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たとえば、それがさわやかのハンバーグだったとしてだな

サムネイルに釣られたあなたへ。

こちらの記事、残念ながらさわやかのハンバーグについて語り尽くすものではなく、とある本について語る記事となっています。

ただ

読み終わったあと、さわやかのハンバーグが食べたくなることだけは保証します。


===


高校時代の話

この本は素晴らしい。
だからこそ、この本を読んだら読むまえの自分には戻れない。

ドストエフスキーの「罪と罰」にはそれくらいの力がある。

読みどきを、自分で見極めない。


たしか、名著の話題になったとき、現代文の先生がこんなふうに話していた。

そうだ、本には力がある。

わたしを、そして、世界を
まるっと変えてしまう、そんな力が。

ちなみに、「罪と罰」はまだ読めていない。
まるっと人生を変えたいときに、読むと決めている。



この本を読み終わったとき、あの時言われた言葉が、頭の中をこだました。

読むまえの自分に戻れなくなるほどの、各領域の名著をまんべんなく紹介していてお見事!と思い、さぞ良いレビューが並んでいるんだろうなと覗きにいったら、予想外でちょっとびっくり。

今回の企画に取り上げられなくても、あちらこちらから感想文があがっているかと思いきや、想像よりは少ないなぁ、というのが正直なところ。

なんでだろう。

なんか本を読みたいけど
ハズレはひきたくない
でも、何から読んでいいかわかんないし
どうやって読めばいいかもわかんない

という人にピッタリなのに。


最初に、読書感想文としてあるまじき行為かもしれないが、ネガティブなことを書かせてほしい。

Amazonやブクログのレビューに散見される口語調の語り口、これは正直言って好みが別れるところ。

ネット上でブログを読み慣れている人にはなんら問題ないが、新聞や新書ばかり読んでいる人からすると、びっくりしてしまいそう。

職場では敬語だった人が、懇親会でタメ口かましてくる感じというか。

ちょっと聞いてよ奥さん節のときもあれば
厳かラブレター節のときもあって

これ、本当にぜんぶ同じ人が書いてるの?
と、疑ってしまいたくなるほど。

紹介する本ごとに、書いてるテンションが全然違う。
まるで、三宅さんの人格が変わってしまったみたいに。

わたし自身も、三宅さんのテンションにもっていかれてしまい

はて…なにを話してたんだっけ?
えーと、恋愛の本で…たしか…

と、ページをめくり返すことが何度かあった。

きっと、この現象はサクちゃんでいうところの、これ。

これの怒りではなく好きバージョン

この本が好きという気持ちが、前のめりで伝わってきてしまうだけなんだと思う。

テニスのダブルスを思い浮かべて欲しいんだけど、この本が好きっていう気持ちが前衛でボレーする人だとすると、ここがこんなふうにおもしろいんだよ!ってラリーを繰り返す人が後衛ね。

試合のベースやリズムを作るのは後衛だけど、攻撃力という点で言えば、前衛のほうが強い。

テレビの国会答弁を見ていても

この人、相手に唾が飛びそうな勢いでめっちゃ一生懸命喋ってんな…
なんでこの人…こんなに怒り狂ってんだ…?

こんなふうに、内容なんかちっとも入ってこないことがある。

あんな感じ。

もしかしたら、緊急避妊薬が薬局で買えないことのデメリットを話しているのかもしれないのに、怒ってるという感情が先行して伝わってきてしまう。


三宅さんの本への熱い思いを表した口語調、これがこの本のウリであると同時に気になってしまう人もいるのは、こんな理由があるからだろう。


では、なぜ、こうもレビューがシビアなのか。

それは、本には人生を狂わす力があるということを、すでにみんな知っているから。

そして、名著ほどその力が大きいと信じているから。

言い換えると、人生を狂わしてくれるような本との出会い、これに対する読後の期待値が他の書評よりも高いからなんだと思う。



だって、この本は、その辺の大学生が書いたわけじゃない。

京大院生、かつ京都天狼院で働いていた三宅さん視点で集めたものだ。

これだけで期待値が跳ね上がる。

そして、何千冊と読んできたであろう彼女がピックした名著50冊+その他のおすすめ150冊が紹介されている。アナウンサー試験並の倍率を潜り抜けてきた猛者(猛本?)ばかり。

名著の中の名著なのである。

ちなみに、天狼院といえば本屋さんを思い浮かべる人もいるかもしれないが、わたしの中ではライティングゼミのイメージだ。

読むと書くは対の関係。当然、読むのが上手な人は、書くのも得意になっていく。わたしの周りでも複数人がこのゼミを受講し、めきめきとライティングを上達させている。



ここでひとつ、わたしが考える名著の定義を紹介したい。

名著とは、読むまえと読んだあとで、いま生きるこの世界を変えてくれるもの、だと考えている。

結果として、自分も変わってくことになるが、まずは見えてる世界のほうが変わるという感覚のほうが強い。

ということは、読んだあと、読むまえの世界には戻れない。
レーシックしたあと、するまえには戻れないのと同じ。


食べもので言い換えると、さわやかのハンバーグ。

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さわやかのハンバーグは、肉好きのあいだでも超有名なハンバーグ。

並ばないと食べられないレア感
火は通ってるのに真ん中がピンク色
これまたレア感
げんこつみたいなビジュアル
提供時のライブ感
そして、びっくりのコスパ

これに狂わされてる人、絶対いるはず
わたしだって、ちょっとキてるもの。

おそらく、日本に7人くらいは、さわやかのハンバーグに魅せられて静岡に引っ越してしまった人がいると思う。いっそ、店舗の隣に住んでる人がいてもおかしくない。

こういう人たちって、さわやか以前とさわやか以後で生きる世界が完全に変わってしまっている。
もう、世界の中心でさわやかへの愛を毎日叫んでるレベルね。

これと同じようなことが、本で、特に名著であり得るんじゃないかな、という話。



もうひとつ、だいじなことを。

名著に出会うと、新しい風や光、匂いを感じ、今まで出会ってこなかった価値観や物語に触れる。

そうすることで、自分の今いる世界の境界をほんの少し外側へ拡げられたような、もしくは天地がひっくり返ったような感覚に陥る。

こう言うと、名著にものすごく力があるように感じてしまうけれど、その本を読むかどうかを決めているのはあなた

そして、読み進めていくのも、あなた

あなたにも、名著と同じくらい人生を狂わす力がある。

名著があなたの力を引き出し、相乗効果となって人生を狂わされるような体験ををもたらしてくれる。

名著もすごいけど
あなたもすごいのだ。



ここまで意気揚々とさわやかについて語ってきたけど、実を言うと、さわやかのハンバーグ、食べたことがないので、来年は罪と罰を読みながら行列に並び、さわやかのハンバーグをキメる予定です。


さぁ、あなたも、さわやかのハンバーグ……
じゃない

名著で人生、狂わせてみてはいかが?



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