとこなんですけど、ラスト200キロは、乗せてもらわないで歩くって決めちゃったんですよ。」
「熊本がスタートじゃないんだ?」
「スタートは東京です」
「それ、歩き過ぎじゃない?」

オジサンは、近くのコンビニで缶コーヒーを買ってきて「せめて、これだけ受け取ってよ」と言って渡してくれた。缶コーヒーを飲んでる間『話し相手JAPAN TOUR』の話をして、缶コーヒーを飲み終わったオジサンは、コンビニでもう1本ポカリを買って渡してくれた。
いや、すごいありがたいんですよ、もちろん感謝なんですけど、オジサン、逆。先にポカリ。なんなら、2本ともポカリ。いや、もちろん感謝ですよ。

「東京からって事は、ゴールはスグだもんね」

そうか、東京からって考えたら、歩けるゴールまではスグ・・・でもないんちゃう?まだ50キロほどあるけど、まぁ、近いか、50キロは。

オジサンは車で、オレは歩きで鹿児島に向かった。最後に「鹿児島だったら天文館通りでやったらいいよ」とアドバイスを貰って別れた。

あの当時の日記を読みながら思い出すシーンと、全く記憶にないシーンがある。今回、このnoteに書き始めた『話し相手JAPAN TOUR』に書いてきた事は、鮮明に残ってる事がほとんどだが、この丸4日間200キロの道のりは、あまり覚えてない。
当時の日記にすら「あまり覚えてない」と書いてる。なので、もしかしたら電車とかバスとか乗ってたり、なんならホテルに泊まって快適な時間を過ごしてたりするのかもしれない。

日記に書いてる4日間の行程は、熊本城の近くのバス停を出て、ほぼ休まず30時間歩いて『津奈木駅』で雨宿りしてると書いていた。
グーグルマップで、その距離を見てみると、約80キロあった。
バカなのか?
オレは、バカなのか?

その後「果てしなく続くんちゃうかと思った山道を越えて水俣到着、寝る。」と書かれてました。
寝たみたいです。
ちゃんと寝たみたいです。

次の日は、水俣から40キロほど先にある『道の駅・阿久根』で野宿をしてる。この場所での野宿は、すごく記憶にあって、満天の星だったのだけど、あたりは真っ暗で、風が強くて波の音がすごくて、ちょっと怯えてました。

阿久根を出て、川内で休憩して、その後「今日は、ここで限界」と書いてたのが東市来(ひがしいちき)だったようですが「もうひとつ手前の湯之元で野宿すればよかった。なんかカラダがオカシイ。関節がギシギシ言うてる。オレはカブトムシか!」と書いてました。距離は約50キロでした。

その25キロ先に鹿児島中央駅があり、7月9日の書き出しが「いやぁー着きましてね」でした。

たぶん200キロを歩いたんだと思います。で、どうやら感動しようとした自分がいたようなのですが・・・

鹿児島中央駅を経て、鹿児島中央公園のはしっこにあるトイレで顔を洗ってから改めて自分の顔を見たら正直カッコよかった。

鹿児島0001

今までやったことのないロン毛になってたけど、なんかキムタクの次に似合ってんのとちゃうかなぁ。と思ったりした。
ベンチに座って、ちょっと感動してたりして・・・アブナイアブナイ!

チンチン出してる子供を見て感動風から引き戻された。違う違う、何に感動しようとしてん!鹿児島に到着したけど、目的『話し相手』やから。よし、天文館通りに行こう。


『鹿児島支店』

「いい?やってもいい?」
「いや、それは、全然ええけど・・・」

支店が出来てた。
『話し相手』にやって来た16才の男子2人が、10分後に拾ってきたダンボールに『話し相手 鹿児島支店』と書いて地面に座り込んで、コッチにやって来た。

「いい?やってもいい?」
「いや、それは、全然ええけど・・・っていうか、もうやってるやん」

しかも、天文館通り十字屋前にオレがテーブルを出した本店(という言い方は違う気がするけど)からスグ近くに見えてる場所に。

2人の熱意に負けて店長(なのか?オレが本店の店長なのか?)からのプレゼントとして、ダンボールに初心者マークを描いてあげた。

鹿児島支店の支店長と係長は、1時間程して初めての『話し相手』をゲット、しかも相手が2人組の女子だったので、嬉しそうな顔をして
ん?カラオケに行った。

「コレ、すっげーいい、スグ戻ってくるから」
「お前ら・・・まぁ・・・ええか」

ダンボールはオレのテーブルの脇に置いていった。

「店長、コレ見てて、取られるとまずいっから」
「お前ら・・・まぁ・・・ええか」

鹿児島3

しばらくして4人で戻ってきて、2人の女子も歌い終えてスッキリした顔をしてたので、その健全さに安心した。で、戻ってきた女子のひとりが、オレの話し相手のテーブルで

「聞いて聞いて、ウチの元カレなんだけど、どっしようもなくてさ」

と話し始めたのだが・・・おい支店長と係長!お前ら、その話を聞いてやらんかいッ!

「お前ら・・・まぁ、ええか」

鹿児島の1日目を終えた。

次回は、鹿児島の救世主・前田さん。です。

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